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第159話

「お待たせいたしました。どうぞお入りください」

「ありがとうございます。

 じゃあ、ユイトさん、ユキ。行こっか!」


称号を得てからおよそ2年。

ようやく自身の持つ称号について何か分かるもしれない。

そんな期待を胸に、ティナは”精霊の棲み処”へと足を踏み入れた。


入り口入ってすぐの場所。


「暗いね」

「あぁ、ちょっと待ってろ」


光灯ライト

柔らかい光が少しひんやりとした洞窟内を優しく照らす。


「ふーん、いたって普通の洞窟なんだな。

 じゃあ行くか」


一本道で迷う要素などどこにもないその洞窟を、2人は奥へ奥へと進んでいく。

そしてかなり奥へと進んだところで、ティナの声が洞窟内に響いた。


「…うわぁ」


そう声を上げるティナの前には淡く光を放つ不思議な石。

それは透明で、よく見ると見たことのない模様が石の内部に描かれている。


「すごい……きれい……」

「あぁ。なんて言うか、すげぇ神秘的だな」

「うん。これが”精霊石”……」


その後、”光灯ライト”を消して、淡く光る”精霊石”を眺めるユイトとティナ。


「なんか…幻想的……」


そのあまりに神秘的な美しさに目を奪われること数分。

ユイトがふと我に返る。


「ティナ。……おい、ティナ」

「…あっ、ごめん。すっかり見惚れちゃってた」


「で、どうだ?何か分かりそうか?」

「うーん、どうだろう?今のところ特に何も感じないけど…」

「そっか……」

ここでユイトが何やら考える。


「…なぁ、ティナ。”精霊石”に触ってみたらどうだ?

 なんかこういう時ってさ、触ってみるのがお約束だろ?

 触った瞬間に辺りが光に包まれて、気付いたらどこか他の場所に…ってな」

「そうなの?」

「そうそう。俺がいた世界の漫画ではお約束のパターンだな」


「もう、ユイトさん。

 漫画って確か、絵本というか物語みたいなものってこの前言ってなかった?」

「まぁ、そうなんだけどさ。

 せっかくここまで来たんだし、取り敢えず触ってみようぜ。

 触って減るもんでもないだろうしさ」

「うん、まぁそうだね」


そうユイトに促され"精霊石"のすぐ近くまで移動したティナ。

そして一呼吸おいた後、ティナは目の前にある"精霊石"に向けゆっくりと腕を伸ばした。


ティナの細くきれいな指先。その指先が”精霊石”に静かに触れる。

するとその瞬間、”精霊石”が激しく輝き出し、辺りは眩い光に包まれた。


「…えっ!?何っ!?どうしたのっ!?」

「ま、まじかっ!?」

「ワオォン?」


あまりの眩しさに目を開けていられないユイトとティナ。

そして次2人が目を開けると、そこには見たこともない光景が広がっていた。


「なっ……」

「えっ……」

目に映る光景に絶句するユイトとティナ。


「……ねぇ、私たち…さっきまで”精霊の棲み処”にいたよね?」

「あぁ……間違いなく”精霊の棲み処”にいた……」

「じゃあ…一体、ここはどこ?」


そんな2人の目の前に広がるのは、木々や草花が一面に生い茂り、豊かな水を湛える美しき光景。


「…なんか……凄いな」

「うん……すごくきれい……」


この世の物とは到底思えぬ、まるで物語の一場面のようなその美しき光景に圧倒されるユイトとティナ。

するとそんな2人の視界に、ゆらゆらと移動する何かが映り込む。


「…なぁ、あれってもしかして、精霊…なのか?」

「うん。多分…精霊…だと思う」

「つーことは、ここって……」

顔を見合わせるユイトとティナ。


「えぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!?」


いつもは驚かせる側のユイトとティナ。

さすがのユイトとティナもこの時ばかりは、目が飛び出るほどの驚きっぷり。


「な、な、な、な、なっ!?せ、精霊の世界っ!?

 よ、よ、よ、よーし、予想通り。お、お約束だからな。は、ははははは」


じーーーーーーっ

ティナの冷ややかな視線がユイトに突き刺さる。


「もう、ユイトさん!全然予想通りじゃないでしょ!?

 なんかめちゃくちゃ動揺してるし」

「…いや、はい、すみません。さすがに予想外でした」

「うん。素直でよろしい。ふふっ」

少しだけちっちゃくなるユイト。


「…でも、さすがにこれはびっくり。

 私たち、元の世界に戻れるのかな?」

「うーん…取り敢えず、辺りを調べてみるしかないよな」


少しばかり不安になるユイトとティナ。

するとそんな2人の目に、遠くから近づいてくる精霊らしき姿が映り込む。


「ねぇ、ユイトさん。こっちに向かって来てるよね?」

「あぁ。ひょっとしてティナに会いに来たんじゃないのか?」

「えっ!?私に!?どうしよう!?」


突然の出来事にあわあわするティナ。

だが精霊たちはそんなことはお構いなしにどんどんと近づいてくる。

そしてほどなくして、3体の精霊がティナの元へと到着。

すぐさまティナに跪くと、中央に位置する精霊がティナに向け話し出した。


「ようこそお越しくださいました。

 私はこの精霊界を統べる精霊族女王、フェルミ―リアと申します。

 貴女様がこの地へ訪れる今日この日を、心よりお待ち申しておりました」


「はい…。はい?」


まさかの精霊女王の登場。さらにはその精霊女王がティナに跪く。

斜め上行く展開の連続に、まったく頭がついて行かないティナ。


「それでは、ご案内いたします。こちらへどうぞ」


右も左も分からない精霊界。

そもそも、なぜこんな状況になっているかすらも分からない。

ティナたちは促されるままに、精霊女王フェルミ―リアの後についていく。


途中出会う精霊たちは皆、一様に跪き頭を下げる。

精霊女王に対してなのか、ティナに対してなのか、はたまた神獣であるユキに対してなのか。

もう何が何だか分からない。とにかく、目に映るものすべてが幻想的。


「…まじで、ファンタジー……」


まるで夢の国。

思わずユイトの口からそんな言葉がこぼれた。

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