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第9話

「これでコンビニの荷物は大丈夫だな。

 ……ふぅ。……あとは、やっぱあれか…。

 つーかこれが一番の問題なんだよな……」


想像するだけでユイトのテンションはだだ下がり。

そんなユイトをグレンドラが不思議そうに眺める。


「どうしたのだ?

 これでお主が働いていた店の物を取りに行けるのではないのか?

 何をそんなにしょんぼりしておる?」


「いやだって、お前……、さっき話しただろ?

 猛獣っつーか怪物に追われて死にそうになった、って。

 この洞窟から俺が働いていた店までは、結構距離があるんだよ。

 店まで行って戻ってくる間に、絶対また猛獣に遭遇するだろ?

 そう思うと、気が重くなるんだって…」


「……何だ、そんなことか」

グレンドラがぽつりと一言。


「いやいやいやいや、そんなことって……。

 俺にとっては、丸腰でどこぞの軍隊相手に戦争するようなレベルだっつーの」


「ふっ。では我が何とかしてやろう。ちょっと耳を塞いでおれ」

「えっ?」


とりあえず急いで耳を塞ぐユイト。

直後、グレンドラのけたたましい咆哮が鳴り響いた。


「ギィギャアーーーーーーーーーーーーッ!!!」


(う、うわっ!?な、なんだっ!?)


体が、辺りの空気が激しく震える。

突然の出来事にユイトは目をつぶって、必死に耳を押さえ続ける。


しばらくすると、徐々に空気の震えが止んでくる。

(……も、もう…大丈夫なのか……?)

そして空気の震えが完全に収まると、ユイトはようやく耳から手を放した。


「おい、グレンドラ!びっくりしたぞっ!

 お前、今、一体何したんだよ?」

開口一番、ユイトがグレンドラに問いかける。


「んっ?なに、少しばかり魔獣どもを威嚇してやっただけのことよ。

 これでしばらくは、この一帯に魔獣どもは寄って来ぬであろう。

 なにせ我はこの森の頂点だからな。

 今頃魔獣どもはこの地から少しでも離れようと、慌てて逃げ出している頃よ」


(うぉーーっ!神様、仏様、グレンドラ様!!)


「ほんとかっ!?凄ぇよ、グレンドラっ!!」

「ふっふっふ。そうであろう?我は凄いのだ。がっはっはっはっは」

グレンドラ得意の高笑い。


「じゃあグレンドラ。俺、今のうちに行ってくるよ」


早速、コンビニへと向かおうとするユイト。

だが、そんなユイトをグレンドラが呼び止める。


「ユイトよ、ちょっとだけ待て。

 さっきからずっと気になっていたのだが、お主、先ほど20歳と言ったか?」

「あぁ、そうだけど。それがどうかしたのか?」


「いやな、この世界の人間の20歳と比べ、随分と幼く見えたものでな。

 お主の世界では、皆そうなのか?」

「あぁ、そうだと思うぞ。特に幼く見られることなんてなかったからな」

「……そうか。世界が違えば見た目も違うものなのだな」


(……俺が幼く見えるって…この世界の人間はみんな老けてんのか?)

(それとも1年の長さが違うのか…?)


そんなことを考えていると、ここで初めてあることにユイトが気がつく。

おそらく、これまではそんな余裕がなかったのだろう。


(……そういや、何だか着てる服が少し大きいような…)

(こんな余裕あったっけ?)


ユイトが地底湖の方へと移動する。

地底湖に辿り着いたユイトは、顔を突き出し、鏡代わりに湖面を覗き込む。


「………」


後ろを振り返ってみるユイト。

けれど、そこには誰もいない。


もう一度、湖面を覗き込む。

そして、再び後ろを振り返る。

だが、やはりそこには誰もいない。


「……な、な、な、何じゃこりゃぁーーーーーーーっ!!!」


ユイトの叫び声が洞窟内にこだまする。

地底湖の湖面。そこに映っていたのは、幼き頃のユイトの姿。

見た目としては、小学校高学年ぐらいであろうか。


(……な、何が起こった!?一体何でこうなった!?)


予想だにしない出来事に混乱するユイト。


「た、大変だグレンドラっ!俺、子供になっちまってるよ!!」

慌てふためくユイトは、何度も顔を触わっては湖面を覗き込む。


「……やはりそうか。どうやら我の目は正しかったようだな。

 おそらくお主は、異次元世界…つまりハミルガルドへと渡る際に、時間干渉を受けたのであろうな。

 まぁ、若返れて良かったではないか。がっはっはっはっは」


(時間干渉って……はぁ…)

(今日は一体何回驚きゃいいんだ……。いい加減、疲れてきた……)


「ふぅぅぅ……」

大きく息をつくユイト。


(けど、今のうちにコンビニだけは行っておかないとな……)


疲れた体に鞭を打ち、ユイトが精一杯の気合いを入れる。

「んーーーーーよしっ!

 じゃあグレンドラ。今度こそ行ってくる!」


今一度気を入れ直したユイトが、コンビニに向け出発した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 見た目少年の主人公は好みなので、読んでいきたい
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