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第202話

「…だが、これから我々が戦う相手には、力が解放された称号者がいるのだろう?

 その2人がいたからと言って何とかなるものなのか?」


「おそらくだが、それは大丈夫であろう」

「…一体どういうことだ?ゼルマ殿」


「称号者がいるのは何も敵だけではないということだ。

 我らの中にも称号者はいる」

「…なんとっ!?それは、まことなのかっ!?」

ノイブリッツ王他、何人もの元首たちが同時に驚きの声を上げる。


「うむ。我が孫、ティナもその1人。

 そして…そこにおられるステラ殿もまた、称号者だ」

「…なっ!?」

再び驚きの声が響く会議室。


「それは本当なのかっ!?ステラ殿っ!?」

「はい。ゼルマ殿が言われた通りです。

 ただ、私の力は守りに特化したものなので、敵を打ち倒すことはできませんが」


「……し、信じられん。

 まさか、こんな身近に称号者がいようとは…」


ゼルマ王が続ける。

「だが、私が大丈夫だろうといった理由はそれだけではない」

「…まだ何かあるというのか?」


「うむ。先ほどステラ殿が言われたユイト殿。

 彼の力は、称号者であるティナの力をも遥かに凌ぐ」

「馬鹿なっ!?称号者の力を凌ぐだとっ!?

 そんなことが本当にあり得るのかっ!?」


「それがあり得るのだよ、ノイブリッツ殿」

驚くノイブリッツ王に向け、ユークリッドⅢ世が口を開く。

「彼のあの力はもはや人間のそれではない」


エギザエシム帝国 皇帝ユグノースもすぐ後に続く。

「ノイブリッツ殿も知っているであろう。

 3年前、エギザエシム帝国で起こった出来事を。

 当時、その軍事力と思想ゆえ、世界の脅威であったエギザエシム帝国。

 その世界最大の軍事国家エギザエシム帝国は、

 一夜にしてその力の全てを失った」


「…ま、まさか」


「そうだ。世界最大の軍事国家を一瞬で、

 それもたった1人で壊滅させた者こそ、そのユイト殿だ」


  『決して判断を誤るなよ、エギザエシム帝国の様になりたくなかったらな』

「あの時言っていたことは本当だったのか…」

ザッテラ連合国代表ネストールの額から汗が流れ落ちる。


「我々が戦わねばならん相手は、悪魔を従える称号者。

 確かに脅威以外の何物でもない。

 だが、我々にも心強き仲間がいる。何も悲観することはない。


 我々は民たちを導く者として、何としてもこの世界を、

 そして未来へとつながる大切な命を守らねばならん。

 皆、頼む、どうか協力してくれ」


ゼルマ王の言葉に一斉に頷く元首たち。

「承知した。必ずや我らの力でこの世界を守ってみせよう」

全世界の元首たちの心が一つになった瞬間だった。


「では、今後に向けての具体的な話を始めるとしよう」


バタバタバタバタバタ

リーンプエル王城内に響く慌ただしい足音。


円卓を囲む元首たちが本格的な会議を始めようとしたまさにその時、会議室の扉が勢いよく開いた。


バタンっ!!


「ノイブリッツ陛下っ!!至急ご報告いたしますっ!!

 エミリス南方、終末の森方面から多数の異形の者たちが我が国に侵攻。

 兵たちが交戦中でありますが、極めて劣勢」


「なんだとっ!!?」

一斉に立ち上がる元首たち。


「異形の者…まさかレイドスかっ!?

 なぜこのタイミングで奴らが来るのだっ!?

 この会議は極秘のはずだろうっ!?」


「まさか…」

ガナード王の頭に1つの可能性がよぎる。

「まさか私が送った書簡が奴の手に…。すまぬ、私の落ち度だ」

皆に向かい頭を下げるガナード王。


「顔を上げられよ、ガナード殿。何もガナード殿のせいではなかろう。

 それよりも今を何とかせねば…。

 だが一体どうすればよいのだ?まだ、何も決まっておらんというのに…」


その場にいる者、誰一人として予想もしていなかったまさかの事態。

さすがの元首たちの顔にも焦りの表情が色濃く浮かぶ。


「陛下っ!異形の者たちはかなりの数とのことです。

 いずれここエミリスにも到達するでしょう。

 皆様方はすぐにご避難くださいっ!」


兵士が言いたいことは分かる。

だが、守るべき民を置いて真っ先に君主が逃げ出すなどあってはならぬこと。

しばし沈黙の時間が流れる会議室。


……そして、その沈黙を破ったのはステラだった。


「皆様は、どうか民たちとともにご避難ください。

 私は戦場へと向かいます」


「…しかし、ステラ殿」


「ユイトさんとティナさんがいない今、

 この地を守れる可能性があるのは私の称号の力だけです。

 私が何としてでも食い止めてみせます。

 その間に、皆様は民たちとともにどうかご避難ください」


守りに特化した称号者であるステラ。

守ることは出来ても悪魔を打ち滅ぼすことは出来ない。

そして、その守りの力も永遠に続くものでもない。

ステラはそのことを十二分に理解していた。

しかも多数の悪魔が相手ともなれば、命を落とす可能性は極めて高い。

それは、命を懸けて皆を守るという、そんなステラの覚悟の言葉だった。


「…では、私も行こう。

 ステラ殿だけにその責を押し付けることなどできん」

「私もともに向かいます」


「ゼルマ殿…、イーファ殿…」


「私も行くぞ。元はと言えば私の失態が招いた結果。

 それにグレア・ネデアは戦士の国だ。

 その頂に立つ者が逃げては、民たちに示しがつかん」


「ガナード殿…」


「…そうだな。

 万が一ステラ殿が突破されれば、どこに逃げても結局は同じであろう。

 それに我々は先ほど誓ったではないか。我々の力でこの世界を守り抜くと」


「皆さん…」


「想定よりも随分と早くはなってしまったが、

 遅かれ早かれ奴らとは戦うことになっていたのだ。

 幸いここには、各国の精鋭戦士たちが集結している。

 考えようによっては、今こそチャンスとも言えよう。

 見せてやろうではないか、我々の力をっ!

 そして何としてでも、我々の手でリーンプエルを、この世界を守るのだっ!!」


風雲急を告げるリーンプエル王城、そして王都エミリス。

兵士たちは出立に向け、準備を急ぐ。

そして文官たちは、民たちへの避難の呼び掛けに奔走した。


そして、各国元首たちの命が下ってからおよそ30分後。

各国の精鋭たちがリーンプエル王城前に集結。

ここに、レイドス並びに悪魔たちを迎え撃つべく、世界連合軍が結成された。

その世界連合軍の前に並び立つは世界13国の元首たち。

その代表としてリーンプエル王国 国王ノイブリッツが、兵士、そして冒険者たちに向け言葉を贈る。


「よくぞ、集まってくれた。世界の精鋭戦士たちよ。

 すでに聞いていると思うが、我が国南方より、異形の者たちが攻め入ってきた。

 その者たちは、この世界にとって脅威となり得る危険な存在だ。

 だがここには、たゆまぬ鍛錬を続けてきた屈強な戦士たちがいる。

 我々の安寧を脅かす者を打ち砕くことの出来る、各国の精鋭たちがいる。

 戦士たちよっ!見せてやろうではないかっ、我々の力をっ!!」


「おぉぉーーーーーーっ!!」


「世界を救おうではないかっ!我々の手でっ!!」


「おぉぉーーーーーーっ!!」


「敵はここより南方、終末の森すぐ近く。

 ゆくぞーーーっ!!皆の者ーーーーーーっ!!!」


「おぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!!」


ノイブリッツ王に鼓舞された世界連合軍が雄叫びを上げる。


そしてその後すぐ、世界13国の元首たちと世界連合軍はエミリスを出発。

悪魔たちを討ち滅ぼすべく、南方へと急いだ。

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