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人生フリーフォール状態の僕が、ユニークスキル【大落下】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のためみんなのために戦ってたら知らぬ間に最強になってました  作者: THE TAKE
第3章 リンデン王国編

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第95話 悪魔の契約にサインを


 可能性を言及せず、僕らに聞く。

 コクリと頷いたカルラに対し、ゼラルギーは古めかしく分厚い本を取り出しパラパラ捲ると、小さな文字がぎっしりと書き込まれたページを僕らに提示した。



「実は今、ワシはとある武器を作っておる。しかし武器製作に必要な材料が無くて困っておってな。……もしそいつを採ってきてきてくれるなら、高く買い取ってやろう。どうだ、良い条件だろ?」



 僕はカルラの顔をちらりと見やる。

 ギルドマスターの話では、石を入手するには石の対価となる品物を渡すか、多額の金を払うことが条件だった。全ては口にしないものの、『買い取る』というワードに意味を読み取った僕らは、自然と「何が必要なんですか?」と聞き返していた。



「この町の南にライスルーベの洞窟と呼ばれる地下洞窟があるんだが、いつからかそこがダンジョン化して、今では立派なモンスターの巣窟になっていてな。そこの中層域にジャイアントキラービーと呼ばれる巨大な蜂のモンスターが巣を作っているんだが、そいつの蜜ロウを採ってきてほしい」


「蜜ロウ、ですか。それはどうして?」


「ワシが作る武器を形成する金属の魔力媒介として、蜂の蜜ロウが必要なんだ。しかしアレは厄介なモンスターでの、普通の冒険者ごときじゃあ、奴らの蜜ロウを持ち帰ることができんのだ」


「それは妙な話だな。ジャイアントキラービーはDランク以下でも狩れる初歩的なモンスターと記憶しているが?」



 しかしゼラルギーが首を横に振る。



「単体ならばそれほど脅威ではない。しかしあそこはダメだ。数が多すぎる」


「数の問題か。どれほどの数が生息しているのだ?」


「以前に調査と銘打ちダンジョンに入った者がいたが、奴らの巣の入口まで進んだところで諦めて逃げ帰ってきたよ。ダンジョンの通路が狭いうえ、奴ら捨て身の圧倒的な数の力で密集して敵の温度を急激に上昇させて排除するっちゅう荒業を用いるせいで、並の冒険者じゃ近付くこともできねぇときてる。だから正確な数もわからねぇし、巣の奥がどうなってるか、詳しく知ってる奴も少ねぇのさ」


「しかし蜜ロウならば別の場所で採ることも可能だろう。そこで入手する必要があるのか?」



 これだから素人はと言いたげなゼラルギーは、実際に作成中の金属の塊を取り出し、ドカンと天板の上に置いた。見るからに重そうな塊を撫でるように叩いた彼は、カルラに「触ってみな」と促した。



「……随分と異様な雰囲気のある金属だな。もしかして魔鉱石か?」



「御名答」と石に触れたゼラルギーは、書面に並んだ文字の一文を示しながら、説明を続けた。



「魔鉱石の調合は難しくてな。ワシら本物のプロが扱った場合ですら、その調整に手を焼く代物だ。素人にはまず手に負えねぇ」



「調節ってなんですか?」と僕が緊張感なく聞くと、彼は呆れたように僕の顔を覗き込みながら、「コイツはお前らの一体なんなんだ?」とカルラに聞いた。



「彼は、……その、一応我らパーティーのリーダーだ。そのまぁ、……なんだ。気にせず話を進めてくれ」



 どこか意地悪く僕のことを邪険にするゼラルギーは、まぁいいと話を再開する。

 ……でもなんだろう。なんだか悔しい。



「魔鉱石の扱いと言っても幅が広くてな。媒介の採れた産地や、地域特有の付与条件、その他にも魔力感受の有無など、特殊な "条件" が付与されたものも多いのさ。とりわけリンデン産の魔鉱石は、外で採れた蜜ロウとの相性が最悪ときてる。可能であればリンデン産のものとを掛け合わせたいんだ」


「魔鉱石にそのような特性があるとは知らなかった。しかしできんことはないのだろう?」


「もし仮に、合成の成功確率1パーセントの材料と、確率50パーセントの材料があったら、アンタはどっちを使う?」


「……考えるまでもない。後者だ」


「だな。しかもこの魔鉱石ときたら、純度が高く、そんじょそこらのモノとは価値が違いすぎる。失敗は許されねぇ。となれば、精製の確率を少しでも上げたいと考えるのは職人の(さが)だ。間違ってるかい?」



 なるほどと頷くものの、僕は「それでも蜜ロウくらい国内にありそうなものだけど」と素朴な疑問を口にしてしまった。カチンときたのか、ゼラルギーは僕の胸元を拳の先でゴツゴツと押しながら、念押しするように言った。



「だーかーら、それを採れるのがライスルーベのダンジョンだけなんだよ。少しは察しろ、このバカモンが!」



 叱られている様子に「ぷぷぷ」と震えながら笑っているポンさん。

 なんだよ、普通に質問しただけじゃないか!



「で、そこで頼みたいのが蜜ロウの入手だ。見たところ、あんたら相当腕が立つとみえる。ニコルがよこしてくるほどの冒険者だ。それなりに強ぇんだよな?」



 どうやら全て彼女の思惑通りかと察したカルラは、「詳しく話を聞こう」と承諾した。へいへいと腰を叩きながら詳細な説明を聞きに混じるポンさんにお尻で弾かれ、僕とインフは指を咥えたまま、三人のやり取りをしばし窺っていた。



「なるほど、中層の最西端領域の全体が蜂の巣になっていて、そのどこかに蜜ロウを貯める貯蔵地があるのだな?」


「ああ。しかし詳しい場所は入った者がほとんどいないせいで明らかになってねぇ。正直なところ、俺から説明できるのはこの程度だ。……正直、難度は相当に高い。無理ならやめてくれて構わねぇ」



 どうやらゼラルギーは無茶半分で依頼している様子で、成功を期待している様子はない。しかし不敵に「へん」と打算的に笑みを浮かべたポンさんは、ボーっと彼らの会話を眺めていた僕の頭に飛び乗り、僕の耳を引っ張りながら宣言した。



「おっちゃんよ、俺らを舐めてもろたらあかんで。その依頼、受けさせてもらおやないか。……この世間知らずの坊っちゃん(+俺)がなッ!!」



 他人事のように聞いていた僕が、「え゛?」と聞き返した以上に、驚いたゼラルギーが「はぁ?」と呆れた。しかしインフとカルラは、さも当然とばかりに無表情で頷いていた。



「おいおいおい、ワシはアンタらの実力を見込んで依頼してるんだ。竜族の嬢ちゃんと、エルフのアンタなら、もしかしてやってくれるんじゃないかと思ってな。それをこのあんちゃんとお前が? 冗談はよしてくれ」



 それ以上ふざけるのなら、この話はなしだと天を仰いだゼラルギーに、ポンさんはさらにふてぶてしく宣言する。その様子は、まるでウマい話を引っかける目前に迫った詐欺師のようだった。



「ならこんなんはどや。ウチの坊っちゃんがその蜜ロウ採ってきたら、おっちゃんが今考えてる1.2倍の値で買い取って~な。そのかわり、ダメやったらおっさんの指示するアイテムを1個手に入れるまで、ウチの坊っちゃんがココで下働きしたる。それでどや!?」



 ポンさん以上に不敵な笑みを浮かべたゼラルギーが「1.5倍でいいぜ」と宣言する。

 互いに悪魔のような顔で笑い合い、ガッシリと腕を組み、僕をダシにした契約が勝手に交わされるのであった。


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