表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
207/221

第207話

「ユイトさん、あの竜ってもしかして…」

「あぁ、きっとそうだろうな」

巨大な魔竜を前にしても、少しもひるむことのないユイトとティナ。


「また貴様らかぁっ!

 何度も何度も私の邪魔をしおってからにっ!!

 今日という今日は絶対に許さんっ!!

 ここで貴様らを消し去ってくれるわーっ!!」

ユイトたちを前に激高するレイドス。


そんな中、ユイトが懐かしい気配を感じ取る。

「はははっ!あいつも来るのか」


「…貴様っ、一体何を言っておるのだっ!?」


ユイトが顔を向けるのは東の空。

その東の空より、巨大な何かが猛烈な勢いで近づいてくる。


「…んっ?何だあれは?」

徐々に大きくなっていくその姿。

「…な、何っ!?竜だとっ!?

 私は一体しか喚んでおらんぞっ!?一体どうなっている!?」


予期せぬもう一体の竜の登場に慌てるレイドス。

そしてそれは、世界連合軍の兵士たちも同様だった。


「…りゅ、竜だーーっ!!竜がもう一体だーーーーっ!!」

「そんな……竜がもう一体だなんて……」

新たな竜の登場に、激しく動揺する世界連合軍。


だが、そんなことはお構いなしに、どんどんと近づいてくる巨大な竜。

そしてついには、世界連合軍の真上へと辿り着き、ユイトの隣へと降り立った。

その巨躯、その圧倒的な存在感に戦慄を覚える世界連合軍。


その瞬間、ユリウスの叫び声が辺りに響き渡った。

「……こ、こ、古代竜様ぁぁっ!!!」


ユリウスの叫び声に一同衝撃が走る。

「…えっ!?」

「こ、古代竜様っ!?」

「…ま、まさか……」


レイドスもまた、届いたユリウスの声に耳を疑った。

「…な、なんだとっ!?古代竜だとぉっ!!?」


そんな驚く周囲をよそに、再会の挨拶を交わすユイトたち。


「よぉ、グレンドラ。久しぶりだな」

「お久しぶりです、グレンドラさん」


「うむ。久しいな」


「つーか、お前、外に出れたんだな。

 お前が外出てるとこなんて初めて見たぞ」

「ふっ。懐かしい気配を感じたものだからな」

「…やっぱそうか」


グレンドラの鋭い眼光が魔竜へと向けられる。


「ユイトよ、奴は我に譲れ。奴との因縁、今日こそ終わらせる」

「分かった。じゃあ、あいつはお前に任せる」

「すまぬな」

「いや、気にすんな。こっちもその方が助かるしな。

 けど、どっか遠くでやってくれよ。ここだと、みんな巻き添えを食らうからな」

「うむ。承知した」


「つーか、勝てるんだろうな?」

「ふっ、愚問だな。お主こそどうなのだ?」

「それこそ愚問だな」

「そうか。がっはっはっはっは。ではユイトよ、また後で会おうぞ」

「あぁ、ちゃちゃっと終わらせてな」


グレンドラと会話するユイトを眺める各国元首たち。


「古代竜様と…話をしておるのか…?」

ノイブリッツ王がつぶやく。


「そのようだな。

 なんでも、ユイト殿の友らしいからな。古代竜様は」

「なにっ!?古代竜様が友だとっ!?」


ゼルマ王の言葉に驚愕する元首たち。

そして同時に絶望という闇の中に希望の灯がともる。

「…では……それでは古代竜様は、我らを助けに来てくれたのか……」

元首たちがグレンドラとユイトを静かに見つめる。


「魔竜よ。5000年前の続きだ。

 貴様との決着、今日こそつけてやる。

 我について来い。貴様も邪魔されたくはないだろう?」

「ぐはははははは。いいだろう、望むところだ。

 今日こそ貴様を消し去ってくれる」


直後、2体の巨竜は巨大な翼を広げ、終末の森方向へと飛び去った。


その様子を、どこか信じられないといった表情で眺める世界連合軍の兵士たち。

「古代竜様は一体どこへ?」

「おそらく、我々に被害を出さないよう、どこか遠くに行かれたんだろう」


一方、レイドス。


「古代竜とはさすがに焦ったぞ。

 だが同じ竜だ。魔竜に任せておけば問題あるまい。


 思わぬ邪魔が入ったが、先ほどの続きだ。

 貴様らなど、称号の力が解放された今の私の敵ではないっ!

 見えるだろう、この無数の悪魔たちが。

 これが私の力だっ!これが世界の王となるべき私の力だっ!

 思い知るがいい。私の前では己がいかに矮小な存在かをっ!

 そして絶望しながら死んでゆけっ!!」


意気揚々と語るレイドス。

そんなレイドスに対し、怒りの表情を浮かべたユイトが口を開く。


「…お前のせいで、どれだけ罪なき人々が苦しんだか。

 どれだけ罪なき人々の命が失われたか」


  『ティナが…死ぬ…?』


「…俺もお前のせいで地獄を見た。

 あの絶望感…まじで生きた心地がしなかった」

沸々と怒りがこみ上げ、握った拳に力が入る。

「お前だけは絶対に許さん。ここがお前の人生の終点だっ」


睨み合うユイトとレイドス。

嵐の前の静けさともいうべき静寂が辺りを包み込む。


「一体…どうなるんだ…」

息を飲んでユイトたちを見守る世界連合軍。


「あの人らに何とかできなきゃ、世界は終わりだな」

そう言うはランクス。

「ユイト様とティナ様なら大丈夫だ。あの方たちが負ける姿など想像できない」

そう返すはユリウス。


「確かにそうだな。

 どちらにせよ、これからは俺たちは足手まといだ。

 ここであの人らの戦いを見てるしかない」


そんなランクスとユリウスの会話に世界連合軍の兵士たちが息を飲む。

「SSランク冒険者にそこまで言わせるのか…。彼らは一体…」


その時、レイドスと睨み合うユイトが後ろを振り向き手を伸ばした。

直後、世界連合軍を強固な結界が覆った。


「…こ、これはっ!?」

突如できた結界に驚く世界連合軍の兵士、そして元首たち。


「みんな、絶対にそこから出るなよ。

 巻き添えにしちゃうからな」


世界連合軍に向け伸ばされたユイトの右腕。

その腕には、いつも身につけている腕輪は無かった。


「腕輪が…無い…」

それを見たランクスから思わず声が漏れる。


「腕輪?腕輪がどうかしたのか?」

ユリウスが尋ねる。


「いつもあの人らは両腕に腕輪をしてた。

 あの人らの力を抑え込む腕輪をな」


「力を?」


「あぁ。俺は一度だけその腕輪に触れたことがある。

 立ち上がることさえ出来なかった。

 …いや、違うな。指一本動かすことさえ出来なかった」


「では…今のユイト様とティナ様は、力を解放している状態だと…」


「はっ。こんな時だってのにワクワクしちまうぜ。

 あの腕輪を外した2人の力が見れる。

 一体どうなっちまうんだ…想像もつかねぇよ」

冒険者としてのランクスの血が騒ぎ出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ