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第46話

「…し、信じられん。まさかこれほどとは……」


ギルド職員の誰もが予想できなかったまさかの結末。

目の当たりにしたティナの実力に、ギルドマスターもまた大きな衝撃を受けた。


「…嬢ちゃん、さっきは悪かったな。

 熱くなり過ぎて、途中、模擬戦ってこと忘れちまった。申し訳ない。

 …しかし、こんなに熱くなったのはほんとに久しぶりだ」

負けたとはいえ、全力を出し切ったギルベルトの顔はなんだか晴れやかだ。


「それにしても、本当にとんでもない腕だ。

 嬢ちゃんならきっと凄い剣士になれる。

 それこそ、世界中に名が轟くような、もの凄い剣士にな」


ギルベルトがティナの剣の腕をほめちぎる。

だがその言葉にユイトは不思議顔。


「…んっ?何言ってんだ?

 ティナは剣士じゃないぞ。ティナは魔法の方が得意だからな」


「………」


「えぇーーーーっ!!?」

訓練場にギルド職員たちの声がこだまする。


「おいおいおいおいっ、冗談はよしてくれっ」

「いや、冗談なんかじゃないぞ」

「はぁ!?まじで言ってんのかっ!?

 これほどの剣の技量があって剣士じゃないってのかっ!?」

「あぁ、そうだぞ」


「………」

ユイトの言葉に唖然とするギルベルト。


すると突然、ギルベルトがシノンにあるものの準備を依頼した。


「おい、シノン。あれを持ってきてくれ」

「”あれ”って、魔法適性を測る装置のことですか?」

「そうだ。ちょっとここに持ってきてくれ」

「はい、分かりました。では少しお待ちください」


シノンは急いで魔法適性を測る装置とやらを取りに行く。

そして待つこと数分。シノンが訓練場へと戻ってきた。

その手には、何やらガラス玉みたいなものがくっついた箱がある。


「お待たせしました」

「よし。じゃあシノン、説明してやってくれ」

「はい。それじゃあ、ユイトさん、ティナさん、説明しますね」

シノンの装置説明講座が始まった。


「この装置では魔法適性を測ることができます。

 この部分に手を当てて魔力を込めると装置の球が光ります。

 その光った球の数で魔法適性を判断するんです。

 球は全部で10個あるんですが、1つでも光れば魔法適性があると

 判断されます。


 たったの1つ?と思うかもしれませんが、それすらできない人が

 ほとんどなんです。

 国が抱える高位魔導士や、世界トップクラスの魔法系冒険者でも

 5個ぐらい光らせるのが限界と言われています」


「なるほど…。それじゃあ、この装置を試してみればいいんだな?」

「はい」


「ちなみにだけど、この装置って貴重なのか?

 壊れたら2度と手に入らないとかってないよな?」

「貴重は貴重ですけど、2度と手に入らないってことはないです。

 当ギルドにも予備はいくつかありますし」


「そっか。じゃあ心配いらないな。ここにはギルドマスターもいるしな」

「それはどういう?」

「多分壊れるってことさ。

 この装置がティナの魔力に耐え切れなくてな」


「おいおいおいおい。さっきの話聞いてただろ?」

思わずギルベルトが口をはさむ。


「世界トップクラスの魔法系冒険者でも5個光らせるのがやっとなんだぜ。

 耐えきれずに壊れるって、もしそんなことできるんだったら見てみたいぜ。

 歴史の証人ってやつだな」


「ははは、そっか。

 ……よし、じゃあティナ、やってみてくれ」

「うん。ここに魔力を注げばいいんだよね?」

「あぁ。遠慮はいらない。思いっきりやってやれ」

「うん、分かった」


そう言うとティナは意識を集中。

直後、膨大な魔素がティナへと吸い込まれ、瞬間的に魔力へ変換されていく。


「じゃあ、行くね」

高密度魔力を纏ったティナの右腕が装置に触れる。

そして…


「えいっ!」


ティナが魔力を注いだその瞬間、装置の球は激しく光り、10個の球すべてが粉々に砕け散った。


「な、な、な、な、な………」


まさに絵に描いたような驚きよう。

口をパクパクさせるギルド職員たち。


「良かったな、みんな。歴史の証人ってやつになれたぞ!」


「いやいやいやいやいや、どうなってんだ!?こんなのおかしいだろ!?

 凄まじいほどの剣の才能があって、魔法の才能はそれ以上ってか!?

 ……まじで信じらんないぜ。

 これが歴史に名を残す天才って奴なのか……」


興奮しまくりのギルベルト。

そんなギルベルトの言葉にユイトが返す。


「まぁ、才能があるってことは否定しない。

 けど、ここまでなったのは、ひとえにティナの努力あってこそだ。

 めちゃくちゃがんばってたからな」


「……すまん。才能という言葉だけで片づけるのは失礼だったな。

 嬢ちゃん、悪かった」


「ううん。気にしてないから大丈夫だよ」

そう言ってティナは優しく微笑む。


「ふぅ…それにしても今日ほど驚いた日はないな……。

 なんというか、驚きの次元が違う。

 これからはもう、ちょっとやそっとじゃ驚けないな……」

「そうだな。私もだ」

「私もです」

ギルベルトの言葉に激しく同意するギルドマスターとシノン。


「はぁーーーふぅぅーーー」

ここで一旦、ギルベルトは気分を落ち着かせるため大きく深呼吸。


「なぁ、嬢ちゃん。ちなみにだけど、念のため聞いておくぞ。

 確かユイトだったな、

 まさかユイトも嬢ちゃんと同じぐらい強いってことはないよな?」


「ユイトさんですか?

 ユイトさんが私と同じぐらいって、そんなわけないです」


「そ、そうだよな。

 もし”同じぐらい”って言われたらどうしようかと思ったぜ」

「はい。今の私ではユイトさんに手も足も出ません」

「だよな。そりゃそうだよな」


「………」


「はぁーーーーっ!?」

「なにぃーーーーーーーっ!?」

「えぇーーーーーーーーーーーーっ!?」


もう驚けないかもと言ったそばから驚くギルド職員たち。


「す、すまん、嬢ちゃん。ちょっと聞き間違えたかもしれん。

 もう一度お願いできるか?」


「はい。今の私ではユイトさんに手も足も出ません。

 どう頑張ってもユイトさんには勝てません」


「………」

固まるギルド職員たち。


「おいおいおいおい、一体どうなってんだ、お前らは!?

 本当なのか、それはっ!?」

「はい。もちろん本当です」

「………」


ここで興奮冷めやらぬギルベルトが、ユイトとティナに向け、とある頼み事。


「…なぁ、お前らにちょっと頼みたいことがある。

 少しだけでいい。お前たちの模擬戦を見せてくれないか?

 頼む。この通りだ」

2人に頭を下げるギルベルト。


「…まぁ俺は別に良いけど、ティナも大丈夫か?」

「うん、私も大丈夫だよ」


「じゃあ、ちょっとだけな」

「やってくれるのかっ!すまん、恩に着る!」


めちゃくちゃ嬉しそうなギルベルト。

やはり引退したとはいえ元冒険者。

圧倒的な力を前にして、なにやら血が騒ぐのだろう。


「それじゃあティナ。今回は放出系魔法はなしでいこう。

 訓練場を壊しちゃまずいからな」

「うん」


「あと衝撃波もまずいだろうから俺は剣を使わない。

 ティナの剣をひたすら躱す。それで行くぞ。

 けど、手加減はいらないからな。本気で来いよ!」

「うん、分かった!」


「じゃあ、誰か模擬戦開始の合図をしてくれるか?」

「は、はい、分かりました。それでは私が合図しますね」


ギルド職員が見守る中、訓練場中央へと移動するユイトとティナ。

2人は向き合い、シノンの合図を静かに待つ。


「それでは…模擬戦……開始っ!!」


シノンのかけ声とともに、ユイトとティナの模擬戦が始まった。

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