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ゆめか?

 朝に太陽が昇り、小鳥のさえずりが聞こえてくる。

 昼には、ギラギラに照らしつけてくる太陽に雲がぽつりと浮かんでいる。

 晩には、太陽が沈む。空が赤くきれいに照らされる。

 夜は月が昇る。暗い中、希望のように照らしつけてくる光を隠すようなおぼろ雲。

そんな毎日がいつまでも続くと思っていた。あの頃までは。

夢叶が、、、、、、、、、、、。




 「ハっ」

 私は目を覚ます。じきに夢だったことに気が付いた。服には膨大な汗。体を動かそうとするたびに、汗が体を張り付いてきて気持ち悪い感覚が私を襲う。


 「またこの夢か~」


 もう何度この夢を見たことだろう。毎回、このタイミングで夢が終わってしまう。私の大親友であった夢叶はどこに行ってしまったのだろうか。夢叶が消えたのは柔らかな春の頃の話だった。


 私と夢叶は二人で、咲き乱れる花々を眺めに隅田川の近くまで来ていた。差し込む太陽が私たちを照らしつけている。そこには想像通りたくさんの人がいた。若い人もいれば、中年くらいの人やお年寄りの方々など幅広い年代に楽しまれていた。この季節になると、隅田川付近にはお花見目当てで賑わっている。あたりを見渡せば屋台なども出ている。


 「せっかく来たんだし、なんか買ってく?」


 そう夢叶が言う。目の前には大きなたこ焼きが看板の屋台が建っていた。私はたこ焼きが大好きなのでとてもうれしい。多分だけど、夢叶はそれを見越したうえで声をかけてきたのだろう。実際、私は結構自分の感情を表に出さないことが多い、と言われることが多々ある。そんな私を気遣ってくれたことに感謝の気持ちがあふれる。


 「じゃあ、買おうかな。夢叶の分も買おうか?奢るよ」

 「いや、私が出すよ。いつも愛華にはお世話になってるんだし。」


 私はそこで少し悩む。夢叶の表情が明るくなったのがわかったからだ。この表情をしたときは大体、誰かのために何かをしてあげたい、という気持ちが夢叶自身であふれたときだ。まあ、いつも私のためにたくさんのことをしてくれてるんだけどね。


 「じゃあ、お言葉に甘えても?」

 「もちろん。まだ少ししか見れていないけど、こんなきれいな桜を見せに連れてきてくれた愛華には感謝の気持ちしかないからさ。」


 そう言った後、

 「チーズたこ焼きを二つお願いします」と店主の人に頼む。

 料金はまあまあいいお値段である。屋台って大体どこも高いんだよね。だけど、屋台だとなんか普通に食べるよりも何倍もおいしく感じる。きっと、夢叶と一緒に食べれてるからなんだろうけど。


 「はい、どうぞ。」そう店主の人が言う。


 「はい、これ。」そう言われ、たこ焼きを渡される。もうパッケージの時点で、大きなたこ焼きがこの屋台の看板なのがよくわかった。ボリュームがとにかくすごい!あと、普通に夢叶は疑問に思っていないけど、丸い。直径10cmくらいの球体のパッケージにたこ焼きが包まれていて、ほかのたこ焼き屋とは違う独自性がある。


 こんなパッケージのたこ焼きは見たことがない。私は期待を込めて中をのぞいてみる。するとそこには予想通り、大きな球体のたこ焼きが出てきた。


 「ワーォ。でかすぎでしょ。」

 「私はここ何回も行ったことあるからそんなにもう驚かないんだけどね」


 そう笑いながら夢叶が言う。夢叶は自称たこ焼き評論家、と名乗っている。でも、名乗れるくらいに膨大な量のたこ焼きを食べてきている。その中でもこのたこ焼き屋さんは歴代TOP3に入る程おいしいらしい。本店もあるらしくよく食べに行ってる、というのを前に聞いたことがあるんだよね。


 「取り敢えず、あそこの公園にでもいって、座って花見しながら食べよ?」 

 「まぁ、そうだね。本当にここおいしいからついつい、、、。」


 もう食べているという尋常じゃない速さ。おいしいものには目がないってね。そんなところも可愛いらしいんだけど。私たちは近くの公園に移動することにした。





 「うぅ~。熱い。でもこれめちゃくちゃおいしい!」

 「愛華が気に入ってくれたらよかったよ。」


 実際、めっちゃおいしい。これをお花見に来て食べないのは絶対もったいない、といっても過言ではないくらいに。夢叶がたくさん食べる理由も納得だわ。桜を見ながらたこ焼きを食べ進める私たち。そんな時私のほっぺたに桜のはなびらが落ちてきたのが分かった。それと同時に柔らかな感触を感じたのも。心拍数が急増するのを感じた。


 「桜の花びらって案外おいしいんだね。」


 そうのんきに夢叶言う。事実上キスってことなのに。こういうマイペースなところ直したほうがいいと思うんだけどね。でも、そこが夢叶の可愛いところ。


 そして私たちは花見を満喫して帰路に着く。家の方向が違う大きな交差点で最後の言葉を交わして別れる。

 「また明日。」

 「また明日ね。バイバイ」

 そう言い手を振る夢叶。夢叶のながい髪やその顔が少し悲しそうに見えた。


 

 

 それからというもの、夢叶を見ていない。時期に私は知る。夢叶がいなくなってしまったことを。母から聞かされた。どこか遠くの街に行ってしまったと。それからというもの、私の胸に空いた大きな穴が埋まらないまま生活を送っていった。


 例年より少し遅い梅雨が明け、ギラギラと太陽の光が私たちの町に差し込む日に私は思い立った。


 「そうだ、あの時夢叶と見に行った桜を見に行こう」と。それが私たちの別れた最後の場所なのだから。きっと、もう葉桜だろう。花びらが散っていくように、私たちの関係もこのまま散っていくのだろうか。憂鬱な気持ちが私を満たしたまま、あの場所に向かった。


 あたりにはあの時のような賑わいはもうない。でも、人気がなくなったわけではなく大学生と思われるカップルや、お年寄りの方、子連れの親などが公園内には見られた。予想通り、もう桜は散っていた。跡形もなく。子どもの楽しそうな声に腹が立ってくる。私はこんなにも辛い思いをしているのに。黒い感情におおわれてしまったような感覚に陥ってしまった。


 結局何も手掛かりはなかった。ここで諦めるのが吉なのだろうが、私にそんな強い選択はできなかった。最後の祈りを込めて、夢叶と別れた大通りにある交差点に向かった行く。そして、待っていた信号が青になったため渡ろうとする。もう、あの場所は目の前だ。少しの期待を胸に私は向かおうとした。


 その瞬間に隣から車が突っ込んできた。

「キィキッ」

そう音を立てたことを感じたのを最後に私は意識を失った。





重たい目を開ける。そこには見慣れない天井が。何も思い出せないが、体を起こして周りを見渡してみる。その瞬間私は気づく。ここは病院だと。左側を見ると眠ったままの母がいた。私のかすかな音に気付いたのかびっくりするように起きる。


「あぁ、愛華。大丈夫だったのね。お医者さんが言うには気絶しただけだって。車とは当たってないらしいから安心していいって。」


 そう、安堵するように言う。そういえば、夢叶を探して隅田川付近まで言ってたら、横断歩道で車が突っ込んできそうになったんだっけ。何はともあれ無事でよかった。少し、寝すぎていたのか体が痛かったのでだるいが起き上がった。


母が「まだ安静にしていないと」と言っていたがそれを無視して窓をのぞく。

何かに会えるような気がして。私は窓をのぞいた瞬間全てを悟った。


”あれは ゆめか?”

本作品を読んでくださりありがとうございました。

今回の作品の見所は最後の”あれは ゆめか?”です。

わざとゆめか、を夢叶、夢かとしないところでどちらにも解釈できるようにしました。

私がよく読んでいる作家さんとかはこういう表現まで素晴らしくて、、、

いつか私もそういう方々の一員になれるように日々精進していきたいと思います!

楽しんでもらえたなら光栄です。


今回の作品はどうだったでしょうか。感想を書いていただけると、今後の制作活動の励みになります!


次回は火曜日に投稿します。

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