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第218話

その日の夜。


「ねぇ、ユイトさん。世界中立冒険者ギルドの名前どうするの?」

「あーそれなんだけどさ、実は付けたい名前があるんだよな。

 付けるならこれしかないってのがさ」

「えっ、どんな名前?」

「それは……」


次の日、ユイトたちは終末の森 中心部へと向かっていた。

道中、そんなユイトたちの目に映るのは、延々と広がる荒野と化した終末の森。


「グレンドラ……あいつ一体どれだけ派手にやったんだ…」

「ほんと…ここに国が作れそう…」


その後、一旦はこれまでと変わらぬ終末の森の景色に戻るも、中心に近づくと再び見渡す限りの荒野が広がっていた。


「…えっ?ここって終末の森の中心付近だよね?」

「あぁ。なんでここも荒野なんだ?」

「もしかしてユイトさん、道間違えた?」

「いや、ここで合ってる。グレンドラの気配もあるしな。

 うーん…グレンドラだったらなんか知ってるかもな。

 取り敢えずグレンドラの所に行ってみよう」

「うん、そうだね」


不思議に思いつつも、そのまま更地と化した終末の森 中心部を進んでいくユイトたち。

すると程なくして、荒野の真ん中でまったりと佇むグレンドラを発見。


「…おっ、いたいた」


タッタッタッタッタッ


「よぉ、グレンドラ」

「…んっ、ユイトか。どうした?」

「いや、ちょっとお前に相談事があってさ」

「ほぅ、我に相談か。

 よいぞよいぞ。何でも相談するがよい。がっはっはっはっは」

「まぁ、相談っていうよりもお願いなんだけどさ。実はさ…」


王たちが発案した世界中立冒険者ギルドの設立、そしてそこのギルドマスターを任されたことについて説明するユイト。


「…なるほど。ユイトとティナをトップに据える組織か。

 王たちも粋なことをしよる」


「でさ、俺がそのギルドの名前を決めなきゃなんないんだよな。

 で、何にしようか考えてるときに思ったんだ。

 世界中立冒険者ギルドは終末の森跡地に作られる。お前もこの森に住んでる。

 そして、この世界での俺の生活はお前との出会いから始まった。

 だから俺は、世界中立冒険者ギルドに”グレンドラ”って名前を付けたいんだ。

 それでお前に名前を使わせてもらう許可をもらいに来たんだよ」


「ほぅ、我の名を冠する組織か。良いではないか。

 そもそも、この名はユイトが我に与えてくれたものだ。

 良いぞ良いぞ、好きに使え。

 ついでに我がお主らの組織の後ろ盾になってやろう」


「そいつぁ心強いな」


「ふっ。だがお主らが居れば、我の出番などないだろうがな」


「いやいや、お前はここで狂暴な魔獣の見張りをしててくれよ。

 って、ひょっとしてこの辺りはもう魔獣はいないのか?

 つーか、どうしてこんなことになってんだ?

 ここで魔竜と戦ったわけじゃないんだろ?」


「…ユイトよ。そのことでお主に謝らねばならん事がある。

 魔竜の元へと向かう際、勢い余ってこの辺り一帯を向き飛ばしてしまったのだ。

 奴の気配を感じて気分が昂ってしまってな。

 その時、お主とともにやってきたお主の世界の建物を消滅させてしまったのだ。

 数少ないお主の思い出の物だったのであろう?済まなかった」


申し訳なさそうに謝るグレンドラ。

だが、ユイトの顔は晴れやかだ。


「いいんだ、気にすんな。

 俺はもう、この世界の住人だ。思い出にすがるのはとうの昔に卒業した。

 それに…今はそんな物とは比べ物になんないくらい大切なものが

 俺にはあるからな」


「ほぅ、それは一体何なのだ?」


ティナを見つめるユイト。

「もちろんティナだ。

 …実はさ、俺たち結婚するんだ」


「なんとっ!それはめでたいではないか!!

 そうかそうか、お主らが…。

 だが我はいつかお主たちは番になるであろうと、ずっと思っておったぞ。

 どうだ、さすが我であろう。がっはっはっはっは」


じぃーーーーーーーー

ユイトの視線がグレンドラに突き刺さる。


「…ほ、ほんとであるぞ。な、何せ我は神獣であるからな」

まったく動揺を隠せていないグレンドラ。


「しかし、実にめでたいことだ。

 ユイト、ティナよ。お主たちの子が生まれたら我のところに連れて来い。

 我の背に乗せて大空を駆ってやろう」


「ほんとかっ!そりゃあいいな!絶対連れてくるっ!!」

「うむ。楽しみに待っておるぞ」


「よし。それじゃあ用事も済んだし、そろそろ行くよ。

 悪いな、ゆっくりできなくて。名前ありがとな!」

「うむ。たまには顔を見せに来い」

「あぁ、分かった。じゃあな!」

「グレンドラさん、また来ますね!」


無事、グレンドラから名前を使用する許可をもらったユイトたち。

久々に終末の森中心部に戻ってきたのも束の間、すぐに今度はリーンプエル王城に向け、終末の森を駆けていく。


そしてその数日後、ユイトたちはリーンプエル王城へと到着。

決定した世界中立冒険者ギルドの名前を伝えるべく、すぐに元首たちの元へと向かった。


「グレンドラ?……ま、まさかその名は…」

ユイトが発した思いもよらぬ名に、元首たちは驚きを隠せない。


「はい、古代竜グレンドラの名から取りました。

 あいつにはちゃんと許可をもらってきたから大丈夫ですよ」


「……これはとんでもないな。

 まさか古代竜様の名を冠するとは…」


おかしな名前で驚くことはなかったが、別の意味で大いに驚くことになった元首たちであった。


そしてその2日後。

世界全13か国の元首たちの名のもと、リーンプエルの地で繰り広げられた世界の行く末をかけた戦いと、世界中立冒険者ギルド”グレンドラ”の設立に関する情報が、全世界に向け発信された。

人々はそのあまりに衝撃的な内容に、驚き、恐怖し、そして安堵した。


その翌日。

リーンプエル王国 王都エミリス 王城前。

その日、世界への報告を済ませた各国元首たちが、帰国の途に就こうとしていた。


「ひとまずは、この場はこれでお開きとしよう。

 次に皆が集まるのは、ユイト殿とティナ殿の結婚式だな。

 それではユイト殿、ティナ殿。楽しみにしておるぞ」

「はい」


「ユイトさん、ティナさん。日取りが決まったらすぐに教えてくださいね」

「ユイト様、ティナ様。

 なにかお手伝いできることがあれば何でもおっしゃってください」


「あぁ、分かった。そうさせてもらうよ」

「みなさん、どうもありがとうございます。

 予定が決まったらすぐに連絡しますね」


「それではティナ。くれぐれも体に気を付けるのだぞ」

「はい。おじい様もどうかお元気で」


「ユイト殿、ティナを頼んだぞ」

「はい、任せてください」


リーンプエルに来た時には誰も想像していなかった出来事と結末。

各国元首たちは、これから訪れる新たな世界への期待と想いを胸に、リーンプエル王国を後にした。


「よーし、じゃあやるかー!!」

元首たちの見送りを終えたユイトが気合いを入れる。


「なぁティナ、どうせやるなら、俺たち好みの街にしようぜ!」

「うんっ!じゃあ私、色んな食べ物屋さんを集めたい!」

「はははっ。じゃあ俺は大浴場だな。

 あと、俺の世界にあった遊びも流行らせよう!随分昔にティナに話したやつな」

「そう言えば結局まだ遊べてなかったもんね。

 あっ、あとね私、精霊界とかリシラに似た場所も作りたい!!」

「おっ!いいなそれ!!」

「ふふっ。でしょ?」


「あーなんか、これはこれで楽しくなってきた!」

「私も!!」

「それじゃあまずは、手伝いがくる前に整地して防壁でも作っておくか。

 よーし、やるぞぉーーーっ!!」


それからは毎日、ユイトとティナは魔法を駆使して広大な土地の整地と防壁作り。

ユキは皆の安全を確保するべく、近くに潜む魔獣狩りに勤しんだ。


そして整地と防壁作りが一段落してからしばらくすると、各国から続々と職人やら何やらが集まり、街づくりが始まった。

理想の街を想像しながら、彼らに指示を出していくユイトとティナ。

こうして順調に世界中立冒険者ギルド”グレンドラ”の街づくりが進んでいく。


……そして、本格的に街作りが始まってから数か月後。


その頃には、世界中立冒険者ギルド”グレンドラ”のギルドハウスも完成。

ギルドの紋章も決まり、そこには1体の竜と1人の天使が描かれていた。

ちなみにギルドハウスは、終末の森の魔獣を牽制する意味も込め、もっとも終末の森に近い場所に建てられた。


他にも、交易路の要となる、広く立派な街道が領地内に整備されていた。

そしてその街道沿いには宿屋、商店、食堂用の土地を準備。

各国からの出店希望者を受け入れる準備まで整っていた。


その後も順調に街づくりは進み、日に日にユイトとティナが思い描く、理想の街が出来上がっていく。

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