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オルゴールが鳴らすその音が、宇宙の果てに届く頃には

作者: 庭師∽mile
掲載日:2025/12/30

◆◆◆

 「きみは時代遅れだなぁ」


 今日もオルゴールは、人々の言葉に酷く落ち込んでいた。

 世界がすべて灰色に見えた。


◇◆◆


 この世界は、音楽で満ちている。


 近年、音楽を鳴らす主役は電子機器の面々だ。

 スマホ、オーディオプレイヤー、ラジカセ、蓄音機などなど。

 新旧いろいろあるが、それらは楽器演奏や歌声をほぼそのまま再現できる。


 それに比べて……。

 曇り空を見上げ、オルゴールは溜息を吐く。


 彼が鳴らせるのは、金属を弾く音だけ。

 旋律や和音は鳴らせても、楽器や歌は再現できない。


 澄んだ鈴のような音色が、人々を魅了した時代もあった。

 でも今は、ほぼ忘れ去られた存在。


 世界に取り残された感覚に、一段と気が沈むのだった。


◇◇◆

 ある日の夜。

 音楽道具たちの集会が、星空の下で開かれていた。


 一同の前で、音楽の神さまが問いかける。


 「昔の人類が、宇宙にレコードを打ち上げた事を覚えているか?」


 かつて人類は、地球の音や画像を記録したレコードを無人探査機に乗せ、宇宙に打ち上げた。

 宇宙人に地球のことを知ってもらうために。

 そこには各言語での挨拶とともに、珠玉の音楽がいくつか収録された。


 金色にきらきら輝くレコードは、今も遠い宇宙を旅しているが――。


 「あれは宇宙人に再生方法が分かりにくかった可能性がある。人類はよりシンプルな形で音楽を届けなおす気のようだ」

 「どうやって……?」

 「探査機を再度打ち上げる。今度はオルゴールを乗せたいそうだ」


 ざわつく一同。


 「なぜ金属音しか鳴らせないやつを?」

 「スマホやラジカセのほうが良いんじゃ?」

 「いや、電気で動くものは長旅の中で力尽きてしまう」

 「ぜんまいで動くオルゴールはレコードより仕組みが単純だし、悪くないな」


 周囲の視線がオルゴールに集まる。

 彼は突然の大役に困惑しつつ、何かの役に立てる喜びを感じていた。


◇◇◇


 こうして、オルゴールは宇宙へと旅立った。

 不安もあるが、それ以上にわくわくする。


 旅が終わるころには、地球ではまた新しい音楽が生まれているだろうか。


 今あるすべては、いずれ過去になる。

 時代遅れの自分を嘆く必要はなかった。

 今はやれることをやるだけだ。


 探査機の窓から見える地球は、きらきらと輝いて見えた。

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