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第57話

時を同じくして、ガイルにもビッグクローの巨大な爪が襲い来る。


「くそったれ…ここまでかよ……」


迫りくるビッグクローの右腕を前にもう為す術がない。

ガイルは諦め目を閉じた。


「…………」

(…なんだ?なんで俺はまだ生きてんだ?)


死を覚悟したガイルは、まだ自分が生きていることに困惑した。

そして閉じた目を開けると、そこには剣1本でビッグクロ―の攻撃を受け止める少女の姿があった。


「なっ…」


「ガイルさん、大丈夫ですか?後は私に任せてください」

そう言うとティナは、ガイルに向け微笑んだ。


絶望の中でさえ安らぎを与えてくれるような、ティナのその温かい微笑みがガイルの記憶に刻まれる。


「じゃあ、まずは腕からです」


スパンッ、スパンッ


「ギャァーーーッ」

ティナの剣が閃くと同時に、ビッグクローが悲鳴を上げる。


「これで終わりです」


スパンッ


ほんの一瞬だった。

ビッグクローの巨体は、大きな音を立て崩れ落ちた。


「うわぁーーっ、こっちに来んじゃねぇーーーっ!!」

別のビッグクローに今にも襲われそうなランドルとアドラーが悲鳴を上げる。


「行かせませんっ!」

氷壁アイスウォール


ランドルとアドラーの前に突如せり出した氷壁がビッグクローの突進を阻む。

と同時に、周囲の魔素が急速にティナへと集まる。


パキパキパキパキッ

一気に氷の槍が生成されていく。


「もっと固く…もっと鋭く……」

氷槍アイスランス


ビッグクローに向けられたティナの左腕から、凄まじい勢いで氷の槍が放たれる。

氷壁に弾き返されたビッグクロー目がけて猛烈な速度で飛んでいく氷槍。

そしてその氷槍は、固い皮膚に覆われたビッグクローの巨大な体を一撃で貫いた。


「これで2体目です」


「…一体俺は何を見てんだ?夢でも見てんのか…?

 あいつらは何もできないGランクだったはず…。

 なんで俺らが手も足も出なった魔獣が……」


眼前で繰り広げられる戦いに、ガイルは激しく動揺。

何が起こっているかをすぐには理解できなかった。


「いつの間に氷魔法使えるようになったんだ?」

”天翔の風”側にいたビッグクロー3体を片付けたユイトが、ティナの元に駆けつけ声をかける。


「ユイトさんを驚かせようと思って頑張って練習しました。初披露です!」

「そっか。中々のもんだったぞ!」

「ふふっ。それでユイトさんはもう終わったの?」

「あぁ。ティナもあと一体だけだな」

「うん。最後も一撃で仕留めるね」


そう言うとティナは剣を鞘に納め、静かに抜刀の構えを取った。

そして次の瞬間、手加減なしの一撃が最後の1体に向け放たれた。


スパッ


おそらく斬られた事すら気づかなかっただろう。

最後の1体は声を上げることもなく絶命した。


キンッ


「終わりだな」

「はい!」


2つの冒険者パーティーを襲った6体のビッグクロー。

その化け物たちは、2人のGランク冒険者の手によって瞬く間に討伐された。


「す…ごい……」

呆然とするセフィーの口からは、それ以上の言葉は出てこなかった。


「は、ははは…。ギルドが指名依頼を出すわけだ……」

さすがのロイも、目の前で起こった出来事に動揺を隠しきれない。


皆、死を覚悟した直後の予想もしない出来事に心が付いて行かず、ただただ呆然としている。


ビッグクローが地に伏し、静かになった森。

その状況に、徐々にではあるが、皆、普段の精神状態を取り戻していく。

そして…


「…助かったのか?俺たち、助かったんだよな…?」

「うおぉぉぉーーーーーーっ!!!」


ギレンの森に歓喜の声が響き渡る。


「…痛てててて。ほっとしたら、そこら中が痛くなってきやがった」

「俺もだー。くそっ、痛くて動けねぇ」

”タイガーファング”のメンバーが苦悶の表情を浮かべる。


「ユイトさん、ちょっと行ってくるね」

そう言うとティナは”タイガーファング”のメンバーの元へと駆け寄った。


「皆さん、今、治しますね」

高位治癒ハイヒール


ティナは、ガイル、ランドル、アドラーの順に次々と傷を癒していく。


「………」

「あぁ、何だかあったけぇ」

「すげぇ、もうまったく痛くねぇぞ」


「はい、皆さん、終わりました。もう大丈夫です!」


「凄い…。ユイト君だけじゃなく、ティナちゃんまで……」


治癒魔法師であるセフィーには、ティナの治癒魔法のすごさを理解できた。

そして自分の未熟さを痛感した。

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