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第7話

と、その時、自身の手を見たユイトが何かに気づく。


(…んっ?何だこれ?手のひらから何か出てる……)


「なぁ、グレンドラ。

 手から何か湧き出てるんだけど、これが魔力ってやつなのか?」

「な、何だとっ!?お主、魔力が見えるのか!?」


「いや、魔力かどうか分かんないけど、何かが湧き出てるのは普通に見えるぞ。

 っていうか、何そんなに驚いてんだ?」

「それは驚くであろう。普通は、魔力は見えんのだ。

 超高密度まで圧縮した魔力なら別だがな」


このときユイトは魔力を圧縮したわけではない。

そもそも圧縮の仕方など知るはずもない。

だが、どういう訳か、ユイトには普通に魔力が見えていた。


「そうなのか?じゃあ、”理外の者”の称号のおかげなのかもな」

「ふははははっ。本当にお主は規格外だな。面白い」

ご機嫌なグレンドラ。


「では、次のステップに移るとするか。次がひとまずの最終段階だ。

 その魔力を魔法として行使するための訓練だ」

「おぉ!」

グレンドラの言葉にユイトの胸が高鳴る。


「だが訓練の前に、魔法行使までの流れを理解しておく必要がある。

 まずはそれについて説明しておこう。


 先ほどお主は魔素を魔力に変換してみせた。

 だが、魔素を魔力に変換しただけでは、それは魔法ではなく単なる魔力だ。

 魔力を魔法として行使するためには、2つのプロセスが必要となる。


 まず1つ目のプロセス、それは魔力の属性化だ。

 魔素を魔力に変換する際には、使用したい魔法の属性に合わせ、魔力を変質させる必要がある。

 例えば、火属性魔法を使用したい場合には、魔素を魔力に変換する際、火属性をイメージする。

 そうすることで、魔素は火属性の魔力に変換される」


(ふむふむ。なるほど)


「次に2つ目のプロセス、それは魔法イメージの固定だ。

 どのような魔法を行使したいのかをしっかりとイメージしないと、うまく魔法が発動しない。

 つまり、”属性化された魔力”を”どのような魔法”として行使したいのかを具体的にイメージする必要がある。

 例えば、炎の矢を放ちたい場合には、属性化された魔力を放出する際に、炎の矢を強くイメージする必要がある。

 そうすることで、それが具現化できる。

 イメージが曖昧な場合、魔力が固定されず霧散してしまい、魔法が発動しない。


 今、2つのプロセスを話したが、両プロセスともにイメージ力が極めて重要になる。

 イメージ力がすべてを決めると言っても過言ではない」


「なるほどな。大体分かった。

 でもさ、もしそうだとすると、無限の種類の魔法が存在するってことにならないか?

 イメージに数の制限なんて無いんだからさ」


「まぁ、そういうことになるな。中々、鋭いではないか」

「いやー、能ある鷹は爪を隠しきれないっていうやつだな」

ふふん、と得意げな表情を浮かべるユイト。


「時にユイトよ。お主は異次元世界の住人だったわけだ。

 この世界の住人とは異なる知識を多く有しているのであろう。

 ということはだ。

 この世界の住人ではイメージできないことを、お主はイメージできる。

 つまり、お主にしか生み出すことのできない魔法がたくさんあるはずだ」

グレンドラがニヤリと笑う。


「俺にしか生み出せない魔法……まじか……。

 やばい、なんかめちゃくちゃワクワクしてきたぞーっ!」

ユイトの心の奥底から、”やる気”というマグマがとめどなく溢れ出る。


ここでふと、ユイトが疑問に思う。


「ところでさ、グレンドラ。

 イメージ力が重要なのはよく分かったけど、本当にイメージだけでいいのか?

 例えばほら、呪文とか詠唱とかさ」

魔法のない地球で育ったユイトの魔法のイメージは、もっぱらRPGの呪文たち。


「詠唱か。中には、魔法イメージを固定しやすくするために使用する者もいる。

 だが、正直、長ったらしい詠唱など実戦では使いものにならんぞ。

 唱えている間にやられてしまう。


 まぁお薦めは、魔法自体に名前を付けることだな。

 名前と魔法イメージをあらかじめ頭の中でしっかり紐づけておくことで、魔法の名前を叫ぶと同時に、魔法イメージを固定できる。

 これは、複数の属性魔法を同時に使用する際に特に効果を発揮する方法だ。

 属性の異なる魔法を同時にイメージするのは、中々骨が折れるからな」


「おぉ、なるほど!さすがだな、グレンドラ」

「ふっ、この程度、我にかかれば朝飯前よ。

 なにせ偉大なる古代竜だからな。がっはっはっはっは」

褒められるとすぐに調子に乗る。


「さて、魔法を発動するまでの一連の流れは以上だ。

 だが念の為、これだけは先に言っておこう。


 これから魔法発動を訓練するわけだが、単に魔法を発動できるようになっただけでは、実戦では全く使いものにならん。

 実戦では、僅かな遅れが命取りになる。

 故に今話した一連の流れを瞬時にこなせないと駄目なわけだ。

 そのためには繰り返し繰り返し膨大な量の鍛錬を積み、一連の流れを頭と体にしみ込ませる必要がある。

 地道な鍛錬、それ以外に道は無い」


(そうだ。確かにその通りだ)


グレンドラが言ったこと。その言葉はユイトに響いた。

響いたというより、ユイトはこれまでの経験からそのことをよく理解していた。

ユイトは”テ〇リス”というゲームが大の得意だ。

だが当然、最初から得意だったわけではない。

はじめは、どうブロックを回転させようかじっくり考えながらやっていた。

ボタン操作もぎこちなかった。そのため何度も負け、何度も悔し涙を流した。

だが厳しい鍛錬を重ねに重ねた結果、今ではブロックを見た瞬間どうすればいいかが分かる。

考えなくてもブロックを見た瞬間、指が勝手に動く。それも驚くべき速さで。

つまりはそういうことなのだろう。


「おぉ、そうだそうだ。忘れるところであった。

 今しがたは、放出系魔法に関して話したわけだが、実は魔法にはもう1つ、体内で発動する魔法がある。

 その方法はだな……」


「悪い、グレンドラ。もうすでに頭がパンクしそうだ。

 それに、早く放出系魔法ってのを試してみたい。

 それはまた今度教えてくれ」


「……そうか」

ユイトに止められ、ちょっと残念そうなグレンドラ。

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