だんごろう
私はダンゴムシを飼っている。名前はダンゴロウ。特に由来は無い。あ、でも、友達と名前を決めた時、ひらがながいいって言ったら「ダンゴロウは絶対カタカナ!!」って言われた。仕方なくカタカナにした。私のダンゴロウなのに。
ダンゴムシは何を食べるんだろう?コンクリートを食べるのは知ってる。だって本で読んだから。仕方ない。こういう時はスマホで調べよう。
…ふ〜む、なるほど。ダンゴムシは枯れ葉とか腐った植物が主食。でもまぁなんでも食べるらしい。雑食だ。コンクリートはカルシウム源として食べるらしい。コンクリート以外にも石とか食べるんだ。へ〜また1つ賢くなった。ありがとうダンゴロウ。
とりあえず外にあった葉っぱを取ってきた。先週からずっと雨で地面はぐしょぐしょ。泥で靴が重くて気分は最悪。これだから雨は嫌いなんだ。雨が沢山降る梅雨はもっと嫌い。でも、ダンゴムシは湿気が好きだから、ダンゴロウは梅雨が大好きなんだろうな。アイツと一緒で、私とは真反対。あ、靴についてきた泥も入れてあげよう。ご飯、枯れ葉でも腐った植物でもないけど…まぁいいや。雑食らしいし、なんでも食べるでしょ。それに、ダンゴムシなんてそこら辺にたくさんいるんだから死んだらまた取ってくればいい。
…はぁ、私なんでダンゴムシなんて飼ってるんだろう。そもそもアイツがダンゴムシ飼いたいなんて言うから…家で虫飼えないとかアイツの都合じゃん。腹が立つ。ダンゴムシだって所詮はただの虫…足いっぱいあるし、触角もあって気持ち悪い。こんなのを可愛いとか言う人達の気が知れない。
…まぁ、確かに、ちょっと…いや、結構可愛いかも…丸くなるところとか…いやいやいや、何言ってるんだ私。気をしっかり持て!相手は虫だぞ?!なんも可愛くない。なんも、なんも………
『ピンポーン』
突然インターホンが鳴り、私はかなりビックリした。一体誰だ?こんな夜更けに訪問するバカは…まぁ、1人しかいないか。
「よ!元気?来ちゃった☆」
…知ってた。コイツは有馬。私の唯一の友達。というか、幼馴染?ダンゴロウを飼うことになった原因であり元凶。
「…なんでずぶ濡れなのよ…」
有馬「いや〜傘忘れちゃって!さっきまで止んでたのに、突然降るからもう困った困った!キミが近所でよかったよ〜!」
「…」
有馬…はっきり言って、私はコイツがあまり好きではない。むしろ嫌いだ。それもだいぶ。理由は単純。何もかもが真反対だから。私は陰キャ、コイツは陽キャ。私はコミュ障、コイツはコミュ強。私は夜が好き、コイツは朝が好き。私は虫が嫌い。コイツは虫が好き。私は…実家が隣だからって、親が無理矢理仲良くさせようとしてきた。本当に不愉快だった。それに、私はコイツのせいでイジメられた。何もかもコイツのせいだ。…でも、コイツ自身は、多分、すごく良い奴だ。嫌になるくらい。だからコイツに、嫌悪感を、嫉妬心を抱かずにはいられない。コイツのせいで、私は私が嫌いになる。
…自己嫌悪。
有馬「どうかした?」
「…なんでもない。風邪引くよ、上がって。」
有馬「サンキュー!お邪魔しま〜す!」
…上がってとは言ったが、ここまでズカズカと上がられると腹が立つ。これだから嫌いなんだ。
有馬「お!ダンゴロウ!元気してたか〜?」
ダンゴロウは呑気に歩き回ってる。
………。
「はい、タオル。」
有馬「ダンゴムシって何食べんの?」
「…色々、雑食だから。」
有馬「へー、あ、タオルありがとな!」
「…。」
早く帰ってくれないかな。
有馬「なぁ!ダンゴムシってこれ食べるかな?」
「…ガム?食べないでしょ。」
有馬「でもダンゴムシ雑食なんだろ?いけるって!」
そう言って、有馬はガムを虫かごに入れた。勝手に入れるとかありえない。バカじゃないの?親の顔が見て見たい。そんなことを考えてたらスマホが鳴った。有馬のスマホだ。
有馬「もしもし〜?どしたん?…あ〜!迎え来てくれたの?いつもの場所?…じゃあ向かうわ!ありがと!切るね〜」
「…。」
有馬「迎え来たから帰るわ!またな!」
有馬はタオルを持ったまま帰った。返せよ。
…二度寝しよ。
次の日も雨だった。アイツはまたもずぶ濡れで来た。不愉快だった。その次の日も雨だった。アイツはまたもずぶ濡れで来た。不愉快だった。その次の日は晴れだった。それでもアイツは来た。不愉快だった。有馬はダンゴロウに会うための口実を作っていた。そんな事しなくても来ればいいのに。いや、そもそも自分の家で飼えよ。自分の部屋あるんだし、こっそり飼えばバレないでしょ。それに、ちゃんと餌あげてるんだから、来る度にガムあげないで。本当に不愉快。
月日が流れていくと、流石の私もダンゴロウに愛着が…なーんてこともなく、気持ち悪いまま3年が過ぎた。私は今年で大学を卒業する。アイツも今年で大学を卒業だ。危うく留年しかけたらしいが。有馬はこの3年間、週に3回は必ず来た。多い時は週に7回来ることもあった。有馬はダンゴロウに愛着があるんだろう。
有馬はあんなのに愛着があるとか…少なくとも、頭のネジが3、4本抜けてるんだと思う。
「ダンゴロウ…」
…まぁ、ほんの少しだけ、本当に少しだけ、ダンゴロウに愛着があるかもしれない。丸くなる姿が愛おしくて、よく手のひらで転がした。いや、愛おしくないから。別に。可愛くもない。…訂正。少し可愛いかも。
ダンゴロウを飼い始めて3年と数ヶ月。少し前からダンゴロウと一緒にご飯を食べている。餌の時間に私も食べれば、一緒に用意出来るし、1匹と1人で食べたら寂しくないしね。一石二鳥だ。それに、ダンゴロウのおかげで散歩に行くようになった。最近はとても健康だ。
ダンゴロウは意外と長生きなんだなって感心してた。
そんなある日、ダンゴロウが死んだ。なんで死んだのか、わからない。寿命かもしれないし、他に原因があるのかもしれない。
死んだ。あぁ、私も心では好きだったんだ。辛い。悲しい。涙が溢れてしまう。ダンゴロウ、会いたいよ。
1週間経っても、私はベッドから起きれなかった。理由は分かりきっている。ダンゴロウが死んだからだ。いつもならダンゴロウに餌をあげるために風邪を引いていても、ダルい身体を無理矢理起こして、ダンゴロウに餌をあげていた。あげると言うより…交換だけど。辛いよダンゴロウ…戻ってきてよ…
私はそんなことを考えながら、再度眠りについた。目が覚めると、外は既に真っ暗だった。
「ダンゴロウ…」
私がぽつりと呼んだ名前は、無慈悲にも空に消えた。
『ピンポーン』
インターホンが鳴る。最近ネット注文はしていない。じゃあアイツか…起きるのも面倒だ。居留守を使おう。
『ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン』
うるさい!何回鳴らすつもりだ!私はイライラした。いつもなら居留守使っても勝手に入ってくるくせに何故今日に限って入ってこないんだ。仕方なく玄関のドアを開ける。
「うるさいんだけど!!」
勢いよくドアを開けると、誰もいなかった。帰った?あんなにインターホン押しておいて?うざ。
視線を下に向ける。足元に、1匹のダンゴムシ。ダンゴロウだ。絶対ダンゴロウだ。きっと私が悲しんでいるから転生して帰ってきてくれたんだ。
「ダンゴロウ!」
私は泣いた。たくさん泣いた。泣いて喜んだ。ダンゴロウを手のひらに乗せて。その後、虫かごにダンゴロウを入れた。ダンゴロウが住んでいた虫かごだよ。懐かしいでしょダンゴロウ。ダンゴロウは嬉しそうに歩いている。よかった、本当によかった。ダンゴロウ、今度は死なせないからね。
ダンゴロウが死んだ。また死んだ。なんで死んだのかはわからない。死んだ。どうして?なんで?ダンゴロウ。私は泣いた。悲しくて泣いた。泣いて泣いて、いつの間にか寝ていた。起きると外は既に真っ暗だった。
「ダンゴロウ……」
私がぽつりと呼んだ名前は、残酷にも空に消えた。
『ピンポーン』
インターホンが鳴る。最近ネット注文はしていない。じゃあアイツか…起きるのも面倒だ。居留守を使おう。
『ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピーンポーン』
うるさい!何回鳴らすつもりだ!私はイライラした。いつもなら居留守使っても勝手に入ってくるくせに何故今日に限って入ってこないんだ。仕方なく玄関のドアを開ける。
「うるさいんだけど!!」
勢いよくドアを開けると、誰もいなかった。帰った?あんなにインターホン押しておいて?うざ。理由はわからない。なんとなく、視線を下に向ける。足元に1匹のダンゴムシ。ダンゴロウだ。絶対ダンゴロウだ。きっと私が悲しんでいるから転生して帰ってきてくれたんだ。
「ダンゴロウ!」
私は泣いた。たくさん泣いた。泣いて喜んだ。ダンゴロウを手のひらに乗せて。その後、虫かごにダンゴロウを入れた。ダンゴロウが住んでいた虫かごだよ。懐かしいでしょダンゴロウ。ダンゴロウは嬉しそうに歩いている。よかった、本当によかった。ダンゴロウ、今度は死なせないからね。
ダンゴロウが死んだ。また死んだ。なんで死んだのかはわからない。死んだ。どうして死んでしまうの?ダンゴロウ。どうすればよかったの?ダンゴロウ…私は泣いた。悲しくて泣いた。辛くて泣いた。泣いて泣いて、いつの間にか床で寝てしまった。起きると外は既に真っ暗だった。
「ダンゴロウ………」
私がぽつりと呼んだ名前は、残酷にも空に消えた。
『ピンポーン』
インターホンが鳴る。最近ネット注文はしていない。じゃあアイツか…起きるのも面倒だ。居留守を使おう。
『ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピーンポーンピーンポーン』
うるさい!何回鳴らすつもりだ!私はイライラした。いつもなら居留守使っても勝手に入ってくるくせに何故今日に限って入ってこないんだ。仕方なく玄関のドアを開ける。
「うるさいんだけど!!」
勢いよくドアを開けると、誰もいなかった。帰った?あんなにインターホン押しておいて?うざ。視線を下に向ける。見なければいけない気がした。足元に1匹のダンゴムシ。ダンゴロウだ。絶対ダンゴロウだ。きっと私が悲しんでいるから転生して帰ってきてくれたんだ。
「ダンゴロウ!」
私は泣いた。たくさん泣いた。泣いて喜んだ。ダンゴロウを手のひらに乗せて。その後、虫かごにダンゴロウを入れた。ダンゴロウが住んでいた虫かごだよ。懐かしいでしょダンゴロウ。ダンゴロウは嬉しそうにはしゃいでいる。よかった、本当によかった。ダンゴロウ、今度は死なせないからね。
ダンゴロウが死んだ。また殺してしまった。
「ダンゴロウ」
名前を呼んでも返事はない。
「…会いたいよ」
返事はない。泣けない。寝れない、眠れない。
インターホンが鳴らない。
「…。」
気がついたら朝だった。でも、ベッドからは起き上がれなかった。ベッドで横になったまま夜になった。
『ピンポーン』
鳴った。やっと鳴った。嬉しかった。私は飛び起きてドアを開けた。
「ダンゴロウ!」
あぁ、ダンゴロウだ。だんごろう、会いたかったよ。だんごろう…だんごろう…今度こそ殺さないからね。大切にする。絶対に大切にするからね。
私は精一杯だんごろうを抱き締めた。だんごろうはびっくりしていたけど、抱き締め返してくれた。嬉しかった。
社会人になった私は広い家に引っ越した。だんごろうと、だんごろうが寂しくないように、ドアの前にいたダンゴムシも一緒に引っ越した。
だんごろうは虫かごが狭かったから死んでしまったのかもしれない。だから、1部屋丸々だんごろうの部屋にしてあげた。今日も餌をあげに行く。
「だんごろう!ご飯だよ!」
「…」
だんごろうはまだ新しい環境に慣れていないのか、少し怖がっているみたい。私はそっとだんごろうの頭を撫でてあげた。
びっくりしちゃって、可愛い。
私はこの後すぐに仕事だ。一緒にご飯を食べることはできない。だから、ご飯を置いて、立ち去る。これが最近の日課になってしまった。本当は前みたいに一緒に食べたいけど…でも、だんごろうのために稼がないとだから。ごめんね、だんごろう。
「いい子で待っててね!」
「…」
ドアが閉まる。部屋に静寂が訪れる。
「…ごめんなさい」




