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第74話

遠方地域へ食料を届け終わったユイトとティナは、新たな仲間とともに急ぎ王都へと戻った。

そしてメイリール王国王城にて……。


「ユ、ユイトさんっ!?その白い狼は一体っ!?」


ユイトたちの新たな仲間を見てステラが思わず声を上げる。

つい先日まで町や村が獣に襲われていたことを考えると、ステラのその反応も仕方がない。


「ごめん、ステラさん。驚かせちゃったな。

 こいつはユキ。俺たちの仲間であり、俺の家族みたいなもんだな」

「家族…ですか?」


「あぁ。訳あって1年半ぐらい前にこいつと別れたんだけど、

 食料を届けに行った村の近くで偶然再会したんだ」

「そうなんです!

 ユキは、魔獣や獣たちから、村のみんなを守ってくれてました。

 それで今は、私とユイトさんの仲間なんです!」


嬉しそうに話すユイトとティナを見てステラが微笑む。


「お2人がそう言うのでしたら、きっとそれが真実なのでしょうね。

 ユキさん、でしたね?ユキさんも大切なお客様として扱うよう

 皆に伝えておきますね」

「ありがとうステラさん。助かるよ」


「きゃっ。こら、ユキ。くすぐったいよ。

 えーい、お返しだーっ!」


楽しそうにじゃれ合うティナとユキ。

何とも微笑ましい光景だ。


「…そうだ、ステラさん。

 一応言っとくけど、ユキは狼じゃなくてフェンリルなんだ」


「…えっ!?フェ、フェンリルですってーっ!?」

なんだか、もの凄い驚きようのステラ。


「あぁ。まだ子供だから、そこまで大きくないけどな」

「…し、信じられません。

 フェンリルと言えば、伝説の聖獣と言われる生物ではありませんか…」

「そうなのか?」

「…まさか、ご存じないのですか?」

「あぁ、今初めて聞いたよ」


「そうですか……。

 それにしても一体どこでユキさんと……それにユイトさんの家族って……。

 ……あっ、ごめんなさい。つい詮索するようなことを…」


「ははは。気にしないでくれ。

 長くなるから、かいつまんで話すけど、俺とユキは終末の森で出会ったんだ」


「……えっ?終末の森!?」


「あぁ」


「足を踏み入れれば二度と戻れないと言われる、

 あの終末の森のことですか!?」


「なんか、そう言われてるみたいだな。

 俺は訳あって終末の森に住んでたんだ。そのときにユキと出会ったんだよ。

 あの頃はまだ膝の上に収まるくらいの大きさだったけどな」


「…フェンリル、それに終末の森に住んでたなんて……。

 ユイトさんには本当に驚かされてばかりですね。

 ですが、今の話を聞いて、何だかユイトさんの規格外の力の理由が

 少し分かったような気がします。

 …まさかティナさんも終末の森に?」


「いや、ティナは終末の森から少し離れた辺境の町に住んでたんだ。

 俺が終末の森から出て、初めて会った人間がティナなんだ。

 なんせ終末の森には人なんていなかったからな。

 それで終末の森を出た後、右も左も分からない俺をティナが助けてくれた。

 まっ、恩人ってやつだな」


「ふふふ。ユイトさんみたいな凄い人にも恩人がいるんですね。

 ちょっと意外です」

「そうかなぁ?でもほんとに、ティナとあいつには世話になったからな」

「”あいつ”…ですか?ティナさんの他にも恩人がいらっしゃるのですか?」

「あぁ、今の俺があるのもあいつのおかげだからな」


「ところで”あいつ”とは?ユキさんのことでしょうか?」

「ごめんごめん。あいつってのは、古代竜のことだよ」

「……えっ?…ごめんなさい。もう一度お願いできますか?」

「んっ?古代竜のことか?」


「こ、こ、こ、古代竜ぅーーーっ!?」

王女らしからぬ声が辺りに響く。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。

 古代竜様と言えば、フェンリル以上に伝説の存在。

 お伽噺や言い伝えに出てくるような、もはや神に等しき存在です。

 そんな古代竜様にお会いになったというのですかっ!?」


「いや、会ったっていうか、俺はユキと出会う前は古代竜と一緒に

 暮らしてたんだよ。あいつのねぐらでさ。

 デモンドールが悪魔って分かったのも、昔あいつに悪魔の特徴を

 教えてもらったからなんだよ」


「……ユイトさん…ひょっとしてあなたは神の使いか何かなのでしょうか?

 こうしてあなたに話しかけることが、なんだか恐れ多いような

 気がしてきました」


「何言ってんだよ。俺はいたって普通の人間だよ。

 俺がステラさんに話しかける方がよっぽど恐れ多いって。

 気にせず話しちゃってるけどさ。

 だからさ、これまで通り普通に接してくれよ。

 って、平民が王女様に言うセリフじゃないな。はははは」


「ふふふ。分かりました。

 ユイトさんは普通の人間、ひとまずそういうことにしておきますね」


(いやいや、ひとまずって…本当に普通の人間なんだけど…)

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