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第189話

「…あっ、そういえば」

何かを思い出したかのようにイーファが声を上げる。


「お2人にお伝えしなければならないことがありました。

 以前リシラの使者から受け取ったユイト様のお手紙の件です」


「あーそっか。そういやそうだったな。

 エルフたち、無事ここまで辿り着けたんだよな?」


「はい。徐々にですがリシラの方々とも交流を始めています。

 ユーリネスタ様とも1度だけお会いしました」

「そっか。良かった」


「これもユイト様とティナ様のおかげです。

 …それでですが、ユイト様のお手紙に書いてあった悪魔の件について、

 少しお話したいことがあります」

「ひょっとして、何か分かったのか?」


「はい。ユイト様のお手紙を受け取ってすぐ、

 私はクレスティニアへと向かいました。

 そしてゼルマ陛下にも、手紙に書かれていた内容をお伝えしました」


……今からおよそ3カ月前。


クレスティニア王国王城 応接室。

イーファから手渡されたユイトの手紙に目を通すゼルマ王。

「レイドス……まさか……」


その反応にすぐにイーファが尋ねる。

「ゼルマ陛下はそのレイドスという人物をご存知なのですか?」


「…そうか…イーファ殿はまだお若い。

 ひょっとすると、この名を知らぬのかもしれんな…。

 …ところでイーファ殿は”ゼツア”と言う国をご存知か?」


「はい。確か、十数年前に滅んだ国と記憶しています」


「その通り。

 時の王の悪政がたたり、民たちの手によって滅亡した国。それがゼツア。

 そのゼツアの最後の王であり、ゼツアを滅亡へと導いた者の名がレイドス」


「……では、この一連の悪魔たちによる出来事、

 それを裏から糸を引いていたのがそのレイドスだと?」


「いや、まだそこまでは分からぬ。単に名前が同じだけかもしれん。

 だが、このユイト殿の手紙に書かれている身体の特徴…。


 私は当時、何回かレイドス王と会ったことがある。

 当時の記憶を思い返してみると、レイドス王は確か、

 ここに書かれているような外見であったような気がする。

 もう十数年も前のこと故、当てにならんかもしれんがな…。


 まぁ、ここでとやかく考えても仕方のないことだな。

 どちらにせよ、この手紙に書かれていることが事実であるとすれば、

 これは世界にとっての脅威。それだけは間違いない」


「はい。まさか相手が称号者とは思いもしませんでした。

 しかもその力は未完であり、間もなくその力が解放されると……」


「うむ。未完でありながら国家を混乱に陥れるほどだ。

 その力が解放されたときの被害は想像もつかぬ」


「まったくその通りです。

 悪魔という未知なる存在だけでなく、称号者までいるとなると…。

 私もティナ様やステラ様のお力をこの目で見ましたが、

 あの力は我々の理解をはるかに超えるもの。

 とても人の為せるものではありません。

 あのレベルの力が我々に向けられるかと思うと、恐怖というほかありません」


「イーファ殿の言われる通りだな。

 称号者は味方であるときはこの上なく心強いが、

 それが敵になると恐怖でしかない。

 これはもはやクレスティニアやブレサリーツだけの問題ではない。

 各国が協力して対処せねばならん事案だ。

 次いつ、何をしてくるか分からん。急がねばならんな」


……再び現在、ブレサリーツ王国王城 貴賓室。


「そしてすぐに、ゼルマ陛下と私の連名で各国に極秘の書簡を送りました」


「極秘の書簡?」


「はい。対悪魔への協力、そして今後の対策について協議する場への

 参加を依頼する書簡です。

 幸いにもほとんどの国から良いお返事を頂けました。

 ユイト様とティナ様のおかげでリシラも了承してくださいました」


「そっか。そりゃ良かった。

 それでその会議ってのはいつあるんだ?」


「各国との調整の結果、今からおよそ3カ月後に開かれることになりました。

 場所は、北の大国リーンプエル王国 王都エミリス。

 私たちももう少ししたら、リーンプエル王国に向け出発する予定です」


「それでは、おじい様も?」

「はい。もちろんです」


「じゃあティナ、俺たちもその頃、リーンプエル王国に行こうぜ。

 久しぶりにゼルマ陛下やステラさんにも会いたいしな」

「うん、そうだね!」


「よーしっ!ひとまず今後の方針も決まったな。

 イーファさん、色々ありがとう。貴重な情報助かったよ。

 それじゃあイーファさんも忙しいだろうし、俺たち、そろそろ行くよ。

 タイミングが合えば、またリーンプエル王国で会おう!」

「はい。楽しみにしています」


「よし、じゃあ行くか」

席を立つユイトとティナ。


「イーファ様、ラナさん。最後に改めてお礼を言わせてください。

 この度は本当にどうもありがとうございました。

 リーンプエル王国までの道中、どうかお気を付けください」


「ありがとうございます。ティナ様もどうかご自愛を」


こうしてブレサリーツ王城を後にしたユイトたち。

2人が向かう先は、はるか北方、グレア・ネデア。

ジークにティナの無事を知らせるため、2人はガデラへと向かっていった。


………


そこは薄暗い森の中。


「ふふっ、そうか。愚か者どもがリーンプエルに集まるのか。

 まだ時間はある。その頃には私の力も……。

 くっくっくっく。今から楽しみだ。

 ふふっ、ふはははは、ふはははははははははははははっ!」


狂気に満ちた笑い声が、森の中に不気味に響き渡る。

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