第1話 家を去る、旅立つ
わたしの名前はオズ。飼い主の名前はクヴァシル・エレバスなので、わたしの名前は同じく、オズ・エレバスだと思います。
わたしの体内には世界を壊滅させるに足る黒い魔力がある。今はクヴァシルさんに保護されたまま生きている。
わたしは今とある平凡な町に住んで、人間の子供のように平凡な生活を送る。
あまり自由がない生活ですか、こんな生活は嫌いではない。
「お待ちしていました。手作りのジャガイモ団子です」
自分で作ったジャガイモ団子を、ティータイムを楽しんでいるクヴァシルさんに持ち致した。
傷跡だらけだけど淑やかな女性、クヴァシルさん。いつでも優しくて、賢くて、色々なことを教えてくれる。
「ああ、ご苦労さんー」
保護者として、クヴァシルさんはたくさんのことを教えてくれた。
お父様が悪人であること。
お風呂以外の時間は必ず服を着ること。
排泄するならトイレに行くこと。
わたしは、クヴァシルさんに感謝している。
「オズちゃん立派な人間になったねー!こんな美味しい料理をつくれるなんて、成長したね!」
「はい、おかげさまで」
「オズちゃん本当に人間性を高めたなぁー。幼女がその小さい手で一生懸命作った料理いただくね!」
「手のサイズと関係ないじゃないですか」
それに、褒められたけど知ってる、わたしは人間性がたりない。
人間は雨に濡れることに納得できない、しかしわたしは特に気にしない。
人間は服を着ないと恥ずかしがる、なのにわたしはそういうのを理解できない。
人間は死体や排泄物が嫌い。絶対に触りたくないし見ることすらしたくない。けどわたしはどうしてもそういう気持ちを理解できない。
わたしは人間にとって大切なものが欠けている。どんなに頑張っても、理解できない。
わたしは人間より下等な生き物。
だから、仕方ない。
「なんで辛気くさい顔をしてるのよー。一緒に食べて?」
「はい」
クヴァシルさんが作ったお菓子は世界で一番美味しい。 愚鈍なわたしでも知ってる、こんな美味しい菓子はここでしか食べられない。
でもなんでだろう。
可愛い服を着る。美味しいものを食べる。暖かいベッドで寝る。これは飼われてる生活。
不満はないが、このままではいけない。
しかしどうすればいいの?
このシュークリーム、本当にうまい…
「お菓子を食べてるオズちゃんの幸せ顔、最高ねー」
「あの、あんまりジロジロ見ないでくれます?」
「仕方ないでしょう!オズちゃんこんなに可愛いだから」
「そんなこともう聞き飽きたのです」
優しい人なんだけど少しうるさい。嫌いではないのだが。
「そもそもわたしはずっとこの形態を維持するわけないのです。きっといつか、その、大人になって、合格の人間になりますから」
「またそんな可愛い考え、成長しない人工魔物として人間の大人になりたいなんてー。まぁそれはともかく、人間性ならオズちゃんのは既に合格したぞ?」
「そんなことないです。わたしは、まだまだです」
「まだまだってなに?オズはもう合格した!食材を生食できる?うんこに触れる?そんなことどうでもいいよ!」
「…」
普段は優しい人、たまに、クヴァシルさんはおじさんみたいな甲高い声で話す。特にわたしのことをしゃべってる時。
「オズちゃんは持ってるんだぞ!その良識、その善良!その人の心!だから人間として生きる資格がある!もともと、人間性が満点の人間はいるわけないから、オズちゃんは安心して人間の生きる方法で生きればいい!この可愛さや天真爛漫を永遠に保てば大丈夫!」
たまに変なことを言う。わたしの飼い主。
このままじゃダメ。
この村に来たばかりの頃、よく一緒に遊んでた他の子供たちも次々に成長している。
わたしも、必ず大人になる。方法は知らないけど。
「それに!人工魔物の作り方はさまざまな魔物の肉を縫い合わせて魂や魔力を注入することだし、オズちゃんのその可愛い身体は魔王の最高レベルの作品。魔王はもういない今、その身体を改造できる腕前を持ってる奴はいない。身体の成長より、まず心の成長を考えて?」
「そんなこと言わなくでも知ってます」
大事だけど急ぎのことではないし、もう少しチャンスを待とう。
クヴァシルさんが作ったシュークリーム最高ね。でもわたしの顔を勝手に拭くのはやめてほしい。
「えーと、次はステーキね!いつもの通りフォークが危ないから私が食べさせてあげる」
「いつもの通りって3年前のことですか?もうやめてください、わたし幼児ではないですっ」
「そうそう、食べさせることは恥ずかしいでしょう?それは成長の証よ!オズちゃんの成長したなぁー!」
「変態みたいな顔つきをしないでください」
「嫌だよ変態なんて、そんな単語で自分のご主人様を呼んでー」
「冗談ですよ、わたしはクヴァシルさんのことが好きです。でも、わたしはずっと世話を受けるわけではない。きっといつか、クヴァシルさんみたいの大人しい人になりますから」
「はいはい頑張ってねー。そうだ、ご飯のあと新しい服を着ましょう!今度の服は…」
話の腰を折る声がある。
誰かがドアを叩いている。
「今度の服はボロボロや…」
まだ叩いている。
「ぼろぼろスタイルを確立して、そして魔女っぽいの…」
叩いている。声が大きくなる。
「魔女の帽や…」
「クヴァシルさん!いますかな!いますよね!お邪魔しまーす!」
大きな爆発だ。
聖光を感じてきた。誰かが聖光でドアを爆破したんだ。




