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第79話

それから数日後、メイリール王国の復興活動が本格的にスタート。

兵士たちが各地に派遣され、国民とともに水路づくりや開墾などが進められた。

リゼール前国王もこれまでの3年間を取り戻すかのように、兵士たちとともに各地を回り、国民とともに汗を流した。


国民に課された税金も、ステラ女王の名のもと大きく軽減。

どん底にいた国民たちの生活も徐々にではあるが楽になっていった。


そんな中、ユイトたちはというと、食料配給の時と同様、兵士たちの到着に時間がかかりそうな遠方地域の町や村をいくつも回った。

川から水を引いたり、井戸を掘ったり、畑を耕したり。

ナイチでの経験が大いに役に立った。


ユイトとティナが忙しくしている間、ユキは子供たちの遊び相手として大活躍。

子供たちに囲まれ、ユキも楽しそうに遊んでいた。

こうして、忙しくも充実した日々が過ぎていった。


そんなある日の夜。

簡易宿の中でユキにもたれのんびりしているユイトに、お風呂から上がったティナが話しかける。


「ねぇ、ユイトさん」

「んっ?どうした?」


「えっとね、ちょっと相談があるんだけど…」

「相談?」

「うん。今ね、お風呂に入りながら考えてたんだ。

 私たち、これまで色んな町や村を回ってきたでしょ?

 それでね、私、思ったんだ。

 どうしてこんなにも苦労してる町や村が多いのかなぁって。

 どうすればそういう町や村を減らせるのかなぁって。

 メイリ―ル王国はこの間のことがあったから、しょうがないと思うけど…」


「………」


とても13歳になったばかりの少女が、お風呂で考えるようなことではないその内容に、ユイトは少々面食らう。

(まぁ、ティナの根底にあるのは、困ってる人を助けたいって想いだもんな…)


「ユイトさん?」

「あっ、すまん。なんつーか、凄いこと考えてるんだなって思ってさ。

 俺なんて、明日は何食べよう?ぐらいしか考えてないからな」

「ふふ。ユイトさんらしいね」


(ほぅ、”らしい”と来ましたか。ティナの目にはそう映ってるのね)

(まぁ、間違っちゃいないけど…)

(そいじゃここらで、俺も出来るってとこ見せてやりますか)


「…でもまぁ、そうだな。

 あくまで俺の考えだから間違ってるかもしんないけどさ…」

外した時のために、一応、先に言っておく。


「結局は、住民が困らないような町や村にしたいってわけだろ?

 でもそれが出来ていない。

 じゃあ誰が、住民が困らない町や村にするか。

 そんなん考えるまでもなく、町や村の『外の人間』か『中の人間』しかない。

 『外の人間』って言えば、例えば国や領主とかかな。

 『中の人間』は、もちろん町人や村人だな。


 じゃあ国や領主がなぜできないか。

 もちろん理由は色々あると思うけど、”策を考えられない”、

 ”策はあるけどそれを実現できる人間が足りない”ってのが現状だと思う。

 国中をってなるとかなりの規模になるからな。

 つまりは、優秀な人材が足りないんだろうな」


「なるほど…」


真剣にユイトの話を聞くティナ。

ユイトにプレッシャーがのしかかる。


「で、次は町人と村人の方だけど、俺がこれまで見てきて思ったのは、

 みんな学ぶ機会がないんだよな。

 きっと、みんなが通える学校とかってないんだろ?」


「うん。王都とか大きな街にはあると思うけど、

 学校には王族とか貴族しか行かないと思うよ」


「だよなぁ。それが問題なんだよなぁ…。

 ほんとはさ、町や村にも才能や素質がある人ってたくさんいると思うんだ。

 ただ、学ぶ機会がないからそれに気づかないってだけでさ。

 ティナだって、俺が魔法を教えるまでは魔法使えなかっただろ?」


「うん…確かに…」


「だからさ、もったいないと思うんだよな。

 町や村の人たちも学べば知識が付くし、自分の才能や素質にも気付ける。

 で、その中の優秀な人間が国で働けば、国の人材不足も解消されるだろ?

 それに、もし国で働かなかったとしても、今回みたいになんかあった時、

 自分たちだけで何とかできるかもしれない。


 俺が住んでた国はさ、国の決まりで子供の頃からみんな学校に通うんだ。

 みんなそこで文字や計算、その他にも色んなことを学ぶ。

 それで大人になったらそれぞれ色んな仕事に就いて、

 それまでに学んだことを活かして活躍する。


 だからこの世界にも、みんなが通える学校があったら良いと思うんだよな。

 きっと今より、ずっと豊かな世界になる。

 もちろん”すぐに”ってわけにはいかないだろうけど、

 長い目で見たら絶対にその方がいい。


 ってな感じかな。間違ってるかもしんないけど」


最後にもう一度、外した時のために言っておく。


「…凄い、凄いよユイトさんっ!それだよ、学校だよっ!!」

ティナが目をキラキラさせて興奮気味に立ち上がる。


「今度ステラさんに会った時、今の話してみようよ!

 ステラさんなら絶対に分かってくれる!!」


どうやらユイトの話は思いのほかティナに響いたようだ。


(ふっ、さすが俺。…って日本のこと話しただけだけどね)

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