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第54話

ライカへと向かうユイトとティナ。

ここ最近はウォーターヒールにお世話になりっぱなしだったが、道中は久方ぶりの簡易宿。早速、先日購入したベッドと布団と枕の活躍の場が訪れる。

野営でこんな快適な睡眠をとれるのは、世界中探してもユイトたちの他にはいないだろう。

野営だというのに、あまりの快適さについつい寝過ごすユイトとティナ。


だが、ライカへの移動はいたって順調だ。

途中までは王都ステイリアへと向かう道と同じため、道はきれいに整備されており、迷う要素はどこにもない。

その結果、特に急いだわけでもないが、ユイトとティナは予定よりも早くライカの村へと到着した。

その後2人は、村長へ一言挨拶。村の端っこを使わせてもらう許可をもらって簡易宿を設置した。


…そして翌朝。


「まだ誰も来ないね」

「そうだな。集合時間までは聞いてなかったからな…」

広場の端にある大きな石に座って、”天翔の風”と”タイガーファング”を待つユイトとティナ。


それからしばらくすると、広場に冒険者らしき2つの集団がやってきた。

1つは男3人女1人のパーティー、そしてもう1つは男3人のパーティーだ。


「ティナ。きっとあれが”天翔の風”と”タイガーファング”だ。行ってみよう」

「うん」

ユイトとティナは石から飛び降りると、その冒険者らしき集団の方へと向かっていく。


一方、2つの冒険者パーティーが集う場所。


「残りのパーティーはまだ来てねぇのか?一体どんな奴らだ?

 "天翔”のリーダー、ギルドから何か聞いてるか?」

「いや、俺たちも詳しくは聞いていない。

 ただ、Aランクパーティーがすべて出払ってるから、

 代わりにギルドが指名依頼を出したって話だ」


「ふーん、指名依頼ねぇ。ギルドの指名依頼ってのは期待できんのか?

 もし、ろくでもねぇ奴らだったら俺がたたき帰してやるぜ」

「おいおい、それはやり過ぎだろ…」

「何言ってんだ。

 もともとAランク以上が必要ってのも、もしもの時の保険ってだけだろ?」


そんな話をしている集団の元へユイトとティナが到着。

すぐにユイトがその集団に声をかける。


「なぁ、ちょっといいか?

 あんたたちって”天翔の風”と”タイガーファング”で合ってるか?」


「おぅ?何だガキども。気やすく話しかけてんじゃねぇぞ。

 …んっ?よく見りゃお前らGランク冒険者か。

 で、Gランク冒険者が俺らに何の用だ?」


「あぁ、俺たちはギルドから指名依頼を受けた”無名アンネームド”っていうパーティーだ。

 一緒に依頼こなすんだろ?よろしく頼む」


ユイトが発したその言葉に、”天翔の風”も”タイガーファング”も唖然。

そして…


「…はぁ?

 おいおいおいおいおい、こいつらがAランクパーティーの代わりだってか!?

 一体ギルドの奴ら何考えてんだ、こんなGランクのガキども寄こしやがって!

 舐めてんのかよ、あいつらっ!!

 なんで俺らが子守までしなきゃなんねぇんだよっ!まじでふざけんなよっ!!」


まさかまさかのGランクお子様パーティーの登場に激しく怒る1人の男。


「おい、少し落ち着け。これはギルドが決定したことだ。

 何かしらの考えがあってのことだろう」

荒れ狂う男をなだめようと、別のパーティーの男が声をかける。


「んなこと言ったってよぉ、どう考えてもおかしいだろっ!?

 ギルドの奴ら、俺らのこと馬鹿にしてんじゃねぇのか!?」

男の怒りは収まらない。


「まぁいいから、取り敢えず一旦落ち着け。

 彼らはこれからともに行動するメンバーだ。

 彼らがいなければ、依頼の条件を満たせず依頼も開始できない。

 仲良くしろとは言わん。だが俺たちは冒険者だ。

 プロ意識を持って依頼を遂行すべきだろ」


「…ちっ。くそったれ」

しぶしぶ説得に応じる男。


「よし。じゃあ、全員揃ったみたいだから、これからギレンの森の調査に

 向かおうと思う。

 だが、その前にお互いの自己紹介をしておきたい。

 せっかく行動をともにするメンバーだ。

 時には助け合い、場合によっては命を預けることだってあるだろう。

 だから最低限、相手の名前ぐらいは知っておくべきだと思う」


(いたってまとも。Theまとも)

(おそらくこの男が”天翔の風”のリーダーだな)

(じゃあ、あっちの男は”タイガーファング”のリーダーか…)


「それじゃあ、まずは俺たち”天翔の風”からだ。

 俺はロイ。このパーティーのリーダーをやっている。ランクはB。

 担当はアタッカーだ。よろしく頼む」


「次は俺だな。俺はリガード。ランクはC。

 ロイと同じ剣士でアタッカーだ。よろしくな」


「俺はエドガーだ。ランクはC。パーティーでの役割はタンクだ。

 この大盾で仲間を守る。今回も守りは任せてくれ」


「私はセフィー。ランクはCよ。治癒を担当してるわ。

 治癒魔法が使えるから、みんな怪我をしたら私に任せてね」


「じゃあ次は”タイガーファング”だな。いいか?」


「ちっ、しょうがねぇな。

 俺はガイル、”タイガーファング”のリーダーだ。Bランクだ。

 向かってくる奴は全て、この剣でぶっ潰す」


「俺はランドル。Cランクだ。見ての通り槍使いだ。

 どんな猛獣でもこの槍であっという間にハチの巣だ」


「俺はアドラーだ。Cランクだ。この戦斧が俺の相棒だ。

 どんなに硬い奴だろうが、これに砕けねぇものはねぇ。以上だ」


「じゃあ次は…確か"無名アンネームド"だったか?

 よろしく頼む」


「分かった。じゃあまずは俺からだな。

 俺はユイト。ランクはGだ。得意といったものは特にない。

 一通り何でもこなせる。じゃあみんな、よろしくな」


「私はティナです。ランクはGです。

 剣も使えますが魔法の方が得意です。みなさん、よろしくお願いします」

そう言うと、ティナは丁寧にお辞儀する。


「ふふっ。かわいいわね」

ティナの自己紹介を見てセフィーが笑みを浮かべる。


「これで全員の自己紹介が終わったな。

 それじゃあ、これからギレンの森に向け出発しよう。

 今から出発すれば、今日中にギレンの森の手前まで行けるはずだ。

 今日はそこで野営だな。

 明日は朝出発すれば、昼前にはギレンの森に着くだろう。

 …よし、それじゃあ行くか」


”天翔の風”リーダー ロイがみんなをまとめる。

しかし…


「…ちょっと待てよ。やっぱ納得いかねぇぜ。

 こんなん俺らの負担が増えるだけだろ?

 ガキのお守りしながら戦えってか?ふざけんじゃねぇ。

 何でGランクなんかに指名依頼なんて出しやがったんだ、ギルドの奴ら。

 お前ぇらもお前ぇらだ。

 どうせコネでも使ったんだろ、この寄生野郎が。くそったれ」


激高する”タイガーファング”のリーダー ガイル。


「いいか、お前ぇらは邪魔以外の何物でもねぇ。

 何かあっても絶対ぇ手ぇ出すんじゃねぇぞ。おい、分かったか!?」


ガイルの言葉を聞き、うつむき震えるティナ。


「ちょっと、止めなさいよっ!ティナちゃん震えてるじゃない。

 ティナちゃんたちが一体何したっていうの!?

 ギルドの指名依頼受けただけでしょ!?

 それとも何?自分たちが指名依頼されなかったこと僻んでるの?

 どっちにしろいい大人が子供にそんな態度とって恥ずかしくないの?

 いい加減にしなさいよっ!!」


「くっ…。

 ちっ、しょうがねぇ。分かったよ。行きゃあいいんだろ、行きゃあよぉ」


セフィーの一喝で場は収まり、ようやくギレンの森へと出発した一行。


「セフィーさん、ありがとな」

「ううん。私がただ我慢できなかっただけだから。

 じゃあティナちゃんをしっかり守ってあげてね」

「あぁ、分かった」


”天翔の風”と”タイガーファング”が先へと進む。


「…ティナ、みんな先に行ったぞ。もう顔を上げても大丈夫だぞ」

「あぁ…もうダメかと思った…。

 おかしくておかしくて吹き出しそうになっちゃった。

 ガイルさんの言うこと、ギルベルトさんが言ってたことと同じなんだもん。

 堪えるの大変で震えちゃった」


「はははっ。確かにな。これでもかってくらい同じだったな。

 ギルベルトさん、あの人、実は冒険者じゃなくて予言者だったんだな」


遠くでギルベルトがくしゃみをしたような気がした。

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