ストーリー 前編
ストーリーの前編です
慧と雪は幼馴染だ。家が隣でお互いの両親が高校生からの友人で仲が現在進行形で良い。そのため、小さいころからずっと一緒。遊ぶときはもちろん一緒。買い物だって一緒。泣くのだって一緒。笑いあう時だって、、、
でも、そんな生活は長くは続かなかった。小学校に上がってから6年ほど立ったある日。紅葉の赤が際立っていた。雪はいつものように慧に一緒に帰るために走って近づいた。ただ、二人っきりで話して帰る。それだけなのに世の中の何よりも幸せな時間だったことを鮮明に覚えている。あの胸の裏がむずかゆいような気持ちを忘れることはこの先ないだろう。
生まれたときから一緒だった10年間かけて築いてきた関係は、砂上の楼閣のように脆く崩れた。
「もうこれから話しかけて来ないでほしい」
そう慧が言い、走り去ったのが最後だった。私は唖然としていた。慧から発された言葉が容易には理解できなかった。昨日からの態度の変化には気持ちの整理が追いつかなかったのかもしれない。その一言が私の心の中のパズルのピースをぐちゃぐちゃにした。
「なんかの罰ゲームなのかもしれない。明日にはきっと元に戻ってるさ」
そう自分に信じさせるように言い聞かせて帰宅した。もしかしたら、
「今日のことごめん」
って慧が謝りに来てくれるんじゃないかって。まあ、そんな浅はかな考えはすぐに砕け散ったのだが。結局、あの日以来私は慧と口をいまだに聞いていない。4年たった今でさえも。
最初は私の友達の力も借りてどうにか声をかけてみる努力をしてみた。しかし、当たり前のように失敗した。先生も一回仲裁してくれようとしたのだが、それも失敗。私のきらびやかだった小学校生活は黒く染まったまま終わってしまった。
中学校では流石に話してくれるかな、と思ったがそうもいかなかった。慧は別の少し頭がいい中学校に通っていたのだ。それを知ったのは入学して間もないとき。そもそも同じフィールドにすら立てていなかったのだ。
私はとても悲しかった。家は一つとなり。私の部屋から窓をのぞけば、慧の部屋の明かりがともっていることがわかる。こんなにも近いようで遠い。手を伸ばせば届きそうな位置なのに、高嶺の存在にある。
そんな日々が続いていたのは昔の話。
今日は高校の入学式。私はどうしても慧への内に秘めた思いを忘れることはできなかった。そのため、私の母に頼んで慧の親に慧の進学先を聞いてもらったんだ。そこまでは良かったんだけど。実際に塾に通って最初に志望校を伝えたときに、
「この高校に入れるのに必要最低限な学力と雪さんの学力には5倍以上の差が開いているといっても過言ではないでしょう。残されたタイムリミットは10カ月。それでも受けますか。もし、受けるならば徹底的にサポートはしますが、、、」
と強い口調で言われた。その高校は到底私が今の状態じゃ入れるような高校ではなかった。その日から私は懸命に努力をした。全ては慧とのストーリを復活させるため。このことを原動力に依存していたスマホを解約してもらった。それほど私の意志は硬かった。
それが功をそうしてか、今は慧と同じ空間にいる。今は入学者呼名をしている途中だ。
「岩本 慧」
「はい」
慧の名前が呼ばれる。小さかった身長も今では見違えるほど大きくなっているように感じた。大人びた感じだったが、幼いころと何一つ変わらずに見えた。そして遂に私の名前が呼ばれる。
「小川 雪」「はいっ」
その瞬間、隣の席に座っていた慧が、音を置き去りにするような速度で振り向いたのがわかった。戸惑いながら慧が口にする。
「なんでここにお前が?」
少し間を置く
「慧に会いに来たんだよ」
これは偶然じゃない。必然だ。
すみません。後編が書き終わらなくて、、、
明日土曜日の朝9時に投稿します。
ぜひそちらも見ていってくれると嬉しいです。