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第2話 人間を狩るハンター⑥

「死んで…た?」

「そうですね」


都市への道を歩きながら、わたしはアルシアさんと色んな話をした。気づいたらアルシアさんの情緒も落ち着きました。

その既に安定した情緒を再び乱したものは、道端のとある死体でした。


雨が降っているけど、とても新鮮な男性の死体ですね。

少し気になるから、わたしは死体を調べた。


「アルシアさん、これ見て」

「見ないです、絶対!」


これが聖国の入れ墨だ。

聖国の法律によると、ロリコンと性犯罪者はこの入れ墨を入れなきゃならない。


「これは首から脳に突き刺さる刀法、ダークエルフしか使わない刀法です。どうやらこの人間が、エリシウムさんに殺されたの」

「嘘…エリシウムがそんなこと…」

「大丈夫、この人はロリコン、死んでも構いません人ですから」


アルシアさんはもう10メーター以上の距離を引き離した。そんなに怖いの?


「わたしたちの行く場所は帝国の無法都市、ペドフィリアであれ山賊であれ、その都市には色んな悪い人に盤踞されている。『集団』もそこにいます」

「それは、危ないじゃないですか…」

「知らないロリコンさえ殺されましたし、エリシウムさんはきっと残虐な手段で『集団』を撲滅しますね。早く行きましょう」


家族が殺人鬼になったことに納得できない、これは当然のことね。

既に落ち着いた雰囲気もこれで変わった。


「エリシウム、一体どうして…」

「悪者への憎みに支配された以上、他の悪者にも情けをかけないのです。悪を裁く行為ならまだしも、その行為によって喜びを感じたら魔物になります。必ずエリシウムさんを助けに行きますから」


それにしても、厳しい事態に遭遇したね。

ここから魂の悲鳴が聞こえる。まだ確認されていないが、おそらく無法都市の人は今殺されている。

すくなくとも数十人もの死者が出た。全員人間。

一体何が起こったのかなぁ。


歩いていたら、わたしたちは都市への入り口に到着した。


「これは…」


十人前の死体。生きる人がいなさそうね。


山賊の警備団が入り口の古い城門に駐屯してるはずだったのに、ここに残るのは暴雨に洗い流されている山賊の死体だけ。

新鮮な死体なんですが、雨がどんどん降ってくるし、もうすぐ悪臭に満ちた場所になるね。


「…!」


アルシアさんは反吐が出そうな顔をしたが吐けなかった。可哀想。


「行けます?」

「全部、全部エリシウムが…」

「そうですね。みんなはエリシウムさんに殺されました」


吐こうとしても吐けない。泣こうとしても泣けない。こんなアルシアさん見たくないなぁ。


「待っててください」


わたしはとあるぼろきれでアルシアさんの目を覆った。


「なにも見ないで、わたしの手をつないで進んでください」

「…はい」


こうして、わたしたちは都市に入った。

死体だらけの道中でした。大量の死者がいる。

無法都市の住民は何百人だけだし犯罪者しかいないし、このような大量虐殺が起こったら秩序も崩壊してしまうね。


ここの死者は子供や女性は一人もいない、全部山賊や強盗みたい。

こんな凶暴な人間たちを短時間に虐殺できるのは、やっぱり魔物ね。


「歩きながら聞いてください。わたしたちはこの先エリシウムさんに会いに行きます。もし彼はまだ魔物ではないのから、全力で呼びかけて、彼の意識を理性を呼び返してください」

「呼びかけたら、エリシウムが暴行をやめます?」

「わかりません」

「オズさんはプロなんだから、エリシウムを助けることが…」

「できません。彼女を助けようとすると彼女に復讐を諦めさせるしかないのです」

「もし諦めさせなかったら?…」

「…」


わたしが退治します。

こう言えないよね。

事実を教えると、アルシアさんはまだ傷つけられるかもしれない。

言うべきことなのに、心がぞくぞくしててなにも言えない。


結局、わたしは勇気が出なかった。

勇気を持ってる生き物だったら、ここに言い出せますよね。人間ならばきっと言える。

人間って、本当に偉い存在ですね。


「…到着しました」


ここは、広場ね。

広場は都市の中心、市や集会を開く場所。引き取られたばかりのわたしもよくクヴァシルさんに手を繋がれて広場をぶらついた。


でも、この都市の広場にはなにもないなぁ。

…いいや、何かが中央にいる?


「エリシウムさんを見つけました、広場の中央にいます」

「本当!?」

「彼は、えっと、誰かを拷問していますらしいですね」


アルシアさんは慌ててぼろきれを外した。

ここから見えるのは、広場の中央に立っているエリシウムさんと、十字架につけた二人。

エリシウムさんは、十字架につけた二人を拷問している。

はっきりとは見えないけど、その二人はボロボロになっちゃったね。


「見えます?」

「エリシウムさん…」


アルシアさんは目の前のシーンに驚愕した。

自分のお姉さんが殺人鬼になった。これは何て悲しいことだ。

わたしは自分の指輪を見た。

凄く濁っている。もうすこし完全に腐蝕されるところだね。


「落ち着いてください。十字架につけた男性、見たことありますか?」

「はい、あの男性たちは…右の人は集団のリーダー、左の人は、女性に無様な姿や醜い顔をさせられて、それを楽しみにする男…」

「加害者、ということですよね」

「そんなことより、エリシウムが…!」

「エリシウムさんは今…え」


アルシアさんはもう慌てて走って行きました。

今のエリシウムさんと魔物は紙一重、行けば危ないですよ。こう言いたかったが、わたしはアルシアさんを止めなかった。


さっきの瞬間に感じてきた、アルシアさんの思いは本物でした。

そのすすり泣き顔、その焦り、そのなにも考えずすぐに走って行く行動。きっと家族との絆に導かれたまま行動しているのだろうね。

既にアルシアさんの気持ちを理解した以上、アルシアさんを阻止する理由がない。

静かにして、この二人の再会を見守ろうか。


雨が降っている。わたしはその場で黙って見ていた。


「エリシウム…」

「…」


妹が目の前に出てきたが、エリシウムさんは拷問を辞めたくなさそう。ただ平然とした態度で妹を見てる。


「アルシア、生きてるか」

「…エリシウムを見に来ました」

「確かにあの日、アルシアたちの遺骨を確実に検分したが」

「私は、幻影ではないよ?エリシウムを阻止するために復活したの!エリシウムが悪魔になるなんで、私、そんなこと見たくないから…」

「このまま生きていける?」

「え?…」


まるで知らない人に対し、雨よりも冷たい口調で、エリシウムが質問した。


「それとも、この世界にしばらく帰ってくるだけ?」

「…私は、はい。エリシウムの復讐を阻止しましたら、私も、すぐに死後の世界に帰る」

「そう」


あまりアルシアさんを気にしたくない。エリシウムさんは手を死に瀕している男の頭の上に置いた。

そして、水球のように握り潰した。

怖い握力でしたね。本当に魔物に近づきました。


「ヒィっ!…」


びっくりして尻餅をつく、アルシアさんは驚愕した恐怖顔で黙り込んだ。


「残ってる凶手はまだ一人、オレは行くよ。そっちの世界に会おう。またみんなと合流するからなぁ」

「それは、どういう意味…」

「またな」


妹を放置して行ってきた。これは死んだ家族への態度ではないと思うが。


「ダメです!私は、まだ…」


それに、アルシアさんはここで止まれるわけないんだろうね。


「まだ、エリシウムに色んなことを伝えたいの!エリシウムだって言うべきことがあるでしょう!なんでいかなければならないなのよぉ!」


完全に泣き出した声で叫んでいる。


「お父さんやお母さんは無事でしたよね?だったら早く帰ろう?エリシウムが復讐の殺人鬼になればお母さん泣けるよ?私だってエリシウムを助けたいの!だから、復讐を辞めて、帰り…」

「すまん」


冷血な口調で妹の悲願を拒否する。そして広場を去る。


「エリシウム…」


妹はまだ伝えたい千言万語を伝えてないのに、先に去った。ひどいやつね。

魔物になると、こうなるんだっけ。

絶望した顔でお姉さんを見送っている。アルシアさんが、


「そう、ですね、こんなことになるわけね」

「アルシアさん?」


心が殺された口調だ。

わざわざアルシアさんを蘇生させ、そして再びアルシアさんの心を傷つける。これはわたしの本意ではないのに。


また間違いをした。わたし、本当に自分で決める能力がないかも。

そうね。わたしのような下等生物って、やっぱり人間の指示を求めて行動するべきね。

嫌だ、また、泣きたい気分が…


「思い出したよオズちゃん。殺された人は、私だけではなかった」

「え?」

「…私と一緒に行動した人は、子供4人でした。無邪気なお子様たち、イチゴを拾ったらぬいぐるみに食べさせようとして持って帰りたい、かわいい子供たち…みんな…泣き叫んで、串に刺されて、炙られて…あの子たちのために尊厳を捨て、必死に命乞いしたものの、私、あの子たちを助けられなかった…」


アルシアさんが泣いている。

いいや、これは涙ではなくて洗い落とされた糞汁らしい。雨による偽装が剥落されている。


「間違いましたね、私たち。エリシウムはあんな悪魔たちを許すわけない、エリシウムに復讐を辞めさせる可能性も、最初からゼロなんだよ」


アルシアさんのセリフが麻酔薬のようにわたしの思考を抑えた。

それは、どういうこと?


「オズさん、お願い。エリシウムを退治してください」

「まぁ、最初の時そういう可能性も考えましたが」

「エリシウムはもう…化け物になったよね。頭蓋骨でさえ簡単に破壊できる化け物…人間性がない魔物になるくらいなら、あなたに始末させてしましょう」

「了解しました」

「痛くない方法でやりますね」

「知ってます」

「…ね」


魂が絶望に堕としたように、弱い力でわたしに、


「私、どうなになります?」

「間もなく雨による融解されて死ぬ、そしてただの糞になります」

「死後の世界でエリシウムに再会できます?」

「それは言えません。死後のことを漏らすと人々が命を軽視するようになりますから」

「そう」

「…と思いましたが、まぁ、再会できますよ。言いますとアルシアさんに安心させますから、言います」

「優しいですね、オズさん」

「別に」


すぐに素材に回帰しますし、これでいいか。


「では、いってきます」

「うん。今日は、ありがとうございました」

「さよなら、アルシアさん」


アルシアさんの不死生物としての短い人生も終わりだ。この先に再び死ぬ。

まぁ、生き物にとって死は大したことではない。

…が、よく考えたらやっぱアルシアさんが可哀想ね。一緒に行動した子供も、邪道に入るお姉さんも、誰も助けなかった。


わたしはどうしようもなかった。


本当は、エリシウムさんを助けたい、死んでるアルシアさんにもなるべく償ってあげたかった。

ただし、エリシウムさんは諦めるわけない。これを鑑みるとこの二人の運命は変わるわけがない。


だからわたしは、自分を責める必要がない…


「…」

嫌だ、涙が止まらん。


エリシウムさんもアルシアさんも、とっても優しい人なのに、なんでこんな運命に遭遇しなきゃいけないのよ。

どんなに心を痛めることか。


「落ち着いて、落ち着いて…」


涙を見られないように雨で顔を洗って、わたしは広場を去った。

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