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第203話

王都エミリス出発後、ひたすら南下を続けてきた世界連合軍と各国元首たち。

その日、彼らはついに目的の地へと辿り着いた。


「…あれが悪魔……この世界にとっての脅威」


そんな彼らの目に映ったのは、数多の異形の者たち。

そしてそれらと必死に戦うリーンプエル王国の兵士たち。

その周りには身動き一つしない、数え切れないほどのリーンプエル王国の兵士たちが横たわっていた。


「…よくも……よくも我が国の兵士たちをぉーーっ!!」

その光景にノイブリッツ王が怒りに震える。


世界連合軍の兵士および冒険者たちは、悪魔たちと必死に戦うリーンプエルの兵士たちを援護すべく、すぐさま臨戦態勢に入る。


と、その時、1人の男の声が辺りに響いた。


「やめろ、お前たち」


その瞬間、悪魔たちが一斉に攻撃の手を止めた。

そしてうごめく悪魔の群れの中から、1人の男がゆっくりとその姿を現した。


「…やはりお主か…レイドス」

その姿を見た瞬間、ゼルマ王がつぶやいた。


「あれが…滅びし国ゼツアの王レイドス…」


「これはこれは滅びゆく世界の王たちよ、お出迎えご苦労。

 しかし遅かったではないか。待ちくたびれたぞ。

 ゴミどもで時間を潰しておったが、そろそろ飽きてきたところだったわ」


「貴っ様ぁーっ!ゴミだとっ!!」

レイドスの言葉に激高するノイブリッツ王。


「何をそんなに怒っているのだ?私は事実を言ったまでだ。

 ゴミはどこまでいってもゴミだろう?

 さしずめ貴様はゴミの王と言ったところか。くはははははっ!」


レイドスの言葉に我を忘れ、今にも飛び出していきそうなノイブリッツ王を皆が必死に制止する。

そんなノイブリッツ王に代わり、ゼルマ王がレイドスに問いかける。


「レイドスよ。お主の目的は一体何だ?

 こんなことをして一体何になる?」


「くっくっくっく。本気で言っているのか?ゼルマよ。

 そんなこと決まっているであろう?

 この私を…偉大なるこの私を認めなかったこの世界、そんな世界など必要ない。

 だから私がこの手で消し去ってやろうというのだ」


「…国を追われた復讐か?」


「復讐?何を言っている。

 それでは私がまるで小物のように聞こえるではないか。

 私のような崇高な人間が復讐などするわけがなかろう。

 私は正してやるのだよ。この間違った世界を」


「…お主、一体何を言っている?」


「何を言っているかだと?

 貴様たちに私の苦しみが分かるか?

 王であるべき私が、飢えに苦しみ、道端の草を食べ、水たまりの水をすする。

 獣たちに怯え、寒さに凍え、ろくに寝ることさえ出来ない。

 どれだけの苦痛と屈辱を味わったことか。

 そしてそんな私に見向きもせず、助けようともしないこの世界。

 そんな世界が正しいわけがないだろう?

 だから私がこの手で正してやろうというのだ。この間違った世界をな」


「お主、一体何を?

 そうなったのも全て自分が蒔いた種。自業自得であろう?」


「黙れっ!!

 私は王だっ!選ばれし人間だっ!民の上に立ち、国の頂点に立つのが私だっ!

 下にいる者は、頂点に立つ私を支えるために存在する。

 それが下にいる者の義務であり、それこそが奴らの生きる価値であろう。

 それがこともあろうに反乱だと?ふざけるなっ!!」


「………。本気で言っているのか?」


「当たり前だっ!!

 そんなことも理解できないとは、愚かしいな、ゼルマよ。


 国を追われた私は、再びあるべき地位に舞い戻るため必死に生きた。

 耐えがたいほどの屈辱に必死に耐え続けたのだ。この私がだぞっ!!

 私は、崇高なる私をそのような目に合わせたこの世界を憎んだ。

 この世界に生きる全ての者たちを憎んだ。

 憎くて憎くて、それこそ頭がおかしくなるほどに。

 起きていても夢の中でも、考えることは生きることと憎むことだけだった。


 そしてそれも限界に達したある日、私はついに目覚めたのだよ。

 私は称号者になった。神が私を認めたのだ。

 私は間違ってなどいなかったのだ。

 そして私は悟った。

 この力でこの間違った世界を浄化し、新たな世界を創れと言っているのだと。


 私は、世界の頂点に立つべき存在。

 私は、この世界を終わらせ、新たな世界を創り、その世界の王となる。

 語り継がれるであろう新たな王の伝説。

 その1ページ目として、まずはお前たち、

 間違った世界の王たちを皆殺しにすると決めたのだ。

 そして世界は知ることになるだろう。私の偉大さを、そして自らの過ちを。

 ふふ、ふははは、ふはははははははははっ!!」


「…狂っておる」


常軌を逸した異常ともいうべきレイドスの思想、そしてその言葉に、各国元首たちは戦慄を覚える。


「だが、安心しろ」

レイドスが続ける。


「貴様らはすぐには殺さん。

 私が受けた屈辱、苦しみ、絶望。

 貴様らにも同じものを味わわせてやる。殺すのはそれからだ」


「………。

 これ以上、話をしても無駄なようだな。

 レイドスよ、1つだけ言っておく。

 世界は決して貴様を認めん。

 それはこの世界が間違っているからではない。貴様が間違っているからだ」


「ほざけ」


そして、ついに悪魔との激しい戦いの火蓋が切って落とされた。

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