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第165話

苦しみ泣き叫ぶ少女の声は、まだ洞窟の入り口付近にいたユイトたちの耳にも届いた。


「ユイトさんっ!」

「急ぐぞっ!」


直ちに悲鳴が聞こえてきた方へと駆け出すユイトとティナ。

2人は全速力で洞窟の奥へと向かっていく。


それから程なくして洞窟奥へと到達したユイトとティナ。

そこで2人の目に映ったのは、地面に倒れもがき苦しむ少女の姿。

ユイトはすぐさま苦しむエルフの少女を救出すると魔力中和を開始。

少女の心臓にきつく巻き付いた瘴気の鎖を瞬く間に消し去った。


「…だ、誰だっ貴様らはっ!!?」

瘴気を纏う3人の男たち、その中央に位置するレイドスが大声で叫ぶ。


「それはこっちのセリフだ。お前ら、一体ここで何してる?」

「質問しているのは私だぁっ!!答えんかぁーっ!!」


「………」

瘴気を纏う3人の男たちを無言で凝視するユイト。


「…両端の2人、お前ら悪魔だな」

「…っ!?」


「そして真ん中のお前、お前は悪魔じゃないな」

「貴様……なぜそれを知っているっ!?」


そんなレイドスの声に答えることなく、ユイトは腕の中にいる苦しみから解放されたエルフの少女に声をかけた。


「大丈夫か?」

その声に首を縦に振るエルフの少女。

「よし」


「…な、なぜ、生きているっ!?そいつはさっき死んだはずだっ!?

 なぜそいつが生きているのだっ!!?」

目を見開き驚愕の表情を浮かべたレイドスが大声を上げる。


「そりゃあ、俺が取り除いたからな。

 この子の心臓に巻き付いた醜く穢れた鎖をな」

「…な、何だとっ!?」


「ティナ、この子を預かっててくれ」

怯えるエルフの少女をティナへと託す。


「…そうか……そういうことか。

 ようやく分かったぞ。お前たちだな。

 私の計画を悉く邪魔をしたのはお前たちだなぁーーーっ!!!」

激高するレイドス。


「だったらどうするんだ?」


「許さん、絶対に許さんぞぉーっ!!

 よくも…よくもこの私の計画をーーっ!!!

 貴様らはここで消し去ってくれるっ!!

 お前たちっ、今すぐこいつらを叩き潰せぇぇーーっ!!!」

その瞬間、レイドスの禍々しい瘴気がエルフたちに向け放たれる。


「…くっ、何だ!?か、体が勝手に…」

直後、数名のエルフと1体の悪魔がユイトめがけて猛然と襲い来る。


「ユイトさん、エルフのみんなはきっと…」

「分かってる。怪我させないように気を付ける。

 ティナはそこでその子を頼む」

「うん。分かった」

ティナがエルフの少女をぎゅっと自分の方へと引き寄せる。


そこまで広くはない洞窟内。

一歩間違えば、悪魔とともにエルフたちまで傷つけかねない。

気を遣いながらの戦いを余儀なくされるユイト。

「くそっ、さすがにやりづらいな」


だがそれでもユイトは悪魔たちを圧倒。

その光景を前にレイドスが焦り始める。


「…な、何なのだあいつはっ!?」

もはやレイドスの表情にまったく余裕はない。

極度の焦りが急激にレイドスを支配していく。


「おいっ、貴様らぁーっ!何をやっているっ!?

 早くしろっ!!早くそいつを叩き潰せぇーっ!!」


レイドスの激しい怒号が飛ぶも、相手は異次元の強さを誇るユイト。

当然そんなことでは、微塵も状況は変わらない。


「…くそっ、私はこんなところで捕まるわけにはいかんのだっ!!

 ……やむを得ん。

 こうなったら多少の痛みを被るが致し方ない。

 まさかこんなところで喚ぶことになろうとは……くそっ、忌々しい」

直後、レイドスの纏う瘴気が一気に膨れ上がる。


「深淵に潜みし古なる悪魔よ。我の声に応え顕現せよ。

 そして我が為にその身を捧げ、我が敵を討ち滅ぼせっ」

召喚サモン


その瞬間、レイドスが発した禍々しい瘴気がどこかへと吸い込まれていく。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…。ぐっ…。

 やはり今のままではきつかったか…。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…。

 おいっ、ここは奴に任せて一旦引くぞっ」

「はっ!」

側近と思われる上位悪魔とともに、その場から逃亡を図るレイドス。


「くそっ、あいつら、逃げる気か。

 ティナ、俺はあいつを…」


その瞬間、ユイトが叫んだ。

「ティナぁっ!!後ろだぁぁーーーっ!!!」


ティナの背後。そこにいたのはレイドスが開いたゲートより顕現せし一体の悪魔。

エルフの少女を抱え一瞬反応の遅れたティナめがけて、悪魔が鋭い爪を振り下ろす。


「きゃっ」


禍々しい瘴気を纏った鋭い爪が、身体強化されたティナの防御を突き破る。

この時ばかりは、力を抑えるために身に着けていた腕輪が災いした。

エルフの少女を抱えたティナの腕から真っ赤な血がしたたり落ちる。


「ふはははははははは!

 久方ぶりのこの世界。この時を待ちわびたぞ。

 再び始まるのだ、楽しき時間が。

 今度こそ、この世界を我らの色に染め上げる。

 まずは貴様らだ。この上位悪魔グレーターデーモンヌーベルグの手で殺されることを喜ぶがいい!

 ふははははははははははっ!!」


ヌーベルグの不意打ちにより、傷つき血を流すティナ。

そんな傷ついたティナの姿がユイトの目に映り込む。


ドクン


「貴様…よくも…」

その瞬間、ユイトの怒りが爆発した。


ズンッ


一瞬で辺りがユイトの魔力に満たされる。

辺りを圧し潰すかのような尋常ではない魔力。

あまりに膨大で濃密なユイトの魔力に、辺り一帯の空間が大きく歪む。


「いけないっ」

その瞬間、ティナは自分の魔力でエルフの少女を包み込む。


バタッ、バタッ、バタッ

レイドスに操られていたエルフたちは、ユイトの魔力に触れた瞬間 意識を失い、次々とその場に倒れ込む。


「ぐぎゃあぁぁーーー」

下位悪魔レッサーデーモンは、ユイトが放った強烈な威圧に耐えきれず即座に消滅。

瞬く間に、残りは上位悪魔ヌーベルグただ1人となった。


「…ば、馬鹿な……な、何なんだ貴様は……。

 何なんだ、その異常な魔力は……」


その視線だけで全てを蹂躙するかのようなユイトが、鞘から勢いよく斬魔を抜く。

そして、一歩また一歩とヌーベルグへと近づいてゆく。


「…ひ、ひぃぃ」

あまりの恐怖に一歩も動くことのできない上位悪魔ヌーベルグ。


「貴様…よくもティナを…」


ユイトが目にも止まらぬ速さで斬魔をふるう。

そしてその直後、一片の存在すら許さないと言わんばかりに魔法を放った。


獄炎ヘルファイア


こうしてレイドスにより召喚された上位悪魔は、ユイトの激しい怒りを前に、一瞬にしてこの世からその存在が消え失せた。

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