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人生フリーフォール状態の僕が、ユニークスキル【大落下】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のためみんなのために戦ってたら知らぬ間に最強になってました  作者: THE TAKE
第2章 ペンラム国編

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第80話 真竜国の絶対君主



 噴き出すほどの絶対的魔力が閉鎖空間を覆い尽くし、全員の身体が一切の身動きを封じられて硬直する。


 あまりにも不格好なビックリ顔で宙に浮いたまま硬直したポンさんが、後頭部から静かに地面に落下した。しかし痛みを感じる暇もないほど、村長、カルラ、ポンさんそれぞれが、開口したままインフのことを凝視するほかない。


 僕は脳内で頭が破裂するくらいスキルを連呼し、幾重にも状態異常の多重掛けを繰り返し、奥歯を噛み締めながら手を伸ばした。そしてゴリゴリと指を鳴らし、二人に迫ろうとしていた彼女の後ろ姿に抱きついた。



「インフッ、ダメだ!」



 呼びかけにハッと我に返って魔力を発散させた彼女は、目を泳がせながら「わらわは……」と言葉尻を詰まらせた。そしてそのまま何も言うことなく、洞窟の外へと出ていってしまった。



 文字どおり、呆然とするしかない面々を残し、誰ひとり口を開くことなく時間は流れていった――




 ★ ★ ★ ★




 かれこれ数時間が過ぎた。


 なのに僕らはまだ、誰もが口を開くことなく、それぞれ考えに耽っているようだった。



 日頃あれだけ口うるさいポンさんですら静かなのだから、きっともう誤魔化すことはできない。

 僕は洞窟を出て、森のほとりの小さな泉の縁で寂しそうに膝を抱えていたインフの隣に腰掛けた。


 目の端でちらりと僕を見やった彼女は、バツが悪そうに顔を伏せ、「何か御用ですか」と聞いた。僕は「ううん」と答え、そのまま何も聞かず、拾った小石を泉へ投げ入れた。



「……わらわのこと、怒っていますか」



 今にも消え入りそうな声でインフが聞いた。僕は大きく首を振り、「怒ってないよ」と答えた。


 ああなってしまった以上、もはや取れる行動の幅は決まっていた。

 インフが言わなくても、きっと僕は彼らに本当のことを話していたと思う。だけどその真実を知った時、彼らが僕らのことをどう思うのかだけが気掛かりだった。


 ポンさんだって、きっともうこれまでのようには接してくれないだろう。事あるごとに『滅ぼせ』『殺せ』『消してしまえ』と口にしていた彼女の存在が、全世界が畏怖する本物の怪物だったと知ってしまった今、それを否定することなど僕にはできない。


 カルラにしても、自分たちエルフの仲間を苦しめていた親玉が急に現れたのだ。その対応も一筋縄ではいかないに決まっている。

 たとえこの場で殺されずに済んだとしても、今後の対応次第では村どころか種族そのものが滅びてもおかしくないと考えるに違いない。


 まず間違いなく、僕らの関係性は代わってしまうだろう。インフにとってはある意味で好都合(?)なのかもしれないけど、この世界を生き抜いていくうえで、僕にとってこれはあまりにも大きなことのように思えて仕方なかった。



「何れにしても、いつかは言わなきゃいけないことだったんだよ。だけど、僕はズルいね……」



 不思議そうな顔をするインフ。

「主様?」と僕の目を見て言う。



「本当は、僕がちゃんとみんなに説明しなきゃいけなかったんだ。なのに肝心なことをインフに言わせちゃった。……いつもそうなんだ、僕は」



 自分が考えもしなかった咄嗟の事態に陥ると、いつも思考停止してどうすることもできない。常にルーティングしている『自分の習性』なら対処できても、それ以外はとんだポンコツ。今も昔も変わらないままだ。


 こんなだから、僕はダメなんだ。

 自分のダメさ加減が、いつだって誰かを不幸にしてしまう。今回も僕がもっとしっかりしていれば、誰も傷つけずに済んだはずなのに……



「インフが気にすることじゃないよ。このことは、僕がみんなに説明する。心配しないで」



 お尻についた砂を払い、僕は三回深呼吸してから、覚悟を決めて「ヨシ」と呟く。そしてインフにここで待っててと告げ、みんなと話をつけるため、僕は再び洞窟へ戻った。



 異様な雰囲気が漂う中、洞窟入口にもたれ、僕が戻るのを待ち構えていたカルラがあごで合図をした。どうやらついてきてくれという意味で、僕は連れられるまま洞窟の奥にある小さな一室へと招かれた。


 村長の間として備えられた小ぶりの部屋には、既に村長とエアリス、そしてポンさんが深刻な顔をして座っていた。「そちらへ」と促す彼女に言われたとおり、僕は彼らと対面する一席に腰掛けた。


 皆、明らかに戸惑っていた。

 言うまでもなく顔は強張ったまま、どう対応してよいか困っている様子だ。


 僕はふぅとひとつ大きく息を吐き、「皆さんにお話しておきたいことがあります」と切り出した。



「先程彼女……、いいえ、インフが言ったことは、…………事実です。彼女はペンラム王国の東に位置する真竜国の女王であり、行方不明とされているインフェ・グレーゴル・ドルード12世に間違いありません」



 村長が顔を伏せ、小さく首を振りながら「ああ」と漏らす。ポンさんは喉にモチでも詰まらせたような顔で、額の血管をピクピク動かし白目を剥いている。



「様々な事情で、僕は彼女と旅をしています。……ただ旅と言っても、特に目的地や行きたい場所があるわけではありません。ペンラム王国へやってきたのも、本当に偶然です」



 要領を得ない僕の言葉に、全員の顔に不安の色が広がっていく。しかし唯一、初めてその事実を聞かされたエアリスだけが、バッと立ち上がり、「ハァ~!?」と声を上げた。



「い、い、い、インフェ・グレーゴル・ドルード12世って、し、し、し、真竜国の絶対君主じゃない。な、な、な、なんでそんなのが、こ、こ、こ、こ、こんなところにいるのよ!!?」



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