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人生フリーフォール状態の僕が、ユニークスキル【大落下】で逆に急上昇してしまった件~世のため人のためみんなのために戦ってたら知らぬ間に最強になってました  作者: THE TAKE
第2章 ペンラム国編

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第57話 三首の犬コロ


「主様、また面倒事に手を貸すおつもりですか」



 文句を言いつつ折れてくれたポンさんと違い、インフはやっぱり不満なご様子。しかし僕が行くとなればついていくのもやむなしということらしく、急ぐ僕らに渋々ついてくる彼女の姿があった。



「ええと、ダンジョンの入口は、確かこの魔道具を確認して……」



 カルラがしていたのを真似て道具を掲げてみる。しかし正しい使い方がわからず、僕は悩んだ挙げ句、それをポンさんへトスしてみた。



「お願い、使い方教えて!」


「……無計画にもほどがあるやろ。ホンマいい加減なやっちゃで」



 想像と予測を働かせ、ああでもないこうでもないと道具を模索したポンさんは、ものの数分で使い方を導き出し、ダンジョンの入口を見つけ出した。こんなに小さいのに利口なモンスターだねぇと僕が頭を撫でると、心底気怠そうに「撫でんなや!」とマジギレした。



「それじゃあ行くよ。道案内はお願いね、ポンさん!」


「あんだけの啖呵きっといて、なしてそこ丸投げやねん……。ホンマええ性格してるわ」



 細い出入り口から地下の空洞に降りた僕らは、カルラと別れた表層の階段へと急ぐ。やはりその道中も冒険者の影はなく、新たに誰かがダンジョンに入った形跡はない。

 しかしそれは、イコール彼女に手を貸す存在がいないことを示し、恐らくは今もたった一人で奮闘していることを表していた。


 砂漠地帯の地下にも関わらず、ジメッとまとわりつくような空気に息を飲んだ僕は、光なく地下へと続く階段の奥を見つめながら、胸を叩き、行くぞと覚悟を決める。


 ここから先は、未知の領域だ。

 ダンジョンも、そこに巣食うモンスターも、僕は何も知らない。僕にとって初めてのダンジョンがこれから始まるのだから……



「主様、そう気を張らずとも問題ございません。このような低ランクダンジョン、主様の手を煩わせるようなものではございません。さっさと済ませ、次へ参りましょう」



 僕の決死の覚悟を無視して欠伸しながら軽く言ったインフは、フリフリの衣服が汚れないようにガードの魔法をかけてからパチンと指を鳴らした。すると周囲に淡い光が灯り、僕らが進む先々を柔らかく照らした。



「あ、ありがとう。やっぱりインフは凄いね」



 不思議と満足気な彼女が珍しく張り切った様子で僕の手を取り先導してくれる。しかし「おのれ、道わからんやろ」という根本的なポンさんのツッコミで我に返り、グギギギと恥ずかしそうに睨みつけた。



「目的地までは、どれくらいかかるのかな?」


「ここの中層て呼ばれるのは地下10階からやけど、グレートマンティスがどこにおるかは知らんから、とにかく行ってみるしかないやろな」


「ひとまず地下10階層まで行くんだね。よし、急ごう!」



 僕の肩上に腰掛けたポンさんは、小さな丸メガネをかけ、競馬新聞を楽しむジジイのように折り込んだ地図に目を通しながら、「次の角、左の雰囲気やな」と案内した。薄暗いはずのダンジョン通路にも関わらず、インフの魔法によって学校の廊下くらい明るさを増した道筋は、モンスターが身を隠すことすら困難なほど見通しよく繋がっている。



「次を曲がるとモンスターが2体隠れています。ご準備を」


「それ倒したら次の角を右、さらに次の三叉路は真ん中で、さらに続く四叉路はいっちゃん左やな」



 モンスターの探知をしてくれるインフの指示に続き、ちゃかちゃか先導してくれるポンさん。闇雲に走るだけな僕は、余計なことを考えず、ただただ魔力防御低下(スピリット ドレイン)を連発し、立ち塞がるモンスターに突進した。

 モンスターが避けてくれれば深追いはしない。しかし敵意を持って襲いかかってくるモンスターは、仕方なく弾き飛ばす。無駄な戦いは避けたいけど、今は四の五の言っていられない。一刻も早くカルラを助けなければならないのだから!



「ウタ、こんなペースで走り続けて大丈夫か? いざってときに動けまへんじゃ世話ないで」


「大丈夫! 力の使い方もかなり慣れてきたから、少しくらいなら調節できるようになってるし」


「ふん、犬コロの分際で無礼な忠告を。主様がこの程度でへばるものか!」


「黙っとけ脳筋! おのれら無限体力種族と箱入り坊っちゃんなウタを一緒にすなよカス!」



 犬歯を剥きながらいがみ合う二人を無視し、僕はさらに走る速度を上げた。大落下のステータス異常無効と跳躍とを組み合わせ、考え得る最高速度で低い天井の細道を駆け抜けた。



「次の角をみぎ~、そしたらいよいよボス部屋に突き当たるで」


「ぼ、ボス部屋!? なにそれ!」


「そらダンジョンやからな。途中にボス部屋があるのは御愛嬌やん」


「そ、そんなのあるなんて聞いてないよ、ってッ、アガッ!?」



 しかし角を曲がった次の瞬間、ダンジョンの洗礼なのか、動揺している僕の足元が急激に揺らいだ。全員が「は?」と不思議そうにこちらを見つめる中、僕は冷静にもう一度自分の足元を見つめた。するとそこには、本来あるはずがない、底も見えないほど深い穴(※罠)があった。



「でえ、ええええぇぇ!?」



 ボス部屋を前に落下した僕らは、そのまま壁伝いにゴロゴロ転がり、前転後転を繰り返し、かなり下の階層の密室にボトンと着地した。

 落下中無敵な僕と対象的に、全身打撲状態に陥ったポンさんは頭上にハトを飛ばしていたけど、落ちた形跡すら感じさせないインフは冷静に僕らが閉じ込められた密室空間を眺めていた。



「いてて、なんだって急に落とし穴なんか……。ポンさん大丈夫?」


「大丈夫なことあるかー。そもそも落とし穴があるなんて聞いてへんで。どーなっとんねん、この地図!?」



 馬券が外れ、地図を地面に叩きつけながら憤っている雰囲気なポンさんをよそに、「主様」とインフが呟いた。彼女の視線の先では、不敵に眼をギラつかせる何かがおり、こちらを凝視していた。



「どうやら罠だったようですね。おい犬畜生、ここは第何層の何部屋だ?」


「なーにを冷静に質問してくれてんねん。そんなことより、今はアレをどうにかせなあかんやろ?」



 薄闇の中から姿を現したのは、三首の巨大な犬だった。僕が知る限りで言うところ、ケルベロスと呼ばれる形のモンスターが、ダラダラと涎を垂らしながら前脚を地面に擦り付けていた。



「ぶ、ブラックケルベロスやと!? ヒー、なんでこんな高ランクのモンスターが、こんな階層におんねん!?」



 震え上がり蛇に睨まれた蛙状態のポンさんが背後に隠れ、「あかんあかん」と仕切りに繰り返す。しかしインフは冷静そのもので、ジリジリ近付いてくる巨大な黒の塊を見上げながら、冷笑を浮かべる。



「主に楯突く生意気な犬コロのお次は、地に住まう三首の犬コロときましたか。恥ずかしげもなく、むさ苦しいそのなりで、わらわの前に立ち塞がるなど片腹痛い」



 グギャルグギャルと激しく首を動かしインフの目前に迫ったケルベロスは、不気味に微笑む化物の顔面を近付けた。そしてインフを軽く飲み込んでしまうほど巨大な口を開けた。



「い、インフ、危ない、逃げ――」



 言い終わらぬうちに、巨大な上下の歯がガチンと音を鳴らす。直後、今まで僕の手の届く範囲にいたインフの姿が消え、「え?」と漏らした僕は、目の前でゴリゴリと何かを擦り潰す巨犬を呆然と見つめていた。



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