第十一話:二十万
そうして私は風俗で働くことをすすめられた。なぜかといえば、金額と返済期限が、私にはあまりにも重かったから。貯金も無く、時給900円のバイトを細々とやっていた私にとって、一週間以内に二十万円というのは無理な話だった。
キャバクラも考えた。しかし新人で指名もない私には、時給だけであの金額には届かないだろう。必然的に、風俗という道しか残らなかった。
風俗では、新人というのは割りと客がついた。新人=素人っぽい女の子、というのが客にはウケるらしい。私は新宿のとあるお店で、一週間もかからずに二十万以上稼いだ。
その間家には帰れず、毎日ツトムの家と店を往復していた。逃げたり無駄にお金を使わない為だ。
「はい、二十万。」
袋にも入れずにそのまま手渡す。
「はい、ごくろーさん。」
ニヤニヤしながらツトムは受け取った。
「お前、テクニックとか上がったんじゃん?もっと腕上げて俺に披露しろよ。」
何を言っているの?私がそんな表情で見つめると、
「とりあえず今回は許してやるよ。でも次やったらお前も男も殺すぞ。」
と言った。この人ならやりかねないな、と思った。でも、とりあえず終わったんだ、という気持ちでスッキリすらした。この一件がなければコウタに彼女がいることはわからなかったし、これで良かったのかな。コウタには迷惑かけたことを謝りたかったけど、もう会うこともない。好きという気持ちはまだ少し残ってたかもしれないけど、ツトムに散々コウタの悪口を言われ、そんな男だったのかなと、洗脳された。