表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/221

第160話

精霊女王フェルミ―リアの後に付いてしばらく歩く。

すると突然、フェルミーリアが足を止めた。


「…すごい」


そこでティナの目に飛び込んできたのは、物語でも見たことがないような幻想的な光景。

大樹が複雑に、そして幾重にも絡み合い形成された森と呼んでもおかしくないような大樹。それはまさしく精霊の棲み処と呼ぶにふさわしい場所だった。


「ここは我々精霊が棲まう場所。

 この大樹は、はるか太古の昔より我々を守ってきてくれた王樹でございます」


「…王樹。……何て言うか…ほんとに神秘的」

「あぁ……」

まるで物語の中に入り込んだかのような不思議な感覚を覚えるユイトとティナ。


その後、フェルミ―リアに連れられ、さらに王樹の奥へと進んでゆく。

するとそこにあったのはフェルミーリアが棲まう一際大きな大樹。

2人はフェルミーリアの後に続き、その幹の内部へと入っていく。


「…すごい」

「…まじか」


なんとそこには、とても樹の中とは思えない程の巨大な空間が広がっていた。


「皆様。どうぞこちらへお掛けください」

そうフェルミ―リアに促された先には、見たこともない植物から生えている大きな葉っぱ。


「この葉っぱが椅子替わりなのか?」

「すごい!かわいい!」


2人は早速、その大きな葉っぱに腰を掛けてみる。

「おっ!これは中々!」

「ほんとだ!すごい!なんかこれ気持ちいい!」


ちょうどいい柔らかさと弾力。

木でつくられた椅子にはない不思議な感覚にティナは感激。

ユイトもまた、久しく味わっていなかった快適な椅子に笑顔がこぼれる。


するとそこへ、フェルミーリアがなにやら木で作られたコップのような物を持ってきた。


「こちらは、この精霊界に自生する果樹の樹液になります。

 どうぞお召し上がりください」

「うわぁ、かわいいコップ!

 フェルミーリアさん、どうもありがとうございます!」


驚きの連続で喉もカラカラのユイトたちは、早速差し出された飲み物を口にする。


「すっごく美味しいっ!!」

「ワオォン!」

「まじでうまいな…。ただの樹液なんだろこれ?こいつはすごい…。

 それに気のせいか、なんだか体も軽くなったような…」


「はい。その樹液には疲れを癒やす効果がございます」


「まじか…。これが精霊界……まるで異世界だな」

「ふふっ。じゃあユイトさんは2度目の異世界だね」

「ははっ。確かにな」


ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ

初めて経験した精霊界の飲み物に大満足のユイトたち。


「ご馳走様でした。すっごくおいしかったです!」

「皆様のお口に合ったようで何よりです」


ここでお互いの考えを確かめ合うように、ティナがユイトの顔を覗き込む。

そして互いに小さく頷いた後、ティナがフェルミーリアに切り出した。


「それでフェルミ―リアさん。私たち、どうして精霊界に?」


「はい。それはもちろんティナ様にお会いしたかったからです。

 ティナ様は我々精霊たちにとって、お仕えすべき主。

 感覚的には神に近いといった方がよろしいでしょうか。

 ぜひとも一目お会いして、ご挨拶をしたかったのです」


「私が精霊たちの神って……。一体どうしてですか?」


「…それが私どもにも分からないのです。

 ですが感じるのです…魂がそう訴えかけるのです。

 あなた様は我々が尊ぶべき方であると。我々がお仕えすべき主だと」


「…なぁ、ティナ。

 それこそティナの称号と何か関係があるんじゃないのか?」

「うん…そうだとは思うんだけど……。

 …フェルミーリアさん。フェルミーリアさんは、

 "精霊を統べし者"っていう称号のことを何か知っていますか?

 私にはそれがなんなのか未だによく分からないんです。

 なんで私がそれの所持者になったのかも全然分からなくて…」


「残念ながら私にも…」


首を横に振った後、フェルミーリアが続ける。

「称号とは、この世界をお創りになった神がお決めになられたこの世界のルール。

 さすがに私ごときには分かりかねます。


 ですが…これは私の勝手な想像ではございますが

 それはティナ様の膨大な魔力が関係しているのではないかと。


 ご存知かもしれませんが、我々精霊は魔力がないと生きてはいけません。

 魔力は我々精霊にとって生きていくための糧なのです。

 ですが、精霊は魔力を生み出す力を持ち合わせておりません。

 誰かから分けてもらうしかないのです。


 そんな我々にとって命にも等しき魔力をティナ様は豊富にお持ちです。

 その膨大で濃密な魔力は、我々全精霊に必要な魔力を補っても、

 なお余りあるほど。

 ひょっとすると、ティナ様のその膨大な魔力が

 ティナ様がお持ちの称号を得るに至った理由なのかもしれません。

 今こうしてティナ様のおそばにいるだけで、

 ティナ様のあたたかい魔力に包まれ、とても心地が良いのです」


「なるほど…。精霊たちが生きていく上で必要なもんを

 ティナ1人だけで全て与えられるから、ってわけか」


「確かに無意識で常に魔力を創り出してるけど…。

 でもそれだったら、私よりもユイトさんの方が凄いと思うんだけど…」

「うーん…確かにな。じゃあ違うのかな…」


「ユイト様。ユイト様も何か称号をお持ちですね?」

「フェルミ―リアさん、分かるのか?」

「はい。我々精霊は人族には感じ取れないものを感じ取ることが出来ます。

 魔力然り、称号然り」

「さすがだな…」


「さらに我々は、長きを生きます。

 ですがそんな我々であっても、称号を複数持つ方に会ったことはありません。

 おそらくユイト様は、すでに他の称号をお持ちであったために、

 ティナ様がお持ちの称号の保持者にはなれなかったのではないでしょうか」


「…なるほど。それなら筋が通るな。

 まぁ何はともあれ、ティナは精霊たちにとって神様みたいなもんってことだな。

 あー、神様じゃなくて女神様かな」

「うーん、何だかむずがゆいよー」

「ははははっ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ