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第99話

ギルドを出発したユイトたちはひとまずステイリア郊外まで移動。

そこでユイトは、終末の森までの行き方についてみんなに説明した。


「さっき、ギルドに貼ってある地図を見たんだけど、

 どうやら王都の北には山脈があるらしい。

 終末の森へは、その山脈を突っ切って行こうと思う。

 普通ならサザントリム回りなんだろうけど、それだと時間かかっちゃうからな。

 少し道が険しいかもしんないけど、みんなもそれでいいか?」


「うん、問題ないよ!」

「ワオォン!」

「はい」


「じゃあ、俺とティナは走ってくから、ユリウスさんはユキに乗ってってくれ」

「よ、良ろしいのですか?聖獣フェンリルに跨るなど…」

「あぁ、気にしないでくれ。

 そうじゃないと時間がかかり過ぎちゃうからな」

「分かりました。

 それではお言葉に甘えさせていただきます!」

そう答えるユリウスの声は、なんだかいつもより張りがある。


「……まさか、聖獣フェンリルに跨れる日が来ようとは。

 まるで夢のようだ。これだけでも、同行させてもらう価値がある。

 俺はなんて幸運なんだっ!」


思いがけず訪れた貴重な機会にユリウスは大興奮。

その喜びを顔いっぱいに滲ませる。


すぐにユリウスは胸を躍らせユキへと跨る。

ワクワクしたその表情はまるで少年のようだ。


そして、出発の時。


「じゃあ頼んだぞ、ユキ!」

「ワオォン!」


「じゃあ、出発っ!!」

「ぎゃーーーーーーーーっ!!」

直後、ユリウスの悲鳴が響き渡る。


尋常ではない、あまりの速度にびびりまくるユリウス。

「ぎゃーーーーーーーーっ!!」


「ははははっ。ユリウスさん楽しそうだな」

「もう、違うでしょ!あれは悲鳴だよ。怖がってるの」


「そうなのか?俺のいた世界にさ、遊園地ってのがあってさ。

 そこに絶叫マシーンって言う、やたら速くてスリル満点の乗り物があるんだ。

 すっごい人気でさ。みんなそのスピードを絶叫しながら楽しむんだよ」


「ぎゃーーーーーーーーっ!!」


「そうそう、こんな感じにさ。めっちゃ楽しいんだ」

「へぇ、いいなぁ……私も一度乗ってみたいっ!」


「ぎゃーーーーーーーーっ!!」


「…って、ユイトさん。そんな場合じゃないよ!!」


風圧と涙と鼻水でユリウスの顔が凄いことになっている。

(た、確かにこれは……。しょうがない…)


「ユキ。もう少しゆっくり走ってやってくれ」

「ワオォン!」


それから少し進んだところで一旦休憩。

もちろんユリウスを休ませるためだ。


「ユリウスさん。大丈夫か?」

「え、えぇ、何とか。

 ……しかし、さすがは終末の森。死ぬかと思いました」

「いやいや、まだ全然だから。山脈にも入ってないから」

「そうですか。入ったら二度と戻れないと言われるだけのことはありますね」

「…だめだな。こりゃ」


ということで、ユリウスが正気を取り戻すまで、ユイトとティナはユキのモフモフにもたれて会話を楽しむ。


「いやーそれにしても、まさか終末の森に行くことになるなんてな」

「ほんとだね。でも私、すっごく楽しみ!」


「まぁ、あそこは強い魔獣が山ほどいるからな」

「ううん、そうじゃなくて。

 だってユイトさんが住んでた場所に行くんでしょ?

 ユイトさんがどんな所に住んでたのかなぁって、今から凄い楽しみなの!!

 それに、ユイトさんが前に言ってた古代竜さんにも会えるのかなぁってね」


「あぁ、グレンドラな。

 きっと会えると思うぞ。あいつはあそこから動いてないはずだからな」

「へぇ、グレンドラさんっていうんだ」

「あぁ、俺が名前をつけたんだ。あいつに頼まれてな」

「古代竜さんに名付けを頼まれるって…。

 なんか、やっぱユイトさんだね」


(”やっぱユイトさん”、意味は分かるけど、誉め言葉なのか?う-ん……)


「…そういや、ティナは終末の森にはまだ行ったことないよな?」

「うん。今回が初めて」

「今のティナなら、終末の森 中心部の魔獣ともきっといい勝負ができる。

 ここらじゃ、本気を出せる相手がいないからな。良い修行になるかもな」

「確かにそうかも。じゃあ機会があったら手合わせしてみようかな」


その後も、たわいもない会話を楽しむユイトとティナ。

すると、ようやくユリウスが正気を取り戻す。


ということで、早速、再出発の準備に取り掛かるユイトたち。

出発時はあんなにも喜んでいたユリウスだったが、今度は恐る恐るユキへと跨る。

その姿がなんとも切ない。

しょうがないので、先ほどよりもさらに速度を落として、終末の森へ向かうことにした。


2日目になると、ユリウスも大分スピードに慣れ、少しだけスピードアップ。

3日目はさらにスピードを上げて移動し、その日の昼前、ようやく終末の森 南端へと辿り着いた。


「よーし。やっと着いたぞ」

「…ではこれが……あの終末の森……」

広大な森を前に息をのむユリウス。


「ユリウスさん、そんな心配しなくても大丈夫だ。ちゃんと守ってやるからさ」

「ありがとうございます。ですが、私もSランク冒険者。

 Sランク冒険者の名に恥じぬよう、やれる範囲で私も戦います」

「そっか。でも無茶はすんなよ。あと、約束は覚えてるな?」

「はい」


「よし。じゃあ、行くか。

 中心部まではまだかなりの距離があるからな」

休みも取らず、すぐに終末の森の中へと入っていく。


久々にグレンドラに会えるのが楽しみなユイト。

ユイトが住んでいた場所を見れるのが楽しみなティナ。

そんな2人の足取りは軽やかだ。

だがそれとは対照的に、ユリウスは極限まで緊張。

ユキの背で顔をこわばらせている。


それからしばらくすると、ユイトたちの前に突然キラーウルフが現れた。


「…あ、あれはっ!?」

突如視界に入った威圧感漂う魔獣の姿に思わず声を上げるユリウス。


「あれはキラーウルフだな」

「キ、キラーウルフ!?

 こんな森に入って間もないところにS級魔獣…。これが終末の森……」


終末の森と言われる所以を肌で感じるユリウス。

そしてその顔はすぐに戦士の顔へと変化する。


「ユイト様。あいつは私にやらせてください。

 同じSランク同士。遅れは取りません」


ユリウスはユキから降りると、静かに剣を抜く。

その目はまさに獲物を狩る戦士の目だ。


「分かった。けど、もし危なくなったら割って入るからな」

「はい」


そしてこの後すぐ、ユリウスとキラーウルフの壮絶な戦いが始まった。

鬱蒼とした森の中で繰り広げられる激しい攻防。

”気”を巡らせたユリウスから放たれる剛剣に対し、キラーウルフは鋭い爪と牙で対抗する。互いに一歩も譲らない。


両者の力はほぼ互角。

しかし、徐々にユリウスがキラーウルフを押し始めた。

そして戦いを開始してから5分後、体感的には気が遠くなるほど長かったその戦いは、ユリウスの勝利で幕を閉じた。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……S級魔獣を1人で討伐してやったぞ。

 見たかキラーウルフ。これがSランク冒険者ユリウスだ。

 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

勝利の余韻に浸るユリウス。


(ユイト様とティナ様は私の戦いを見ていてくれただろうか?)

(少しは私を認めてくれただろうか?)


そんなことを考えながら、ユイトとティナの方を振り向くユリウス。


「………。えぇぇーーーーーーーっ!?」


なんと振り向いた先には、山のようになったS級魔獣。

そして息一つ切らさず、涼しい顔のユイトとティナ。


「おっ、ユリウスさんも終わったか?

 キラーウルフはこの森じゃかなり弱い方だからな。

 ひょっとしたらユリウスさんには物足りなかったかもしんないな。

 じゃあ行くか。遅くなっちゃうしな」

「は、はい……」


魂が抜けたようになるユリウス。

目指す背中はまだまだ遠い。がんばれユリウス!その手に栄光を掴むまで。

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