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第150話

「…さてと。ティナんとこ行く前にゴミ掃除でもしに行くか…」


ユイトが向かった先。

そこはクレスティニア王国の南西に位置するザッテラ連合国。

彼の国はクレスティニアに対し、まだ謝罪も補償も一切していない。

だがこれは国と国との問題。個人が口を出すようなことではない。

ユイトはそう自分に言い聞かせこれまで静観を続けてきたが、さすがにもう我慢の限界を超えていた。


ザッテラ連合国をめざし南下し始めてから数日後。

そこはザッテラ連合国 中央都市ダーベン。


「…ここか」


ユイトの目の前にそびえ立つのは、ザッテラ連合国 中央議事堂。

ザッテラの心臓部ともいうべきその建物の入り口へと向かいユイトが歩き出す。


「止まれ。何者だ?」

中央議事堂入り口を警備する兵士たちが、入り口の前までやってきたユイトを槍を構えて制止する。


「何者?俺はただの冒険者だ。クレスティニアびいきのな」

「クレスティニアだとっ!?」


「そうだ。この中にいるんだろ?ザッテラの偉い奴らがさ。

 俺はそいつらに会いに来た」

「駄目だ。我々はクレスティニア関係者を近づけるなとの命を受けている。

 お前を通すわけにはいかんっ!」


騒ぎを聞きつけ、続々と入り口へと集まってくる兵士たち。


「押し通る」


中央議事堂内 会議室。


「だから言ったのだっ!!

 一体どう責任を取るつもりだっ、チェスターっ!ニコラスっ!サディクっ!」

会議室に響き渡るネストールの怒声。


「まさか、こんな結果になるとは思わなかったのだ」

「思わなかっただと?ふざけるなっ!!

 思わなかったで済むことではないっ!!

 そもそもクレスティニアに侵攻すること自体間違ってたのだっ!!」


「ネストール。もう、済んだことだ。

 今更、侵攻の是非をとやかく言っても仕方ないだろう」

「そうだ。そんなことよりも、これからどうするかの方が重要だ。

 このままでは、我々の立場が危うくなる」


「貴様ら…こんな時まで……」


バンっっ!!


その時、会議室の扉が激しく吹き飛んだ。

一斉に入り口の方に目を向けるザッテラの代表たち。


「誰だお前はっ!?どうやってここまで入ってきたっ!?」

ユイトを見るや否や大声で叫ぶチェスター。


「さぁな。外で寝てる奴らに聞いてみたらどうだ」

「何だと……?

 貴様…一体ここへ何しに来た?」


「はっ。そんなん聞くまでもないだろ?

 それとも何か?心当たりが多過ぎて分かんないのか?」


「貴様…まさか、クレスティニアの手の者か!?」

「俺自身はクレスティニアの民じゃないけどな。

 …けどな、クレスティニアは俺にとっては特別な国だ。

 お前らにはきっちりと代償を払わせる。覚悟しろよ」

「ふっ、笑わせるな。貴様1人に一体何ができる」


悪びれず言葉を発する男に向けユイトが問いかける。

「……お前、クレスティニアへの侵攻に賛成した1人だな?」

「だったら何だというのだっ!」


と、その時。


「おっ!なんか面白いことになってんじゃん」

騒ぎを聞きつけた”死神の大鎌デスサイズ”が会議室へとやってくる。


「いいところに来た、お前たち。

 こいつを何とかしろっ!クレスティニアの人間だ!」

「だから俺自身は、クレスティニアの人間じゃないっつってんだろ?」


「へぇ、1人でここに乗り込んでくるとはな。お前、相当の馬鹿だろ?」

ユイトに話しかける”死神の大鎌”のヒース。

その言葉にユイトは一瞬ヒースの方を振り向くも、意に介さず再び前を向き続きを話し始めた。


「聞いた話によると、お前ら5国の内、

 2国はクレスティニア侵攻に反対したんだってな。

 その反対した2国の代表者ってのは誰だ?」


そのユイトの行動が、”死神の大鎌”の導火線に火をつける。

「おいおいおいおい!てめぇ、無視してんじゃねぇぞっ!!」


「…うるせぇな。見りゃ分かんだろ?

 俺は今、こいつらと話してんだ。外野はそこで黙ってろっ!!」

「何だとっ、てめぇっ!!俺らが誰だか分かって言ってんのかぁーっ!?」

激高するヒース。


「…はぁ。そんなの知るわけないだろ?

 お前らとは今、初めて会ったんだからな。

 そんなことも分かんないのか?ひょっとしてお前、馬鹿か?」


ブチッ


「よーく分かった。どうやら死にてぇらしいな。

 だったら、てめぇの望み通りぶち殺してやるよっ!!」

「そうだ、”死神の大鎌”。早くこいつをやってしまえっ!!」

チェスターが怒れる”死神の大鎌”を更にたきつける。


「んなもん、言われなくてもやってやるよっ!!」

すぐさま戦闘態勢に入る”死神の大鎌”の4人。


「ふっふっふ、後悔するがいい。

 そいつら4人は、それぞれがSランク冒険者相当の実力者。

 我らに盾突いたこと、後悔しながら死んでいけっ!」


「はぁ……どいつもこいつも……」

救いようのない連中を前に心底あきれるユイトが斬魔を抜く。

「しょうがない。まずはお前らからだ。教育の時間だ」


一触即発の雰囲気の中、対峙するユイトと”死神の大鎌”。


「命乞いしても、もう遅いぜ。てめぇの死刑は確定だっ!

 これまでも命乞いしてきた奴らは山ほどいた。

 だがな、助かった奴なんて1人もいねぇ。

 俺らに舐めた態度とった時点で、てめぇの死刑は確定してんだよっ」


「よくしゃべるな、お前。おしゃべりしに来たのか?

 いいから、さっさとかかってこい」


「くっそぉ、舐めやがって。とことんむかつく野郎だぜっ。

 そんなに死にたきゃ、すぐにぶち殺してやるよっ!!」


直後、ヒースがユイトめがけて凄まじい速さで飛び出した。


曲刀を手に猛然と斬りかかるヒースが、振り上げた曲刀をユイトめがけて渾身の力で振り下ろす。

それはユイトに逃げる間を与えない程のこの上ないタイミング。

…だがヒースの手には、ユイトを捉えた感触が伝わってこない。


「…ちっ、よく躱したな。

 少しはできるようだな。だが次はないぜ。次こそ真っ二つだ」

「そんな剣でか?」


「てっめぇ、馬鹿にしてんのかっ!?」

「まさかお前、気づいてないのか?手元を見てみろよ」

ユイトの言葉に反応し、手元に目をやるヒース。


「…なっ!?俺の剣が!?どうなってんだっ!?」

そこには僅かな刀身を残し、無残な姿となったヒースの愛刀。


「…てめぇ、一体何しやがった!?」

「何したって、んなもん斬ったに決まってんだろ?」

「斬った…だと!?」


(馬鹿な…いつ斬ったんだ?そんな素振り全くなかったじゃねぇか)

(まさか、俺の目で捉えられない速さで斬ったっていうのか…)

(けどそんな衝撃、全くなかったぞ。あり得ねぇ…)


額から汗を流しながら後ずさるヒース。


「ヒースっ!どけぇーっ!俺が仕留めてやるっ!」


すぐにベーズが火魔法の詠唱を開始する。

急いで飛びのきユイトから距離をとるヒース。


「おいっ、馬鹿、やめろっ!議事堂が燃えるだろっ!!」


だがベーズの耳にチェスターの声は届かない。

「燃え尽きやがれ!」

滅火業炎デスフレイム


詠唱を終えたベーズの腕からユイトめがけて巨大な業火が放たれる。


だが、迫りくるその業火を前にユイトは微動だにしない。

そして、ただ一言。

「凍れ」


その瞬間、辺りが猛烈な冷気に包まれる。

その冷気の中、迫りくる巨大な業火はたちまち巨大な氷塊へと姿を変える。

そしてその絶対零度の凄まじい冷気は、炎を生み出すベーズの腕までをも一瞬で凍りつかせた。


「ぐあぁぁぁーーーっ」

悶絶するベーズ。


「な、何が起こった!?一体あいつは何をしたんだっ!?」

状況を飲み込めない”死神の大鎌”。


「くそったれぇ。これなどうだっ!」

裂風鋭刃エアロカッター


それと同時に斬魔が一閃。一刀両断されたムルーアの風魔法がユイトを避け議事堂の壁へと向かっていく。


「ば、馬鹿な…。斬ったのか?俺の風魔法を……」


「そういや、教育の時間だったな。風魔法の見本を見せてやる」

風刃ウインドエッジ


ユイトから放たれた研ぎ澄まされた極薄の風の刃が、ゾイドの持つ大剣めがけて飛んでいく。


サラサラサラサラサラ

直後、砂のようになって床へと落ちて行くゾイドの大剣。


「お、俺の剣が……」

残ったのはゾイドが強く握った柄部分のみ。


「ば、馬鹿な……今のが風魔法だとっ!?あり得ねぇだろ…!?」


「今だぁっ!」

風魔法を放った直後のユイトの死角から、折れた剣を握り締めたヒースが全力で斬りかかる。

「死ねぇぇーーーっ!!」


がしっ


だがそんなヒースの斬撃を、ユイトは眉一つ動かさず平然と素手で受け止める。

「素手でだとっ!?そんな…馬鹿な……」


「ついでだ。火魔法の手本も見せてやる」


剣を掴んだユイトの右手に濃密な魔力が集まる。

そしてその魔力はすぐに獄炎へと変化。

獄炎を纏ったユイトの手のひらが、握ったヒースの剣を一瞬で溶かし消滅させた。


「嘘…だろ……」

驚愕の表情を浮かべ後ずさりするヒース。


「どけぇーっ、ヒースっ!!捕まえちまえばこっちのもんだっ!!」


大剣を失ったゾイドがユイトめがけて猛然と突進。

そしてゾイドがユイトを掴もうとしたその瞬間、ユイトの強烈な一撃がゾイドに打ち込まれた。


「ぐあぁぁぁーーーーーっ」

猛烈な勢いで吹き飛んでいくゾイド。


バキバキバキバキっ


激しく吹き飛ばされたゾイドは、何枚もの壁をぶち破りながら最後は議事堂を支える壁に激突。そのまま床へと崩れ落ちた。

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[気になる点] 壁が議事堂を支えてるの?柱じゃなくて?
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