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第136話

メイリ―ル王国 王都エルミネ 王城。


今後の政策について話し合いが行われている会議室。

その会議室の扉が勢いよく開いた。


バタンッ!!


皆が一斉に扉の方に目を向ける。


「一体、何事です?」

扉の前に立つ兵士に対し、ステラが問う。


「ステラ陛下、緊急の伝令です。

 ブレサリーツ王国がクレスティニア王国に対し宣戦布告、侵攻を開始しました」

「何ですってっ!?」

その瞬間、ステラが勢いよく立ち上がる。


「ブレサリーツ王国にて謀反が発生。

 ブレサリーツ王国 イーファ王女をクレスティニアが匿ったとして敵国認定、

 侵攻を開始したとのことです」


伝令を聞き終えるや否や、ステラはすぐに動き出す。


「会議は中止です。

 ファーガス。クレスティニアの援護に向かいます。

 大至急、騎士団長に兵を準備するよう指示しなさい。

 私もクレスティニアに向かいます。王家の鎧の準備を」


突然の出来事に大きくざわつく会議室内。

そんな中、ファーガスがステラに意見する。


「それはなりません、ステラ様。

 ステラ様が戦地に赴くなど、何かあったらどうするのですか?

 それにクレスティニアまで一体どれほどの距離があると?

 今から向かったのでは、到底間に合いません」


そんなファーガスの意見に対し、ステラがすぐさま返す。

「"転界石"を使います」


そのステラの言葉に、再び大きくざわつく会議室内。


「…なっ!?"転界石"ですとっ!?

 あれは我が国に代々伝わる古代宝具アーティファクト

 この世に2つとない大変貴重な物ですっ!」


「それが何だというのです。

 3年半前のあの日、私はユイトさんとティナさんに命を救われました。

 彼らがいなければ、私は間違いなく死んでいたでしょう。


 そして彼らは、あのままでは滅んでいたであろう我が国を、

 苦しみの底にいた我が国民たちを救ってくれました。

 我が国の民でないにもかかわらず、何の見返りも求めず、

 ただ純粋なその優しさで。


 今、民たちが不自由なく暮らしていられるのも、

 あなたが愛する家族とともにいられるのも、全て彼らのおかげです。


 あなたが言うように、古代宝具アーティファクトは貴重かもしれない。

 ですが、そんな物よりも、ずっと大切なことがあるでしょう?


 あの時、私は彼らに、そして自分自身に誓いました。

 この先彼らに助けが必要となった時、どんなことがあろうと必ず力になると。

 ここで彼らを助けに行かなければ、

 私は明日から前を向いて生きていくことなどできませんっ!!


 何よりっ、私は1人の人間として彼らを助けたいっ!!

 彼らの窮地を見過ごすなんて、私には絶対にできませんっ!!」


諭すように、そして自らの想いを伝えるように語ったステラ。

そのステラの言葉は、会議室にいる全ての者たちの心の奥底まで沁み渡った。

それはファーガスも例外ではなかった。

己の浅はかな考え、そして愚かな発言をファーガスは心底悔いた。


「…ステラ様。申し訳ありませんでした。

 先ほどの私の発言、本当にお恥ずかしい。

 行きましょう、彼らを助けに。

 ステラ様は命に代えても私が必ずお守りします」


その言葉にステラが小さく頷く。

「頼みましたよ。ファーガス」


クレスティニアの救援が決定したメイリ―ル王国。

皆が一斉に動き出す。

兵士の準備、そして食料を含む救援物資の準備もとにかく急いだ。

皆、休むことなく奔走、慌ただしく時間が過ぎていく。


そんな中、ステラは弟リーツ、妹イリスの元へと赴いていた。


「それではリーツ。私が不在の間、よろしく頼みます。

 もし私に何かあった場合は、あなたが民を導きなさい。

 今のあなたなら大丈夫です」

「…姉上。…分かりました」

心配そうな表情を浮かべるリーツに向け、ステラが優しく微笑む。


「イリス。リーツを助けてあげて下さいね」

「はい、お姉様。

 …ですが絶対に……絶対に無事に帰ってきてくださいね」

「えぇ」

涙を浮かべるイリスをステラがぎゅっと抱きしめる。


その後も着々と準備が進む王城内。

作業は夜通し続けられ、そしてついに翌日の正午、クレスティニア救援に向けた全ての準備が整った。


王城前広場に集う3万の兵士たち。

そして、その前に1人立つステラ。

王家の鎧を身に纏ったステラを前に、静まり返る兵士たち。

ステラはそんな兵士たちに向け、静かに話し出した。


「皆さん。よく集まってくれました。

 まずは、皆さんの勇気と忠誠に心から感謝します。


 数年前、我が国が陥った未曽有の危機。

 皆さんの記憶にも、しかと刻まれていることでしょう。

 あの地獄のような日々を終わらせ、我が国を救ってくれたのは

 心優しき2人の英雄。

 そして今、その英雄たちは助けを必要とする状況にあります。


 あの時、メイリ―ル王国は誓いました。

 彼らから受けた恩を決して忘れないと。

 この先どんなことがあろうと、彼らの良き友人であり続けると。

 …今こそ、彼らから受けた恩を返す時」


ステラが静かに目を閉じる。

そして数秒間目を閉じた後、ステラは大きく目を見開いた。


「敵はブレサリーツっ!!

 我が国を救いし英雄 ティナ王女が祖国 クレスティニアを侵略せし者たちっ。

 我々が受けた計り知れぬ恩を返すため、必ずやクレスティニアを守り抜く!!」


「おぉぉぉーーーーーーーーっ!!!」

ステラに鼓舞された兵士たちが一斉に雄叫びを上げる。


そしてステラは、"転界石"を天高く掲げた。


「出陣っ!!」

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