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第198話

奇跡ともいえる経験と出会いを経て、遺跡の外へと出てきたユイトたち。


「よーし、じゃあ行くかー!」

ユイトたちは気持ちも新たにリーンプエル王国 王都エミリスをめざして旅を再開。


その道中…


「もう少しで、久しぶりにみんなに会えるね!」

「そうだな」

その直後、急にユイトが黙り込む。


「……なぁティナ、みんなに会うのって久しぶりだったっけ?」

「…え?」

「いや、確かに久しぶりなんだけどさ、現代でも久しぶりだったっけ?

 過去にいた時間が長すぎて、なんだかよく分かんなくなってきた」

「言われてみれば確かに…」


2年前の記憶を頑張ってたどるユイトとティナ。


「えーっと……確か、ブレサリーツでイーファ様とラナさんにお礼を言って、

 その後ガデラでジーク君の大会優勝のお祝いをしたんだったよね?」

「あーそういやそうだったな。

 で、そのまま少しの間ガデラにいて、それから出発。

 その途中で遺跡を見つけた…と」


「そっか…。じゃあ、イーファ様とは少し前に会ってるってことだね」

「そういうことになるな」


「うん、だんだん思い出してきた」

あーだったよね、こうだったよねとつい最近の昔話?に花が咲く。


「…でもやっぱり、過去に行ってたなんて信じられないよね。

 まさか夢ってことはないよね?」

「まぁ、気持ちは分かるけどさ、さすがにそれはないだろ。

 俺とティナが同じ世界にいて、同じ経験をして、

 しかも同じ記憶まで持ってるんだからな」


「そうだよね…。

 でも、そんな現実みたいな夢が本当にあったらいいよね。

 そしたら夢の中でもずっとユイトさんと一緒にいられるのに」

「あぁ…ほんとにな」


「……えっ?」

「あっ…」


「ユイトさん、今のって!?」


「ティナ!先を急ぐぞーっ!!」

「ちょっとユイトさんっ!待ってーーーっ!!」


…それから数日後。


「なんか見えてきたな」

「町かな?」

「そうっぽいな。ちょっと寄ってくか?」

「うん!」


そこは獣人国の街ガデラとリーンプエル王国 王都エミリスのちょうど真ん中にある町メロード。

大きくもなく小さくもなく、ごく普通の一般的な町。

そのメロードの町にユイトとティナが入っていく。


「なんだか随分と騒がしいね」

「そうだな。祭りでもあんのかな?」


町に入ったばかりの2人の目に、興奮気味にどこかに向かって走っていく町人たちの姿が映る。


「…ちょっと聞いてみるか」

するとユイトがそんな町人の1人をつかまえる。


「ちょっとすまない。

 俺たち初めてこの町に来たんだけど、今日は何か祭りでもあんのか?」


「祭り?違う違う。

 今この町に”無名アンネームド”っていう凄い冒険者が来てるらしいんだ」

「…えっ?”無名アンネームド”!?」


「そうだ、”無名アンネームド”。

 ひょっとしてあんたら”無名アンネームド”のこと知らないのか?」

ユイトとティナの冒険者プレートに刻まれた”無名アンネームド”の文字に全く気付かず話を続ける町人。


「”無名アンネームド”っていやぁ、今やそこら中で噂されてる冒険者パーティーだ。

 あんたらも、3年前にエギザエシム帝国の軍隊が

 壊滅したって話ぐらい聞いたことあるだろ?

 なんでも噂じゃ、”無名アンネームド”がそれをやったって話だぜ。

 しかもだ。聞いて驚け。”無名アンネームド”は、たった2人だけのパーティーって話だ。

 まったく、とんでもねぇよな。

 たった2人だけで、あのエギザエシム帝国をつぶしちまうんだからな」


「な、なるほど…」


「さらにだ。

 あんたらバーヴァルド帝国で開催される大武闘大会って知ってるか?」


「まぁ、一応…」


「そうか、知ってるか。

 でだ。2年前のその大会に、その”無名アンネームド”の2人が出たらしいんだ。

 そこでなんと、大会3連覇中のSランク冒険者を

 けちょんけちょんにのしちまったらしいぜ」


「そ、そうなんだ…」


「それで決勝戦はなんと”無名アンネームド”の2人が激突。

 凄かったらしいぜ。

 今やバーヴァルドでは、神々が参加した大会っつって、伝説になってるらしい」


「ほ、ほぅ…」


「他にも色々話はあるらしいが、

 まっ、とにかくとんでもなく凄い冒険者ってことだな。

 で、不思議なことにそんなに凄いのになぜか冒険者ランクはFランク。

 そして神出鬼没で中々会うこともできない。

 そこがまたいいよな。ミステリアスでさ。


 で、そんな”無名アンネームド”が今この町に来てる。

 そりゃ騒ぎにもなるってもんだろ?

 あんたらは運がいいぜ。あんたらも後で見に行ってみるといい。

 じゃあ、俺は行ってくるぜ!」


そう言って、本物の”無名アンネームド”からどんどんと遠ざかっていく町人。


「………」

顔を見合わせるユイトとティナ。


「一体どうなってんだ?」

「まさか、偽物?」

「つーか、いつの間に俺たちそんな有名になったんだ?」

「ほんとだよ。びっくりした!」


「……ふぅ」

思いもよらぬ展開にユイトが思わず息をつく。


「ま、取り敢えず俺たちも行ってみるか」

「そうだね」

「じゃあ一応、冒険者プレートは隠しておこう」

「うん、分かった!」


早速2人は、町人たちが向かっていく方向へと歩き出す。

途中、興奮した町人たちにどんどんと追い抜かれていくユイトたち。

だが、そんなことは特に気にせず進んでいくと、やがて広場らしき場所に出た。


「うわぁ、凄い人…」

なんとそこには溢れんばかりの人、人、人。

「まじか……。あん中にいるんだよな…。

 こっからじゃ見えないし…しょうがない…」


人をかき分け、前へと進む。

そしてなんとか噂の”無名アンネームド”が見える場所までたどり着くと、2人は早速、噂の”無名アンネームド”の顔をのぞき込んだ。


「どれどれ」


2人の視線の先。

そこにいたのはユイトとティナには似ても似つかぬ2人組。

そしてその傍らには1匹の小さな白い犬。


「あれ…犬か?ひょっとしてユキのつもりなのか?」

「あはははは!かわいい!」


その後もユイトとティナは、噂の”無名アンネームド”をじーっと観察。


「ウイトさん。ウイトさんの力を見せてください!」

パーティー名以外はあまり正確には伝わっていないのだろうか。

微妙に名前が違う。


「ふっ。俺の力はむやみに見せるものじゃないからな。

 見せてもいいが、この町が焼け野原になってもいいのかい?」

そこで偽ユイトが髪をかき上げる。


「…なっ、なっ、なっ、何あれーーーっ!!

 ユイトさんは全然そんなんじゃないのにぃーーーっ!!!」

偽ユイトの言動にプンプンと怒るティナ。


「まぁまぁティナ、落ち着けって。何かの余興だと思ってさ」


「ティマさんはどんな魔法が得意なんですか?

 ティマさんの魔法を見せてください!」

こちらも微妙に名前が違う。


「そんなの決まってるじゃない。もちろん魅了魔法よ。

 人間はもちろん、獣たちだって私にかかればイチコロよ。

 それでいいのかしら?

 私が魔法を使ったらこの町、大変なことになっちゃうわよ?」

そこで偽ティナが髪をかき上げる。


「…なっ、なっ、なっ、何だあれーーーっ!!

 ティナはそんなんじゃないだろぉーーーっ!!!」

偽ティナの言動にプンプンと怒るユイト。


「まぁまぁ、落ち着いてユイトさん。劇か何かだと思って。ね?」


その後も広場には多くの町人が押し寄せ、偽ユイトと偽ティナを取り囲む。

結局、その日は1日中、2人の周りから人が消えることはなかった。


その夜、町の食堂にて。


「いやーまさか、俺たちの偽物が現れるなんてな。

 そんなこと夢にも思わなかった」

「ほんとだよね。すーっごく、びっくりした。

 …それで、この後どうするの?」

「うーん、どうするかな…」


そんな話をしていると、町人たちを引き連れた偽物が食堂に登場。

一気に食堂が騒がしくなる。


「ユイトさん、あれ…」

「あぁ、主役のお出ましだな」


偽物たちは、ユイトとティナの横を通り過ぎ、奥のテーブルへと進んでいく。


「ウイトさん、ティマさん。ここは俺たちに出させてください。

 その代わり、ウイトさんたちの武勇伝を聞かせてください!」


「しょうがないなぁ君たち。特別だぞ☆」

偽ユイトはそう言って、ともに入ってきた若い女性町人に向けウィンク。


そのセリフ、その仕草に鳥肌が立つユイト。

「ひっ…。だ、駄目だティナ、これ以上は耐えられそうにない…」

「…そんなっ!?

 ユイトさんにダメージを与えるなんて…彼らは一体何者なのっ!?」


「…おい、ティナ。劇じゃない…」

「あはは!ごめんね!ちょっと調子に乗っちゃった!!」


そして始まった偽ユイトの武勇伝。


「…ぐはっ。…ぐふっ」

その後もダメージを受け続けるユイト。


結局、偽物たちの武勇伝攻撃に耐えきれず店を出るユイトたちであった。

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