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青春の一ページ

「これで令和×年度後期の生徒会活動案の発表を終わります。何か質問等がある方は、我々が初の試みである電子媒体からのフォームからお願いします。詳しい説明は先生がされると思いますので、先生の話を自分のクラスに帰った後、しっかりと聞いてください」そう、現生徒会長である辻正太が言う。


 私は、そんな正太生徒会長の威厳あふれるところに感動してしまった。といっても、正太会長は3年生。私、穂香は1年生とこの二人の関係を縮めていくには大きな大きな壁が存在している。私がこの学校に入学した初日。私は、煌びやかな正太生徒会長に目を奪われてしまった。そして、その瞬間悟る。これが一目ぼれなのだと。私はあまり恋愛経験が豊富、っていうわけでもない。


 中学校時代に付き合っていた人なら1人だけいるのだが、私は彼のことが本当に好きだったのではない。当時、恋愛ブームというものが学校全体で起きており、友達の大半が付き合って彼氏を自慢してくる中、私だけいないというのも恥ずかしかったので告白を了承したのが始まりだ。実際、顔も良いほうで性格もおとなしい感じで、ひそかに女子の中で人気があった。


 なので、付き合ったという報告をしたときは「やるじゃん、穂香!」と今までさんざん自慢話をしてきた友達が歓声をあげてくれた。確かに、付き合ってみるとより良い人だな、と思った。だけどなんか違った。確かに好きだったのかもしれない。でも、心から愛せなかった。


 その理由が正太生徒会長を見た瞬間にわかった。きっと私が求めていたのは、威厳がありかっこいい人なのだと。胸がキュッ、と閉まるような感覚はほかにもなく恋をしていることを示していた。ちなみに正太生徒会長は卓球部に所属しているらしい。卓球部で私の友達の藍に聞いてみると、「一言で表すなら威厳、だね。本当にこの人についていけば私たちの成長は間違えなし!って感じがしている。強いて難点をあげるとするのならば、少しお茶目なモードがあって、それに入ってしまうと止められない。ってところかな」とお言葉をもらった。


 聞いた時は、あの威厳溢れる正太生徒会長がお茶目なモードがあるなんて嘘だろうと思っていた。でも、それを聞いてもっと知りたくなった。辻正太という人間はどういう人なのか、と。それからというもの私の行動はとても早かった。新入生に生徒会、というものの経験をさせるためにこの学校では特別に『臨時庶務』というものが存在する。簡単に言えば雑用だ。でも、結構大変らしい。私が通っている女子バレーの3年生のあずさ先輩兼現副生徒会長女子の話を聞くと、それはそれはヤバいらしい。新人育成、というだけあって結構たくさんのことを任されるらしい。


 この『臨時庶務』という役職を体験した人全員、生徒会に入っているといっても過言ではない、と言っていた。正太生徒会長も臨時庶務を務めていたことも聞いた。正太生徒会長は結構失敗して先生や先輩におこられる、ということもあったらしいけど。今の姿からじゃ全く想像もできない。


 その役職をかけて行われる7月にある選挙に私は出馬した。もう取り消しはできない。後戻りはできない。でも、良いの。これで正太生徒会長との距離が縮まる可能性があるのならば。あわよくば付き合えたりしちゃって。


 ってこんな邪念は吹き飛ばさないと。正太生徒会長にふさわしい女の子になるために努力しないと!そう意気込みをした。




 選挙に出馬した結果、私は無事に『臨時庶務』に任命された。思った以上に出馬している人は多かったのだが、あずさ先輩にも手伝ってもらってスピーチ内容を考えたり、練習したりしたことが功をそうしたのだろう。本当に感謝しかない。今日は、初めて生徒会に入る日だ。結局どんな顔をして正太生徒会長に会えばいいのだろう、という考えが授業中も休み時間中も、掃除中も友達と話しているときもずっと胸の中をしめていた。


 そして、近づく。初めて生徒会全メンバーが終結するときが。意識すればするほど頭が痛くなってくる。心拍も乱れ、呼吸も不規則になっていってる。少しでも気を抜いてしまったら気絶してしまいそうなくらい、不安が高まる。そんな私の様子を察したのかあずさ先輩が優しく私の手を握ってくれる。


 「大丈夫だよ。生徒会のメンバーはみんな良い人だから。そんな緊張しちゃうと、、、そういえば正太にもこんな時期があったな~。威厳のかけらもなかったんだけどね。穂香が尊敬している正太にさ、どうせなら威厳あふれる姿を見せてあっと言わせてみたくない?」


 そう言ってくる。ますます思う。本当に良い先輩だなって。そうだよね、いつか私が成長してしてもらったことを後輩にしてあげるんだ。いつか正太生徒会長もぬかしてやるんだ!


 「はい!日和らずに頑張ります。」

そう言い、2人は生徒会室に向かった。すると予想もしないくらい大勢の人が取り囲んでいた。


 「君が最後の臨時庶務かな?どうぞよろしく。俺の名前は辻正太。ん~、呼び方は正太って呼んでくれたらいいよ」

 「は、はい。正太生徒会長。じゃなくて正太。」


 ってえ~!私、今憧れの正太生徒会長を普通に呼び捨てで正太って言っちゃったよね。ヤバい。かっこよすぎる。なんか、体が一気に軽くなるような感じがする。そして、私は気絶した。



 それからいろいろあった結果。なんと今度は保健室で二人っきりのシチュエーションになってしまった。こんな神イベントが存在してもいいものなのだろうか。私が、何が起きたかわからずただきょろきょろしていると、急に顔を近づけてきて


 「大丈夫?」

 と今まで聞いたことのないようなイケボで私の耳元で囁く。うん、耳がめちゃくちゃ幸せ。もしかしてこれがあずさ先輩とかが言っていた暴走したバージョンってやつ?これなら年中このバージョンがいい!こんな幸せな時間がいつまでも続きますように。そう願ったのも束の間。


 ベット同士を区切っているレースをあずさ先輩が開ける。

 「もぉ~。何やってんの正太。しょっぱなから穂香を気絶させちゃったり。穂香、大丈夫?変なところ触られていない?」

 「いや、触るわけないでしょ。俺にはあずさがいるんだし。」


 ここで私の胸の中で終了の鐘の音が鳴り響く。状況を整理しようと試みるがうまくいかない。「俺にはあずさがいるんだし」ってことはつまり、二人は付き合っているの?さっきの瞬間微笑ましい光景とは一転、絶望が私の胸を襲う。そうか、きっと私と正太が結ばれる運命は最初からみじんもなかったんだ。現実を受け止めることはとても困難だ。でも、明日へ明日へと進んでいかなければいけない。まだ、私と正太のストーリーは終わっていない。付き合っているんならあずさ先輩から私が精一杯努力して奪い取るだけだ。


 「って、私あんたと付き合ってないんだけど。勘違いされるからやめて。」

 そう冷たい視線を正太に向けながらあずさ先輩が言った。私の頭の中にはたくさんのハテナが浮かんでいる。私は胸の中にこんな感情を抱いてしまった。”この人いろいろと生理的に無理かも”威厳にあふれている人でも、裏の顔はわからない。ちゃんと気になる人は細部まで知らずに近づくと危険である。そう思わされる青春の一ぺージだった。


 ちなみに、この出来事の6か月後お互いを細部までよく知り合った結果、穂香と正太は付き合ったらしい。

本作品を読んでくださりありがとうございました。

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次回は金曜日に投稿します

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