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第75話

楽しそうにティナと遊ぶユキを眺めながらステラが続ける。


「それにしてもユキさんは、ティナさんにもすごく懐いてますね。

 こうやって見てると、まるで姉妹のよう。

 ひょっとしたらユイトさんとティナさんなら

 ユキさんと従魔契約が結べるかもしれませんね」


「従魔契約?」


これはなんともワクワク心が掻き立てられる言葉。


「私も直接見たことはないのですが、心を通わせた人と獣が見えない絆で

 結ばれるものだと聞いています。

 フェンリルのような聖獣との従魔契約が可能なのかは分かりませんけど…。


 それでその従魔契約ですが、人が獣に対し魔力を与え、

 獣が自らの意思でそれを受け入れたときに成立すると言われています。

 契約が成立した場合、魔力を与える際にイメージした模様が、

 獣の体のどこかに刻まれるらしいのですが、定かではありません」


「へぇ、そんなのがあるんだ。初めて知った。

 けどなんか名実ともに仲間っていうか、家族になれるみたいで、いいなそれ。

 ちょっと試してみようかな…」


そう言うとユイトは早速、ティナとユキを呼び寄せる。

「おーい、ティナ、ユキ。ちょっとこっち来てくれ!」


ユイトの呼びかけに応じ、すぐに2人がやってくる。

早速ティナにステラから聞いた話を説明すると、ティナもユイト同様、従魔契約に興味津々の様子。

その表情からも、従魔契約を試したくてうずうずしているのがよく分かる。


(ま、ここはティナに譲るかな…俺の方がお兄ちゃんだしな)

(………。お兄ちゃんでいいよな?見た目は若いし……)

(…うん、大丈夫だ。大丈夫に違いない。よし…)


「なぁ、ティナ。従魔契約、試してみるか?」

「私が!?いいのっ!?」

「あぁ、いいぞ!」

「やったぁーっ!!」


ティナは飛び跳ねて大喜び。ここまでの喜びようはいつぶりだろうか。

その様子に、ユイトは譲って良かったと満足気。


「ねぇねぇユイトさん!もういいかな!?試してみてもいいかな!?」

まるでご飯を待ちきれない子犬のようだ。


「ははは!もちろんいいぞ!」


ユイトの言葉を聞くや否や、早速、ユキに話しかけるティナ。


「ねぇユキ、聞いて。私ね、ユキと従魔契約を結びたいの。

 これから私の魔力をユキにあげるから、もしユキがよければ私の魔力を

 受け入れて欲しいの。……伝わったかな?」


「ワオォーン」

「ふふっ。じゃあ、いくね」


ティナは目を閉じると意識を集中。

辺り一帯の魔素を取り込み圧縮すると、それを一気に魔力へと変換。

そしてユキに向けて、その魔力を解き放った。

「お願い、ユキ。私の魔力を受け入れて」


「……なんだか落ち着くような感じ。これがティナさんの魔力?」


ステラでも感じ取ることが出来るくらい膨大で濃密な魔力。

その優しく温かいティナの魔力がユキの体を包み込む。

そして次の瞬間、ユキを包み込んだティナの魔力が一気にユキの体へと吸い込まれていく。


「…これが従魔契約……凄いな」

ユキの姿を見たユイトから言葉が漏れる。


ティナの魔力を受け入れたユキが見せる圧倒的存在感。

これまでとは比べ物にならない程の存在感と魔力を纏うその姿は、まさにフェンリルと呼ぶにふさわしいものだった。


「ユキ!ありがとうっ!!」


ティナがユキを優しく抱きしめる。

対するユキも、ティナをふわふわの毛で優しく包み込んだ。


「やったな!ティナ」

「ティナさん。おめでとうございます!」


モフモフの毛の間からちょこんと顔を出すティナに向け、ユイトとステラが祝福の声をかける。


「ありがとうございます。ユイトさん!ステラさん!」


モフモフとの絶妙なコントラスト。

笑顔のティナがこの上なくかわいい。


「そういえばさ、ティナ。ユキの体のどっかにティナがイメージした模様が

 あるはずなんだけど、見つかったか?」

「あっ、それだったらココにあるよ!」


そう言うとティナはユキの胸のあたりを指さした。

ユキの胸からお腹にかかる辺りにあるその模様。

それはティナの髪留めにある模様と同じ、雪の結晶の模様だった。


「すごく綺麗ですね。神秘的と言うかなんと言うか…。

 ひょっとしてティナさんの髪留めと同じ模様ですか?」

「はい!私の宝物と同じ模様をイメージしました!」


嬉しそうに話すティナ。

その姿を見て、ユイトは何だか少し胸が熱くなった。


「それにしても、まさか、聖獣フェンリルとの従魔契約の瞬間を

 この目で見れる日がくるなんて……。

 貴重な体験をさせていただきました。

 本当にどうもありがとうございます」


ユイトの過去話も相まって、驚きの連続のステラは興奮冷めやらぬ感じだ。


この後ステラは、ユイトとの約束を果たすべく、すぐに行動を開始。

この日のうちにステラ王女の名のもと、”ユキはユイトとティナの家族、丁重に扱うように”とのお触れが出された。


そして翌日。

ユイトたちは、この日から再び国民を救う活動のお手伝い。

やることはまだまだ山積。あっという間に時が過ぎていく。


そして、メイリ―ル王国の悪夢が終わったあの日からおよそ2カ月。

ついに、獣、魔獣の討伐と、すべての町や村への食料配給が完了した。


こうして今日を生きるための不安を取り除かれた国民たち。

徐々にではあるが、彼らは平静を取り戻していった。

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