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第49話

「で、親父さん。頼みたい防具と剣についてなんだけどさ」

「おぉ、そうだったな。で、どんなのが希望だ?」


「あぁ、まずティナの防具だけど、鎧みたいなもんじゃなくて

 動きやすいのがいいんだ。軽いとなお良いな。

 丈夫な物だったら、別に金属じゃなくて、皮や布でもいい。

 あと、少し大きめに作ってもらえるか?すぐに使えなくなるのも困るからな」

「おぅ、了解したぜ」


「次はティナの剣だ。ティナの剣は耐久性と軽さ重視で頼む。

 長さはそうだな……ティナ、ちょっと剣を貸してくれ」

「うん、ちょっと待ってね」


ティナは腰に据えた剣を外すとユイトへと手渡す。

「はい、ユイトさん」

「ありがとな」


受け取った剣を親父さんに見せながらユイトが続ける。

「長さはこの剣より少しだけ長くしてもらえるか。あと鞘も頼む」

「おぅ、任せとけ」


「最後に俺の剣だけど、ちょっと口で説明するのが難しくてさ。

 何か書くもんってあるか?」

「おぅ、あるぜ。ほらよっ」


親父さんから紙とペンを受け取ったユイトが、作って欲しい剣の絵を描き始めた。

細部まで丁寧に描くユイト。これが中々に芸術的。

まったくそうは見えないが、どうやら絵の才能まであるようだ。


絵を描き終えたユイトは、絵を見せながら親父さんに説明。

「で、俺の剣だけど、こんなのを作って欲しいんだ」

「こりゃあまた…変わった形だな…」


ユイトが描いた剣。

その剣の刀身は少し反りを持ち、刃は反ってる側の片側だけ。

そう、ユイトが描いたのは剣ではなく、日本人にはおなじみの刀だった。


「こんなん見たことないぜ。刃が片側だけってか?」

「あぁ。刃が片側だけだったら、斬りたくないときは反対側を使えばいいだろ?

 それに厚みのある反対側で相手の攻撃を受ければ、刃が傷むのも防げる」

「なるほどな…。言われてみりゃあ、確かに合理的な気もするわな」


ユイトの言葉がしっくり来たのか、妙に納得する親父さん。


「まぁ、そうは言ったけど一番の理由はその形が好きってことなんだけどな。

 …あぁ、あと忘れるところだった。

 今回お願いする剣だけどさ、2本とも素材として魔石も使って欲しいんだ」

「なにっ?魔石だと!?」

「あぁ。武器の素材として魔石を使うと魔法との親和性が高くなるって

 聞いたことがあってさ」

「…こいつぁまた難しい注文を出してきたもんだぜ」


これは予想外。まさかの反応を示す親父さん。


「んっ?魔石を使って作るのって、そんなに難しいのか?」

「いや、作ること自体は俺に取っちゃあ造作もねぇ。問題は魔石の方だ。

 魔石はこれといった用途がねぇから市場にあまり出回ってねぇんだ。

 いくら腕があっても肝心の素材がなきゃあ、どうすることも出来ねぇ」


(ほぅ…)


「なぁ、その魔石ってどんな魔石でもいいのか?例えばこんなのとかさ」


ユイトは異空間収納に腕を突っ込むと、グレンドラがいた洞窟で採取した魔石を1つ取り出した。


「…はっ?今一体どこから出したんだ!?

 ってか何だ!?この魔石はっ!?

 こんな高純度の魔石なんて見たことねぇぞっ!?

 こんな凄ぇもんドワーフの国中探してもないレベルだっ!」


あまりの超高純度魔石に親父さんは驚愕。


「で、どうなんだ?その魔石で大丈夫そうか?」

「いやいやいや、大丈夫も何も、これ以上の素材なんて存在しねぇぜ…」

「おぉ良かった!そんな魔石だったらたくさんあるから自由に使ってくれ」

そう言いながら、近くの作業机の上に大量の魔石を取り出すユイト。


「…ま、まじか」


「あー、あと、俺の剣の長さだけど、この剣と同じ長さにしてもらえるか」


ユイトが親父さんに手渡したのは、魔獣の森にいた頃から使っているユイトの剣。

するとその瞬間、親父さんは驚きの表情を浮かべた。


「…おい、こいつは魔装具か?それもかなりのレベルだ。

 こんな高純度のやつはお目にかかったことがねぇ…」


「魔装具?魔装具って何だ?」

「なんだ、兄ちゃん。知らねぇのか?

 魔装具っていうのはな、魔石を素材にして作った武器や防具のことだ。

 つーか一体どこで、こんな凄ぇもん手に入れたんだ?」


「んっ?普通に魔獣の森で拾ったんだけどな」

「魔獣の森?」


「あぁ、魔獣の森だ。

 ほら、あるだろ?サザントリムからみたら北西になるのかな。

 北西にひたすら行くと、大きな森があるだろ。

 それこそ大国より広いっていう森だ。あそこに住んでた時に拾ったんだよ。

 ひょっとしたら、あそこは魔素が濃かったから、

 それを吸収して魔装具化したのかもな」


ユイトのその話を聞いて、見る見る親父さんの表情が変わっていく。


「…ま、まさか、終末の森のこと言ってんのか!?

 兄ちゃん、あんなところに住んでたってのかっ!?」


「終末の森?…そっか、あの森、終末の森って言うんだな。

 まぁ、住んでたって言っても3年だけだけどな」


「さ、3年だとっ!?

 ……おい、兄ちゃん。あの森はな、足を踏み入れたが最後、

 二度と戻って来れねぇって言われてる禁忌の森なんだ。

 それが終末の森って言われる所以だ。

 そんなとこに3年もって……まじで信じらんねぇぜ……」


「まぁ、確かに魔獣はそこら中にいたけどな。

 …あぁ、ちなみにその魔石もその森でとってきたもんだぞ」


「はぁ!?まじか!?

 …そりゃあこの純度も頷けるぜ……」

まさかまさかの終末の森産 最高級魔石。


「ふぅ…盛大に驚いちまったが、何はともあれ魔石も手に入った。

 これで兄ちゃんに依頼された物は作れるぜ」


「良かった。安心したよ。

 で、どれくらいかかりそうだ?時間とお金の両方な」


「そうだな…今、他の依頼も請け負っちまってるからな…。

 長くかかっちまって悪いが、3カ月…いや2カ月くれ」

「2カ月か…。まぁ、3つも頼んだしな」


「で、値段の方は、素材自体が結構高くてな。

 最高のもんを作ろうと思ったらどうしてもいい素材を使わなきゃなんねぇ。

 装備1つあたり金貨2枚ぐらいになっちまう。

 だが、こんな最上級の魔石をもらっちまったからな。

 その分差し引いて、合わせて金貨4枚でどうだ?」


(金貨4枚か…。まぁ、余裕もあるし大丈夫か…)


「分かった、それで頼む」

「よしっ、決まりだな」


早速ユイトは異空間ポケットから金貨4枚を取り出し親父さんへと支払った。

その後は、親父さんと装備品の詳細についての話し合い。

事前に言っていたように、とことんこちらの要望を知ろうと細部に至るまで聞いてくる。


…そして、話し合いを始めておよそ一時間。


「じゃあ、そんな感じで頼むよ」

「おぅ、任せとけ。これ以上の物はねぇってくらいのもん作ってやるぜ」

「あぁ、期待してる!」


そして店を出ようとユイトが入り口の扉に手をかけた時、ユイトが突然、親父さんの方を振り向いた。


「あっ、すまん。重要なことを言い忘れてた!」

「んっ?なんだ?」


「ティナの防具についてだ。これが一番重要と言っても過言じゃない」

「ほぅ、何だ?何でも言ってみろ。

 ドワーフの国にガンツありとまで言われたこのガンツ様にできねぇことはねぇ。

 どんとこい!」


自信に満ち溢れたその言葉。これは何とも頼もしい。


「へぇ、親父さん、ガンツさんっていうんだな。

 …で、頼みたいことってのは"かわいく"だ。

 ティナが装備するからな。やっぱかわいくなきゃダメだろ?

 でも良かったよ。そこまで自信があるんだったら安心だな。

 じゃあ、よろしく頼んだ」


「お、ぉぅ…」


ユイトとティナがガンツの店を出た後、店の奥ではガンツの声が響いていた。


「エレ~ン、助けてくれぇーーーーーっ!!」

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