第二話:ツトム
ツトムは私より五つ年上だ。家はわりと近く、友達の働いている金融屋で、催促の仕事をしている。利用者がどこかに逃げても、どこで情報を仕入れるのかどこまででも追い掛ける。そして返されるまで追い込む。そんな仕事をしている。
でも、それを知ったのは付き合った後のことだった。
「なぁ、俺と付き合わない?」
突然告白されたのは、18になったばかりの頃だった。でもその頃私にはずっとずっと好きな人がいた。恋人ではないけど、恋人のような関係だった。
「無理だよ。好きな人がいるの。その人とこれからも会っていきたいから、付き合えない。」
「…会ってもいい。付き合っていくうちに、俺のこと好きになってくれればいいから。」
「でも今付き合ったら、必ずツトムを裏切ることになる。だから無理だよそれは。」
「…そいつとはどんな関係なの?」
「付き合ってるようなもの。しょっちゅう会ってるし、キスしたりそれ以上のこともするよ。」
それでもツトムはしつこかった。
「俺のこと嫌い?」
「いや…嫌いじゃないけど…。」
「俺はお前は他の女とちょっと違うと思う。きっとお前とならうまくいくと思うんだ…!」
そんな話を延々と繰り返すうちに、ついに私は折れてしまった。この頃のツトムは、優しくて楽しかった。ツトムとなら、幸せになれるかもという気持ちがあった。
でも、後にわかったのは、この時の私はツトムのことを何も知らなかったということ。