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第8話

「して、どんな魔法を試してみるのだ?」

「そうだな…試したいのはいっぱいあるけど、やっぱ最初はアレかな」

「ほぅ、どんなものだ?炎属性か?水属性か?」

グレンドラはユイトが考える魔法に興味津々。


「いや、全然違う。確かに炎とか水も試したいっちゃあ、試したいけど…。

 でもやっぱ、まず最初に試したいのは、異空間収納魔法だな」


「…異空間収納魔法?一体何だそれは?」

ユイトが試したいという魔法、それは長きを生きる古代竜にとっても初めて聞く魔法。


「そうだな…なんて言えばいいんだ?

 えっと、ココとは別の空間を創って、そこに物をしまうって感じの魔法だな」


そう普通に話すユイト。

だが、それはグレンドラにとってはあまりに予想外、というか常識外。


「…な、何を言っておるのだ、お主!?

 この世界と別の空間を創り出すだと!?」


「あぁ。長旅とかだと大荷物になるだろ?

 大荷物だと、それだけで疲れるし、何かあったとき戦いづらそうだしさ。

 だから大荷物を収納できる空間を創ろうと思ってさ」


「それは、そうかもしれぬが……」


「あと、すぐに使いたい理由もあってさ。

 実はさ、この世界に転移したのって俺だけじゃないんだ。

 俺が働いていた店も一緒にこっちに来てんだよ。

 で、その店の中には食べ物とか飲み物とか、まだたくさん残っててさ。

 俺…今、手持ちの食料がほとんどないだろ?

 だから、店まで戻ってそいつらを持ってきたいんだよな」


「……なるほどな。

 それにしても異空間収納か、面白いことを考えよる。

 そんな魔法、見たことも聞いたこともないわ。

 さすが、異次元世界の人間といったところか。

 しかし、もしそんな魔法が本当にできたとすると、みな腰を抜かすであろうな」


「そうなのか?

 まぁよく分かんないけど、とりあえずやってみるさ。

 ……さてと……どんな風にイメージすっかな?」


しばしの間、ユイトが考える。


異空間収納魔法に必要なものは、とりあえず2つ。

1つは、物を収納する異空間。

もう1つは、物を出し入れするのに必要な"この世界"と"異空間"の繋ぎ目だ。


まずは異空間。

魔法行使中しか存在できない異空間だと、魔法行使を止めた瞬間、異空間とともに中に入れた物まで消えてしまう。

かといって、魔法を行使し続けるというのも現実的ではない。

つまり、異空間は作り出したのち、その空間を固定し続けるようイメージする必要がある。


次は、この世界と異空間の繋ぎ目。

こちらは、異空間と同じように「作り出したのちに固定」してしまっては、収納したものがだだ漏れになる。

つまり、繋ぎ目の方は、必要な時に都度作り出し、魔法行使が終わると同時に消滅するようイメージする必要がある。


(ざっと、こんな感じかな?)


ひとまず考えがまとまったユイトが、魔法発動の準備に取り掛かる。

「じゃあ、やるか。まずは、異空間の創造だ」


ユイトは、魔素を魔力に変換しつつ、この世界と異なる空間をイメージ。

さらに、その空間がその場所に固定されるよう、強くイメージした。


「…よし、とりあえずこんなとこか。

 じゃあ次は繋ぎ目だな」


今度は、”先ほどイメージした空間”と”目の前の空間”を繋ぐ道を強くイメージ。

何かもやもやした空間が、ユイトの目の前に出来あがる。

(おっ!?何か成功したっぽくない?)


「じゃあ、試してみるかな」


近くに落ちている石をいくつか拾う。

右手に2つ、左手に3つ。

その握った小石を、ユイトはもやもやした空間の中に投げ込んだ。


そわそわしながらユイトの様子を眺めるグレンドラ。


「どうだ?成功したのか?どうなのだ?」

グレンドラにとっても未知なる魔法。

わくわくドキドキ、どうにも結果を待ちきれない。


「そんな慌てんなよ。これから確認してみるからさ」

「そ、そうか。すまぬ、我としたことが興奮して気が逸ってしまったわ。

 しかし我を興奮させるとは、さすがだなユイトよ」

(……なんだかよく分からんが褒められてしまった)


「よし、じゃあ確認するぞ」


再びユイトが、異空間との繋ぎ目を創り出す。

そして期待と願いを込めて、右手を繋ぎ目に突っ込んだ。

(……どうか成功してますように)


…ゴクリ

息をのんでユイトを見守るグレンドラ。


そして次の瞬間、ユイトの声が洞窟内に響き渡った。


「おぉ!おぉーーーっ!!!」


なんと一発で異空間収納魔法は見事に成功。

ユイトの右手には、先ほど投げ込んだ小石が握られていた。


「やったーっ!やったぞグレンドラっ!!」


今までこんなに興奮したことがあっただろうか。

気付けばユイトはグレンドラに向かって叫び声を上げていた。


「おぉ!やったかユイトよ!

 いきなり未知の魔法を創り出すとは、とんでもない奴だ!」

異空間収納魔法の成功にグレンドラも大興奮。


人生初の魔法発動に喜び爆発中のユイト。

だが、そんなユイトの頭にふと気になることが思い浮かぶ。

(そういやこの異空間って、どれだけ物が入るんだ?)


気になったら試してみる。料理と同じだ。


ユイトは早速、辺りから段ボール1箱分ほどの石を収集。

おもむろに異空間へと石を投げ込み始めた。

そして石が残り半分ぐらいになった頃だろうか。

突然、石が異空間に吸い込まれなくなった。

異空間が一杯になったのだろう。


おそらく、先ほど異空間を創り出した際、”異空間創造”と”空間固定”に意識が行き過ぎていて、広さをイメージしていなかったのが原因だ。

段ボール1箱分の物も入らないような異空間収納では、とてもじゃないがコンビニ商品は入り切らない。

ということでユイトは、もう1度、異空間を創り直すことにした。


「よーし、今度は思いっきり広くするぞーっ!

 広く、広く、広く、もっと広ーーーく!!」


ユイトは意識を集中、強く強くイメージしながら再び魔法を発動。

とんでもない量の魔素がユイトに吸い込まれていく。


「…な、なんだこれはっ!?

 一体どれだけの規模の異空間を創り出そうとしておるのだっ!?」

ユイトの膨大な魔力に驚愕するグレンドラ。


そして、程なくして新たな異空間が完成。

「…さてと。今度はきっと大丈夫なはずだ」


そう言うと、ユイトは再び辺りの石を収集。

新たに創った異空間に向け、拾った石を投げ込み始めた。


「おぉっ!」


入る入る、どんどん入る。例えるなら、そう、ブラックホール。

かき集めた石は、瞬く間に全て異空間へと吸い込まれていった。


「………。大した奴だ……」

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