第40話
「じゃ、俺たちも行くか」
「うん!」
ウォーレンの町へと入っていくユイトとティナ。
「ティナ。ヤンバルさんの話だと、ここからサザントリムまでは、
店があるような町はもう無いらしいんだ。
せっかくだから、今日はこの町でゆっくりしていこう」
「うん、分かった!」
ユイトとティナが偶然立ち寄ったウォーレンの町。
そこはサザントリムに比較的近いということもあり、それなりに活気がある町だ。
人口もそこそこ多そうだ。
同じ町といってもカタルカの町に比べて断然大きい。
色んなものがありそうだ。
「ティナ。久々に町に来たんだ。何かしたいことってないのか?」
「したいこと?うーん…」
辺りをキョロキョロと見回すティナ。
「…えーっと、食べたことないものをいーっぱい食べてみたい!」
「おっ、いいな!じゃあいっぱい買い食いするか!
ご飯でも、デザートでも、お菓子でも何でもいいぞ。
食べてみておいしかったら、たくさん買って異空間に収納しておこう!」
「ほんとっ!?やったーっ!」
大はしゃぎのティナ。なんだかめちゃくちゃ嬉しそうだ。
「…っと、ごめんティナ。
その前に道中狩った獣を売りに行きたいんだけど、いいか?」
「うん!」
すぐに肉屋へと移動するユイトたち。
そこで狩った獣を売りさばき、たんまりと軍資金を調達。
「よーし、お金もたくさん手に入ったし、食べまくるぞーっ!!」
「はーいっ!!」
楽しそうに町を歩き、色んなものを喜んで食べるティナ。
そんなティナの姿を見てユイトは思った。
(ティナぐらいの年だったら普通はこんな感じだよな…)
(でも普段ティナは……。…ほんと感心する)
「どうしたの?ユイトさん」
「いや、ティナは偉いなって思ってさ。
ティナは子供なのに遊びもせず、苦しむ人を助けようと日々頑張ってる。
俺なんて子供のころは遊んでばかりだったからさ」
「そうなんだ。ユイトさんはどんなことをして遊んでたの?」
「そうだな…。よくやってたのはテレビゲームって言う、
この世界の技術では絶対に作れないような凄い装置を使った遊びかな。
他はトランプとかリバーシっていう、簡単な道具を使った遊びもやってたな。
単純な遊びなんだけど、これが結構面白くてさ。
実際にやってみるとよく分かるんだけどな」
「じゃあユイトさん、いつかその道具を作って一緒に遊ぼ?」
「そうだな。それでもし、ティナが面白いって思ったら、
この世界に広めてみても良いかもな」
「うん!じゃあ私、楽しみにしてるね!」
その後もユイトとティナは、食べ歩きをしつつ町を満喫。
すると、前方に武器屋らしきお店が現れた。
「武器屋か……」
武器屋を目にしてユイトは考えた。
ティナも大分、剣の扱いに慣れてきた。
そろそろ木剣ではなく、通常の剣で修行してもいい頃だ。
サザントリムの方が良い剣がありそうだが、その時はまた買い直せばいい。
獣や魔獣を売れば、お金の心配もないはずだ。
(…よし)
「ティナ、ちょっとそこの武器屋に寄ってもいいか?
良さそうな剣や防具があったら買っていこう。もちろんティナのだぞ」
「…えっ?ほんとにっ!?」
「あぁ」
「やったーーーっ!!」
武器を買うことに大喜びする少女。
なんというか、ちょっとシュール。
うきうき気分のティナは、もう居ても立っても居られない。
ティナはすぐにユイトの手を引き、武器屋の中へと入っていく。
「うわぁっ!」
店内に入ってみると、所狭しと武器や防具が置いてある。
お客もそれなりに入っているようだ。
この町を拠点に獣狩りなどをしている人たちだろうか。
「ねぇ、ユイトさん!早く見ようよ!!」
待ちきれないティナがユイトを急かす。
だが、ここで問題が1つ。
実はユイトは、武器や防具の良し悪しがさっぱり分からない。
生まれも育ちも平和な日本。そんなものとは無縁の世界で生きてきた。
この世界に来てからも、目にしたことがあるのは魔獣の森に転がっていた武器、防具ぐらい。
武器屋に入るのだって今日この時が初めてだ。
そんな超ド素人に、こんなにも楽しみにしているティナの武器、防具を選ぶ勇気は当然ない。
ということで、ここは素直に店の親父さんに聞くことにした。
「ちょっとすまない。
剣と防具を探してるんだけど、相談に乗ってもらえるか?」
「あぁもちろんだ。で、どんなのをお探しだい?」
「この子に合う剣と防具が欲しいんだ。
剣は長過ぎず、防具は動きを妨げないものがいい」
「…えっ!?このかわいいお嬢ちゃんのかい!?」
「あぁ、そうだ」
「本気で言ってんのか?」
「本気だ」
「冗談じゃなく?」
「もちろん」
「………」
(うん、そうなるよね…)
まさかの要望に驚きつつも、早速、ティナに合いそうな剣と防具を探し始めた親父さん。
その間ユイトとティナは、店に置いてある武器、防具を見て回る。
そして待つこと10分。
一通り探し終えた親父さんがユイトたちの元へと戻ってきた。
「すまん、待たせたな。
一応くまなく探しては見たが、お嬢ちゃんのサイズに合うものが
ほとんど無くてな。剣だとこの2本ぐらいだ。
1つは子供の訓練用。もう1つは小柄な女性剣士用だ。
訓練用の剣は、あくまで訓練用だから、あまりいい素材で作られていない。
まぁその分、安いけどな。
剣士用の剣は、女性向けということもあり、細身で軽めだ。
だが細身と言っても、良い素材が使われてるから耐久性はばっちりだ。
こっちは、ちょっとばかし値が張っちまうがな。
防具の方は悪い。
お嬢ちゃんに合いそうなサイズのは、探したけど見つからなかった。
もしどうしても必要ってんなら、一度サザントリムで探してみると良い。
あそこなら武器、防具屋もたくさんあるし、オーダーメイドで
作ってくれるところもあるはずだ」
「…そっか、分かった。まぁ、無いもんはしょうがないもんな。
じゃあ今回は剣だけ買わせてもらうよ。
そっちの女性剣士用の方を頼む」
「女性剣士用だな。そうすると、小金貨3枚になるけど大丈夫か?」
「あぁ問題ない。ついでに剣帯もつけて欲しいんだけど、剣帯はいくらだ?」
「剣帯の金はいい。まけとくぜ。合わせて小金貨3枚だ」
「いいのか?悪いな」
いつものようにポケットからお金を取り出し支払うユイト。
「じゃあ、小金貨3枚だ」
「ちょうどだな。確かに受け取ったぜ。ほらよ」
親父さんから手渡された真新しい剣と剣帯。
ユイトが手にするその剣と剣帯をティナは目を輝かせて眺めている。
その様子はまるで、ご飯を前にした子犬のよう。
待ちきれない感がいっぱいだ。
「ははは。ほら、ティナのだぞ」
本当に嬉しそうな表情を浮かべ、差し出された剣を受け取るティナ。
そして、子供がプレゼントの箱をすぐ開けるかのように、ティナはすぐさまその剣を身に着けた。
「ユイトさん、どうかな?変じゃないかな?」
「うん。良く似合ってる。サイズもぴったりだ!」
「良かった!嬉しい!
どうもありがとう、ユイトさん!私、大切にするね!!」
満面の笑みで喜ぶティナ。
ユイトはティナのその笑顔を見れただけでも、剣を買って良かったと心からそう思った。
そしてこの後、ユイトとティナは食べ歩きを再開。
日頃修行に明け暮れるティナにとっては、束の間の休息。
この日2人は1日中、ウォーレンの町を楽しんだ。
そして翌日。
「じゃあティナ。出発するか。
せっかくだし、今日からは昨日買った剣で訓練しよう。
あと徐々に体術の訓練もしてくからな。
サザントリムに着くまで頑張ろうな!」
「はいっ!」
そしてウォーレンの町を出発してから、およそ1カ月後。
ユイトとティナはついに目的地サザントリムへと到着した。




