表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/221

第55話

村の広場を出発した一行は、事前の計画通りその日のうちにギレンの森の手前まで到着。その日はそこで一夜を過ごした。


そして翌朝、再びギレンの森へ向け歩き出した一行。

この日も道中、特に何事もなく、予定通り昼前にはギレンの森へと到着。

その後一行は、すぐに調査の準備に取り掛かった。


「よし、それじゃあ早速調査を始めよう。

 暗くなってからの調査は危険だ。暗くなる前に終わらせるぞ」


皆に向け、調査方針を説明し始めた”天翔の風”リーダー ロイ。


「ギレンの森はそこそこ広い。固まって調査するのは非効率だ。

 ”天翔の風”と”タイガーファング”で二手に分かれて調査に当たろう。

 "無名アンネームド"には、ここで俺たちの荷物の見張りをしてもらう。

 それでどうだ?」


「んなもん、それしかねぇだろ」


「よし、じゃあ決まりだな。

 もし、手に負えない状況に陥ったら声をあげてくれ。すぐに駆け付ける。

 それじゃあ、みんな。調査開始だ!」


ロイの号令とともに、”天翔の風”と”タイガーファング”が森の中へと消えていく。


「…ねぇユイトさん。私たち、まだここにいても大丈夫?」

「ティナも気付いてるんだな。…まぁ今のところは大丈夫だろ。

 森の入り口付近にいるのは、グレートウルフの群れが2つだけだしな。

 グレートウルフ程度だったら、あのパーティーなら難なく対処できるはずだ」

「そっか…。ちょっと安心した」


「それより問題なのは、少し奥にいる1体、そしてさらに奥にいる5体だな。

 こいつらは間違いなく魔獣だ。

 グレートウルフを追ってるのか、森の入り口の方へ移動してきてる。

 こいつらが相手だと”天翔の風”と”タイガーファング”じゃあ、

 ちょっときついだろうな」


「どうするの?」

「今はまだ森の入り口からだいぶ離れたところにいるからな。

 こいつらが近くに来るまで、俺たちはここで待機していよう」

「うん。分かった」


そしてそのまま荷物の見張りをしながら待つこと1時間。

”天翔の風”が、討伐したグレートウルフを抱えて戻ってきた。

そしてその30分後、”タイガーファング”もまた、

討伐したグレートウルフを抱え森の入り口へと戻ってきた。

”天翔の風”も”タイガーファング”も一度に運びきれなかったようで、

何回かに分けてグレートウルフを回収している。


「…ユイトさん、もうすぐ近くまで…」

「あぁ、そろそろだな。まずは1体目だ。

 けどすぐには手を出さない。ギルドマスターにも言われてるしな。

 もうダメだ、ってなったら助けに行く。

 その時は合図するから、いつでも動けるように準備しておいてくれ」

「はい」


「…そういやティナは、魔獣と戦うのは初めてだったよな?」

「うん」

「じゃあ、一応注意だけしておくな。

 魔獣は例外なく、獣とは段違いの強さと凶暴さを持ってる。油断は禁物だ。

 感知魔法の感じからすると、今回の奴らはおそらく

 ビッグクロ―っていう巨熊の魔獣だ。

 ビッグクローは皮膚が硬くて攻撃が通りにくい。

 だから今回は、最初から”気”を纏わせていった方が良い」

「うん、分かった」


「それと、奴らは大きな爪を持った両腕で攻撃してくる。それなりに力も強い。

 もし一撃で仕留めきれないと感じたら、まずは両腕を落とし

 攻撃手段を封じるんだ。

 あと、ここは森だから火炎魔法は禁止な。火事になったら大変だからな」

「はい」

「よし、じゃあそんな感じで頼んだぞ」


すると…


「おぅおぅお前ら、何こそこそ話してんだ?」

呼んでもいないのに”タイガーファング”がやってきた。


「俺らの活躍を見て、当てられちまったか?

 そりゃこんなん見せられちゃ、憧れるのもしょうがねぇわな」

どうやらガイルはグレートウルフの群れを討伐し、ご機嫌のようだ。


「にしても、お子ちゃま相手に戦いの話して英雄気取りか?笑っちまうぜ。

 英雄ごっこならお家帰ってやんな。偽英雄の坊ちゃんよぉ」

ユイトを見下し馬鹿にした笑みを浮かべながら発せられたガイルの言葉。


「………」

その言葉にティナは両手をぎゅっと握りしめ、ガイルの方を向いて立ち上がる。

そして…


「取り消してください」


「なにぃ?」


「今言ったこと、取り消してください。

 ユイトさんは偽英雄なんかじゃない。

 ユイトさんは私を地獄の苦しみから救ってくれた本当の英雄です。

 ユイトさんがいたから今の私がいる。

 あなたにユイトさんの何が分かるんですかっ?

 ユイトさんを馬鹿にするなんて絶対に許せないっ。

 今言ったこと取り消してくださいっ!!」


「……ティナ」


これまでおとなしかった少女の突然の怒りに、その場にいる者たちは皆、目と耳を疑った。

そしてガイルにいたってはティナの圧に押され、自分でも気づかない内に一歩後ずさりしていた。


「…ちっ。悪かったな。言い過ぎた」

ガイルはバツが悪そうに短く謝罪すると、すぐにユイトたちの側を離れていった。


その後すぐ……


「ごめんなさい。聞き流せって言われてたのに…。

 でもユイトさんのこと馬鹿にされて、私、どうしても許せなかった…」


「…ありがとな、ティナ。怒ってくれて。

 俺はティナの気持ち、素直に嬉しいぞ。だからさ、もう気にすんな。

 俺だってティナのこと馬鹿にされたら我慢できなかったと思うしさ。なっ?」


「…うん」


少し落ち込むティナに、ユイトは優しく声をかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ