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未定  作者: おうか
5/7

Episode 5 クラスメイト

カーテンの隙間から差し込む光で、目が覚めた。


「……朝か」


見慣れない天井。

いや、もう見慣れ始めてるのが嫌だ。


『おい相棒、朝メシだ』


「うるせぇ……」


隣を見ると、グラトニーが枕元で仁王立ちしている。

なんでそんな偉そうなんだよ。


「飯は自分でどうにかしろ」


『できるか!俺様はまだ小さいんだぞ!』


「見た目だけな……」


適当に流しながら、俺は制服に着替える。

どうやらこの寮から学校までは直通らしい。


――Sクラス専用の通学ルート。


「ほんと、どこまで特別なんだよ……」


『当然だろ。俺様の契約者だぞ?』


「はいはい」



Sクラス寮の廊下は静かだった。

昨日とは違い、他の住人の気配がある。


“同じ契約者”。


それだけで、少しだけ緊張する。


エレベーターを降り、渡り廊下を進むと――


そこは普通の学校だった。


制服の生徒たちが行き交い、笑い声が響く。

昨日までと変わらない、はずの光景。


「……ほんとに同じ世界か?」


『表だけはな』


グラトニーが小さく笑う。



教室のドアを開ける。


ガラッ――


一瞬だけ、視線が集まった。


「……転校生か?」

「いや、昨日休んでたやつだろ」


ざわつきが広がる。


「……」


めんどくさいな。


適当に空いている席に向かおうとした、その時――


「そこ、俺の席なんだけど」


声をかけられる。


振り向くと、

短めの黒髪に、少し鋭い目つきの男子が立っていた。


「……あ、悪い」


俺がどこうとすると、そいつは少しだけ俺を見て――


「……その気配、お前もか」


「は?」


小さく呟かれた言葉。


その瞬間。


『ケケ……いるな』


グラトニーが楽しそうに笑う。


「……お前」


男は少しだけ口角を上げた。


「契約者だろ」


「……っ」


図星だった。


「……そういうお前も?」


「ああ」


男はあっさり頷く。


「俺はカイ」


「ルイだ」


短い自己紹介。


それだけで分かる。


――こいつは、同じ側の人間だ。


その時、後ろから別の声がした。


「朝から物騒な話してるね」


振り向くと、

柔らかい雰囲気の少女が立っていた。


茶色の髪に、少し眠たげな目。


でも――


どこか“普通じゃない”。


「……あなたも?」


俺が聞くと、彼女は少しだけ笑った。


「うん、一応ね」


軽い調子で言う。


「私はミオ」


『ケケ、増えてきたな相棒』


グラトニーが嬉しそうに呟く。


教室の中、普通の朝。


なのに――


確実に“同じ側”の人間が集まり始めていた。


「……めんどくさくなりそうだな」


俺がぼそっと呟くと、


カイは少し笑って言った。


「もうなってるだろ」


ミオもくすっと笑う。


「これからだよ、多分」


ミオの言葉が、やけに現実味を帯びて響く。


――その時だった。


ガラッ!!


教室のドアが勢いよく開いた。


「はぁ……はぁ……間に合った……!」


息を切らしながら立っていたのは、一人の少女。


長い髪が少し乱れ、制服もどこか着崩れている。

それでも目だけは、やけに鋭かった。


「……遅刻だぞ、アイリス」


カイが呆れたように言う。


「うるさい……朝から“あれ”が出てたのよ」


「……あれ?」


俺が聞き返すと、アイリスはちらっとこちらを見る。


その視線――一瞬で分かった。


こいつも、同じだ。


「……新入り?」


「ああ」


カイが短く答える。


「ルイ。こいつもSクラスだ」


「へぇ……」


アイリスはじっと俺を見る。

まるで値踏みするみたいに。


『ケケ……こいつもいい匂いがするな』


「黙ってろ」


小声でグラトニーを押さえる。


アイリスはふっと鼻で笑った。


「隠す気ないのね、その悪魔」


「……バレてんのかよ」


「わかるわよ、それくらい」


そう言いながら、アイリスは自分の席にドサッと座る。


「で、ルイだっけ」


「ああ」


「死にたくなかったら――」


その言葉に、空気が少しだけ張り詰める。


「無理に強くなろうとしないことね」


「……は?」


思わず聞き返す。


アイリスは視線を窓の外に向けたまま、ぼそりと続けた。


「このクラス、“それで壊れたやつ”何人も見てるから」


――一瞬、言葉が出なかった。


『……ほぉ』


グラトニーが興味深そうに呟く。


カイは何も言わず、腕を組む。

ミオも、少しだけ表情を曇らせている。


「……なんだよ、それ」


「そのままの意味」


アイリスは振り返らない。


「ここは“強くなれる場所”じゃない」


一拍置いて。


「“壊れる場所”よ」


チャイムが鳴る。


キーンコーンカーンコーン――


まるで、その言葉を区切るように。

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