第2話 人間を狩るハンター④
森林を歩くことは、思ったより大変でした。森の上空を飛ぶ時は楽勝だったのに。
エリシウムさんの指導を受けながら森林を行軍して、わたしは魔物や森林のことをいっぱい学んだ。森林に住んでる魔物になれるほと、森林の生態を理解しました。
確かに魔物のわたしにとって知らなくちいけない知識だ。
色々大変だったけど、なんとか無事に平地地区に到着した。
「まぁ、そろそろこの辺かっ」
「ここは…」
「荒れ廃れた、昔ある国の軍隊の大本営だ」
木材や金属だらけ、ここは確かに戦火に包まれた場所だ。戦場の遺跡ね。
ここでは地平線が見える。本当に森林から出てきた。
戦場なのに人間の魂が完全にいない。おそらくここは五十年以上の遺跡だ。
「北へ行くと帝国の哨兵線に到着する。帝国には保護施設があるから、そこに元気で生きていこう」
「いらないものを捨てたいことね、保護施設って」
「生真面目な性格で頭も少しかたいけど、オズは大人しい子供だ。一人で生きていくのも大丈夫だろう。ここで別れるね」
「エリシウムさんはどうします?」
「オレは北東の都市に行く。やつらはそこにいるから」
「そうするとエリシウムさんも悪魔になりますよ?結局、悪魔になってもやります?」
「オレ以外は誰もやらないからね。言ったでしょう?そいつらは法の網を逃れた悪党、制裁できる人はオレしかいない。だからもう文句を言う」
「エリシウムさんは悪を制裁する人だっけ?私怨を抱いているのではないですか?悪魔の手段で悪魔を制裁したいって、エリシウムさんはも立派な悪魔になりましたね」
「仲良くなると毒舌になるなんて予想外のことだなぁ。とにかく、もう森林から出たし、じゃあなぁ」
こうしてエリシウムさんは北東へ行った。
一週間かかってもなにも聞き出せなかったし、ここでついていくのも意味ない。
この後、エリシウムさんは残虐なことをしにいく。それは絶対、わたしに知らせたくないことでもある。
「…はぁ」
失敗しましたね。
エリシウムさんは腐蝕される症状が緩和されてない。つまり復讐の決意が揺らぐことは一度もなかった。
このままだと、エリシウムさんが本当に魔物になってしまう。
嫌だ。
エリシウムさんが魔物になるなんて、そんなの絶対嫌だ!…
「シュコ、おいて。人間の形態で」
ひさしぶりに、人間形態のままシュコを召喚した。
地獄に住んでる霊烏だが、人間形態のシュコは大人の女性になる。
普通の魔物と同じく、シュコは服を着ない。
これは本当に、大人しか持ってない華奢な体型だ。
「なになにー、え?…」
「起きたばかりですか?」
見るからには人間の姿だけど、背中に黒い羽根がついてる。髪が黒くて長く、ひどく亂れている。それに頭悪い。
カルルさんが言ってた。こういうのは、あれだなぁ。喪女だ。
こんな身体になると人間と対等に対話できるようになるね。でもその胸重そうって嫌だ。
「何か用なの?もうすぐ雨が降りそうからねさせていいー?」
「一週間前にわたしたちがある場所に到着したこと、覚えています?」
「しらないー」
「5匹の死霊を銜えて死界まで届きましたじゃないですか?焦げたあれ」
「焦げた…あ、あれね!死んだダークエルフの魂!そうそう、死界に行かせたぞ!あたし食べない!ほめてー」
「はいはい」
無垢な笑顔をした。わたしもシュコの頭をなでなでしました。
シュコの体温は相変わらず高い。さすが地獄の住民ね。
「てー、なにする?」
「死界への旅路で、魂たちはなにが言いました?」
「えーと、ずっと泣いていたらしいよ?よく覚えてないけど」
「そう」
「魂たちに聞きたいことでもある?」
「そうね」
「じゃあ本人に聞けばいいじゃないのー?はい」
吐瀉物と共に、シュコが口の中からなにかを吐き出した。
「死んだダークエルフの恥骨!これがあったらオズが死者を蘇らせる!」
「…身元不明の被害死体を食わないでくださいよ。あと、クヴァシルさんも言ってた、なるべく力を隠すって」
「だからなんで人間の命令を聞かなきゃいけないのよー。力を隠すことも服を着ることも、人間にもらった指令なのね!不快な気持ちはない?」
「ないけど」
「オズ、頭硬いー!あたしはバカだけどあたしも知ってる、オズは本当に頑固者ね!これ持って!」
少し不愉快に感じたようだ、シュコは恥骨をわたしにくれた。
とても新鮮な骨の欠片だ。洗ったらスープを作れる。
「今すぐ!その死んでるダークエルフを蘇らせましょう!そして知りたいことを調ベろう!」
「…わかりました」
他の方法はないけど、やっぱりこの魔法を使いたくない。
何故なら、これは人間と亜人間にとってとても失礼な黒魔法だから。
「シュコ、今うんこできます?」
「はいはいー」
そしてシュコはその場で大量のうんこと小便をした。
「なんで人間の排泄孔が封鎖されてるんだろうー?本当にわけわからない身体ね。これで足りる?オズもする?」
「いいえ、これが充分です」
臭い下痢便、凄い量ね。
黒魔法の素材は不潔であればあるほど使いやすい。
わたしは骨の欠片を糞に詰め込んで、マッチをした。
「ひさしぶりでしたね、このスキル」
「わーい、やれぇぇー!」
土、火、糞、尿。素材をこねて混ぜて、わたしは泥人形を作った。
「燃えろう、そして帰りましょう」
骨の欠片をビーコンにして、魂を召喚し泥人形に詰め込みました。
そしたら、
魂の形に対応し、死者の身体は糞土で再現された。
「…?」
これでダークエルフの死者を蘇生させた。
…まぁ、心と肉体の形は本人だけど材質は糞土や火なのね。
「…うん、なに?私確かに…」
少女のダークエルフ(今は不死生物)はまだ状況を理解してないようだ。
「初めまして。中央聖国特別捜査官、オズです」
「え?」
「あなたはもう死んでたのです。自分のこと、覚えていますか?」
「死んだ?…私、確かに…」
何かを思い出した。
「ィっ…!」
そして、急に恐怖顔を出して身体をうずくまっていた。
「いっ、嫌!…ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいィィィィ!もう、嫌、お願い…」
「落ち着いてください。わたしたちは今あなたを殺害した凶手のことを調べている」
「…」
「聞きたいことがありますので、ご協力を」
「…私は、今…」
「蘇生されました。しばらくの措置なんですが」
「そう、ですか」
なんとなく落ち着いた。
気落ちをして、そして感傷に浸る口調で、
「わかった、知ってる限り何でも言うから」




