第十話:重たい空気
「お前、クリスマスの日あいつと会ってたんだって?」
ツトムの突然の言葉に心臓が張り裂けるくらい波打つ。
「えっ?!」
「俺色々と調べたんだよ。メールの履歴とかな。しかもお前から誘ってんじゃねーか。」
「あっ…いや…。」
逃げ場がなかった。本当のことだから。確かにあの日はツトムとの約束がなかったのでコウタを誘ったのだ。でも、あの日でコウタと会うのはやめようと思っていた。でもそんなこと今更言っても言い訳にしか聞こえない…。
「お前バッカじゃねーの?遊ばれて当然だよ。お前から誘ってんだったら、あいつ悪くねーじゃん。かわいそうでもなんでもねーよ。お前なんかの為にあいつ殴った俺って何なんだよ!」
「…ごめん。」
重苦しい空気が部屋中に流れる。
「もうバカらしーわ。むしろこっちがあいつに金払わなきゃいけねーじゃん。何も悪くねーのに殴って更にこんな紙まで書かせて!」
「…。」
私は心の中で、あんたが全部勘違いしてやったことじゃん、とひそかに思っていた。
「ともかく、俺はあいつに謝ってくる。お前が金払えよ。」
「へっ?」
「当たり前だろ!こんな事になったのは全部お前のせいだろ!」
「そんな…お金なんてそんな持ってないよ…。」
「知らねーよ、働けよ、死ぬまで。とりあえず立て替えといてやるから。」
この時はまだ、事の重大さやこれから自分がどうなるのかなどは、深くは考えていなかった。
「こんな女を好きになった自分が情けねーよ。」
そう。この時はツトムが私のことを好きなんだと思ってた。