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第184話

”精霊の棲み処”めざしてブレサリーツ王城を飛び立ったユイトとイーファ。

2人は”精霊の棲み処”上空へ到着すると、すぐさま降下。

”精霊の棲み処”を守る兵士たちのすぐ目の前に降り立った。


「うわぁっ!?」

突如、上方より現れた人影に声を上げて驚く兵士たち。さらに、


「イ、イ、イ、イーファ陛下っ!!!」

まさかのイーファ登場に慌てふためき、急いで整列、敬礼する兵士たち。

そんな兵士たちに向けイーファが言い放つ。


「そんなことは必要ありませんっ!すぐに入り口の扉を開けなさいっ!

 早くっ!早くしなさいっ!!急ぎなさいっ!!」

まくしたてるイーファ。


そんなイーファの姿に、ただならぬ状況を察した兵士たち。

すぐに”精霊の棲み処”入り口の扉に向け駆け出し、大急ぎで扉を開放した。


「さぁ、ユイト様。急ぎましょう」

「済まない。本当に助かった」


精霊石をめざし”精霊の棲み処”奥へと急ぐユイトとイーファ。

そして精霊石の前までたどり着くと、ユイトはすぐさま精霊石に触れ祈った。

「頼む、フェルミ―リアさん、助けてくれっ!!」


その直後、激しく輝き出す精霊石。

そしてその光の中にユイトは飲み込まれていった。


「えっ…?ユイト様は一体どこに…?」


再び精霊界へと降り立ったユイト。

するとそんなユイトの元へ、すぐにフェルミ―リアたちがやってくる。


「ユイト様」


「フェルミ―リアさんっ、お願いだっ!!

 ティナを、ティナを助けてくれっ!!

 俺はどうなってもいいっ、俺の命を使ってもらっても構わないっ。

 だから、お願いだっ!!お願いだからティナを助けてくれ……頼む……」


「まさか…ティナ様の身に何かあったのですかっ!?」


「魔毒だ。魔毒にやられて意識がない。もう時間がないんだっ!!

 このままだとあと少しでティナの命が…消える」


「そんなっ…」


「何度治癒魔法をかけても駄目だった。

 世界樹の雫でも治らなかった。

 けど世界樹の雫だけは、少しだけど効果があったんだ。


 世界樹の力は、元をたどれば精霊たちの力。

 だから精霊たちならティナを助けれるかもと思ってここに来たんだ。

 もう俺には打つ手がないんだっ。

 お願いだっ!!フェルミーリアさんっ!

 ティナを…ティナを助けてくれっ!!頼むっ!!」

土下座してフェルミ―リアに頼むユイト。


「顔をお上げください、ユイト様。

 時間もありません。手短に説明します。

 世界樹は、神がこの世界をお創りになられた際、

 神界にある神樹を模してお創りになられたものです。


 神樹はあらゆる穢れを祓い、あらゆる傷を癒し、

 あらゆる病を治す力があると言われています。

 世界樹の雫に魔毒に対する効果があったのはおそらくそのため。


 ですが、世界樹は人族でいうところのまだ幼子の状態、

 その力はまだ成熟していないのです。

 世界樹の力で不足ということであれば、世界樹を進化させるほかありません」


「進化…じゃあ、世界樹を進化させればティナを救えるんだなっ!!?」

ユイトの心に希望の灯がともる。


「…けど、どうやって世界樹を進化させりゃいいんだ……」


「それに関しては心配いりません。

 私たちが進化に必要なエーテルを世界樹に注ぎ込みます。

 ですが世界樹の進化に必要なエーテルは、極めて膨大なものとなるでしょう。

 その際に必要となる魔力の供給は、ユイト様にお任せするしかありません」


「分かった。それは俺に任せてくれっ」


世界樹の進化までの道筋は見えた。

ティナを救うための道筋がようやく見えた。

精霊界に来るまではなかった一本の細い道が、ユイトの心に出来上がる。


だがここで、ユイトがふと気付く。

「……けど、ちょっと待てよ?

 どうやって世界樹までフェルミ―リアさんたちを連れてきゃいいんだ?」


意識のないティナには精霊たちを呼ぶことは出来ない。

そして今のリシラには精霊石が存在しない。


「くそっ…一体どうすりゃ……」

刻一刻と迫りくる終わりの時を前に、ユイトが激しく焦る。


「ユイト様、この精霊石を半分に割ってお持ちください」

「これを?」

「はい。この半分の大きさでも、十分、人間界と精霊界を行き来できます。

 ユイト様は世界樹の元に着いたらすぐ、この精霊石で我々をお呼びください」

「分かった」


フェルミーリアの言葉に頷くと、ユイトはすぐに鞘から斬魔を抜いた。

そして直後、目の前にある精霊石を2つに切断、その片割れを異空間へと収納した。


「ありがとう、フェルミ―リアさん」

「ユイト様。ティナ様をどうかよろしくお願いします」

「あぁ」


そう短く答えると、ユイトはもう片割れの精霊石に腕を伸ばした。

ユイトの体が精霊界から消えていく。


「…ユ、ユイト様っ!?」

突如、再び”精霊の棲み処”に姿を現したユイト。


「ユイト様、一体今までどこへ!?」

「精霊界に行ってた」

「…精霊界……では、精霊たちにお会いできたのですね?」

「あぁ」


そしてイーファは、恐る恐るそれを口にした。

「ティナ様を…救う方法は……?」


「ひとまず希望は繋がった。俺は絶対にこの希望を離さない。

 イーファさん悪い。俺はすぐにリシラに行く」

「はい。構わずに行ってください。

 私はここからティナ様のご無事を祈っています」


「ありがとう、イーファさん。

 また会いに行くよ。必ず…ティナを連れて」

そう言うとユイトは猛烈な勢いで”精霊の棲み処”を飛び出し、リシラへと向かって行った。


その後、”精霊の棲み処”から1人出てきたイーファ。

そんなイーファの元へ兵士たちが駆け寄っていく。


「イーファ陛下。

 先ほどユイト様がもの凄い勢いで飛び出していきましたが一体?」


「大切な人を…愛する人を救うために向かわれたのですよ。

 後ほどラナたちがここに来ます。

 ですが到着までは、まだしばらくかかるでしょう。

 それまでここで休ませてもらいます。よろしく頼みますね」

「はい、承知いたしました」


リシラのある北へと体を向けるイーファ。

「ユイト様……、どうかティナ様をお願いします」

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