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第44話

「じゃあシノンさんに教えてもらった宿を見にいくか」

「うん!」


「まずは、この”エクセレントロイヤルパレス”ってところだな」

(名前からして何だか凄そうだな…)


そしてギルドを出発して歩くこと30分。

特に迷うことなく2人はエクセレントロイヤルパレス前へと到着。


「………」

目に映るその外観に呆気にとられるユイトとティナ。


「……よ、よーし。次に行こう」

「そ、そうだね……」


まさに読んで字のごとく。本当の王宮と言われも信じてしまうほどの豪華な建物。

出入りしている人は皆、住む世界が違いそうな人たちばかり。

こんな姿で入った日には、警備員に止められて、つまみ出されること間違いなし。

というわけで、ユイトとティナは残りの1軒に望みをかけ移動を開始。


「ウォータ―ヒール、ウォータ―ヒールっと。

 …おっ、あそこじゃないか?」


エクセレントロイヤルパレスを出発してからこれまた30分。

ユイトたちは無事ウォーターヒールへと到着。

こちらも立派な部類に入るのだろうが、先ほどのを見た後だと普通に見える。


「とりあえず中に入るか。値段と空きがあるか聞いてみよう」

「うん、そうだね」


ウォータ―ヒールの入り口をくぐり中へと入る。

中に入ってみると、そこは清潔感があり、豪華とはいかないまでも全体的に上品さがうかがえる。

若干の場違い感はあるものの、2人は気にせず受付まで進んでいく。


「いらっしゃいませ」

「泊まりたいんだけど、空きってあるかな。

 出来れば風呂がついてる部屋がいいんだけど」

「お風呂付きのお部屋ですね。

 それですと、結構お値段が高くなってしまいますが、よろしいですか?」

「ちなみに、いくらぐらいなんだ?」

「お風呂付きプランには2種類ございまして、

 1つはいつでもお風呂に入れるお湯使い放題プランです。

 こちらの場合、1泊あたり銀貨5枚になります」


(1泊5万か…)


「もう1つは、お部屋代とは別に、

 使ったお湯の分だけお湯代を支払うプランになります。

 こちらの場合、お部屋代が1泊あたり銀貨3枚と別途お湯代になります。

 お食事はどちらのプランも別料金になりますのでご了承ください」


(お湯は魔法で何とかなるし、2つ目のプランだな)

(けど、それでも森のほとり亭と比べたら10倍か…)

(まぁ大都市だし、日本でもそれくらいするか…)

(ここじゃさすがに、外で風呂作って入るってわけにもいかないしな…)


「じゃあ、お湯代が別のプランでお願いするよ」

「承知しました。それでは何泊のご予定ですか?」

「そうだな……とりあえず3カ月、90泊お願いするよ」

「きゅ、90泊ですか!?わ、分かりました。ちょっと計算しますね。

 お、お待ちください」


この反応。さすがにそんなに連泊する人はまずいないのだろう。


「お、お待たせしました。宿泊代は金貨2枚と小金貨7枚になります」


先ほどギルドでかなり稼いだので、これくらいなら懐はまったく痛くない。

日本円にして270万円もの大金をユイトはポケットの中からポンと出す。

これぞほんとのポケットマネー。


宿泊代を払い終えると宿の従業員が部屋の前まで案内してくれた。

これは中々のサービス。なんだか日本のホテルのようだ。


従業員が2人に挨拶を済ませ戻っていくと、2人はドアを開けて部屋へと入る。

そんな2人の目に映ったのは想像よりも広めの空間。

そしてなんとそこには、立派なベッドが2つ用意されていた。


この世界に来て初めて目にする本格的なベッド。

何というか感慨深いものがある。

といっても、ユイトの実家にベッドはない。


「ユイトさん、凄いよ!布団も枕もふっかふか!こんなの初めて!」

早速ベッドに寝転がるティナ。


「ははは。気持ちいいか?」

「うんっ!すっごく!」

「じゃあ今度時間あるときに、簡易宿用のベッドと布団でも買いに行くか?

 もちろん枕もな」

「ほんとっ!?やったーーっ!」


ティナはベッドの上で飛び跳ねて大喜び。

それを見たユイトは、ベッドが壊れないかハラハラドキドキ。


このあとユイトとティナはホテルの食堂で軽めの夕飯。

その後2人は、再び部屋へと戻った。


今日は街に入るための待ち時間やなんやらで、2人はちょっとお疲れモード。

ということで、この日はもう出歩かず、風呂に入って早めに休むことにした。


…その夜、冒険者ギルドにて。


1台の馬車が冒険者ギルド前に到着。

馬車から降りてきたのは、地方ギルドの会議に出席していたギルドマスターと上級ギルド職員ギルベルト。

2人はまだ明かりのついているギルドハウスへと入っていく。


「あっ、お帰りなさい。ギルドマスター、ギルベルトさん」


いつもなら店じまいしている時間に、せっせと働くギルド職員たち。

その姿にギルドマスターも上級職員ギルベルトも大いに驚く。


「一体どうしたんだ?こんな遅くまで。何かあったのか?」

「…んーーあったというか、なかったというか…」

「おいおい、どっちなんだ?」

「いえ、それが、事故とか事件とかではないんですけど…。

 説明するより見てもらった方が早いと思うのでこちらに来てもらえますか?」

「???」


シノンとミーアは、帰ってきたばかりの2人を素材解体場へと連れて行く。


「な、な、な、なんじゃこりゃーーーーーっ!?」


ギルドマスターとギルベルトの声が解体場に響き渡る。


「上位種までいるじゃないか!?魔獣暴走スタンピードでも起こったのか!?」

「いえ、違います」


「じゃあなんだ、大勢の冒険者パーティーでも押し寄せてきたのか?」

「それも違います」

「じゃあ、一体何なんだ?どうなったらこんなことになるんだ!?」


「実はですね、今日の昼頃、冒険者登録をしたいという

 10代半ばぐらいの少年と11歳の女の子がやってきたんです」

「そうそう。

 少年の方はかっこかわいい感じで、女の子の方はすんっごくかわいいの」

ミーアが口をはさむ。


「それで女の子の方は規定年齢を満たしてなかったので、そのことを伝えると、

 ギルベルトさんとの模擬戦を希望されまして。

 ただギルベルトさんが本日不在だったので、後日改めて来てもらうことに

 なったんです。

 ですが、所持金が心許ないということで素材だけ売らせて欲しいと」


「…まさかと思うが、これ全部なのか?」

「はい、そうです。まだまだあったみたいですけど、

 こちらが捌ききれないので、途中で止めてもらいました」

そう答えるのは素材買取担当のミーア。


「……し、信じられん。

 2人だけでってのもそうだが、そもそもこの量をどうやって運んだんだ?」

「本人曰く、魔法の袋みたいなものに収納しているって言ってました。

 実際に見てたんですが、何もない空間から次々と獣たちが出てきて、

 すっごくびっくりしました。解体作業中の皆さんも見てましたよ」

「魔法の袋?そんな魔道具、見たことも聞いたこともないぞ…」

ギルドマスターの言葉に、うんうんと頷くギルベルト。


「で、その2人はまだサザントリムにいるんだな?」

「はい。おそらくいると思います。

 お風呂付きの宿を教えて欲しいと言われたので、2軒ほど紹介しました。

 そのどちらかに泊っていると思います」

ギルドマスターの問いにシノンが答える。


「その2軒ってどことどこだ?」

「エクセレントロイヤルパレスとウォータ―ヒールです」

「はっ…?エクセレントロイヤルパレスを紹介したのか?」

「はい」

「10代半ばぐらいの少年と11歳の女の子にか?」

「はい」

「………。まぁ、ある意味探す手間が省けて助かったな」

「???」


「明日の朝一、ウォータ―ヒールまでその2人を迎えに行くよう

 誰か手配しておいてくれ。

 ちなみに2人の名前は聞いてるんだろ?」

「はい。少年がユイト・キサラギ、女の子がティナ・リネットと言ってました」

「よし。じゃあ明日2人がギルドに到着したら声をかけてくれ。頼んだぞ」


そう言い残し、ギルドマスターとギルベルトはギルドハウスへと戻っていった。


「…ねぇ、ミーア」

「どうしたの?」

「なんでギルドマスターは、2人がウォータ―ヒールに泊まってるって

 分かったんだろ?」

「………」

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