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第128話

クレスティニア王国の建国祭に突如現れた美しき王女。

この出来事は”クレスティニア王女の帰還”として、すぐに他国へも伝え広がった。


バーヴァルド帝国 帝都オルン 冒険者ギルド。


「ランクスさん、聞きました?クレスティニアの話」

「あぁ、まじで耳を疑ったぜ。まさか王女様だったとはな。

 …ったく、あいつら、一体どれだけ驚かせれば気が済むんだよ」


レンチェスト王国 王都ステイリア 冒険者ギルド。


一枚の紙を手に、もの凄い勢いで走ってくるモーラ。

「おいっ、ユリウス、アイク、ライド。これ見てみろっ!」


差し出された紙に目をやるユリウスたち。

「…なっ!?おいっモーラ!これは本当なのかっ!?」

「あぁ、間違いない」


「……まさか…ティナ様がクレスティニアの王女殿下だったとは……」

突然のニュースに驚く”烈火の剣”。


「…だが、ティナ様が王女殿下だろうとなかろうと、

 俺たちはティナ様に忠誠を尽くすのみ」

決意を新たにするユリウスたちであった。


レンチェスト王国 サザントリム 冒険者ギルド。


その日の店じまいを始めたギルド内。

まだギルドに残っていた”天翔の風”と”タイガーファング”にギルドマスターが声をかける。


「おい、お前ら、ちょっとこっちに来い」

その声に応え、休憩スペースへとやってくる”天翔の風”と”タイガーファング”。


「シノン、ミーア。お前たちも来い。仕事は後でいい」

「???」

シノンとミーアも小走りで休憩スペースへとやってくる。


「どうしたんですか?ギルドマスター」

「とりあえず、これを見てみろ」

そう言うとギルドマスターは一枚の紙をテーブルの上に差し出した。


皆、一斉にその紙に注目。


「なになに、”クレスティニアに美しき王女が帰還”。

 で、これがどうしたんだよ?」

ガイルが尋ねる。


「いいから、王女の名前を見てみろ」

「”ティナ・レフィール・クレスティニア”…。

 見ましたよ。ギルドマスター」

ミーアが答える。


「お前たち…、何も気付かないのか?」


「……あぁ、そういえばこの王女様、ティナちゃんと同じ名前ね」

ようやくセフィーがそこに気付いた。


「そうだ。それはティナだ」

「…えっ?」


「だから、ティナがクレスティニアの王女だったと言ってるんだ」

「………。えぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!!」

ギルド内に皆の声が響き渡る。


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと、待ってっ!?

 ティナちゃんがクレスティニアの王女様って、一体どういうことっ!?」

ギルドマスターに詰め寄るセフィー。


「詳しいことは分からん。だが、あのティナで間違いない。

 確かな筋からの情報だ」


「ど、ど、ど、どうしよう、私…。

 王女様にあんなに馴れ馴れしくしちゃった……」

あわあわするシノン。


「…まじかよ……信じらんねぇ。

 …けど、さすが俺らの姐さんだぜっ!!」

「おいガイル、違うだろ。姐様だ、姐様。王女様なんだからよ」

「そうか、そうだな」


「おいおい、お前ら。それも違うだろ…」

呆れるギルドマスター。


「けど、まさかティナちゃんが王女様だったなんてな。信じらんないぜ。

 でも、つーことは、俺は王女様の友達ってわけだ。

 なんか俺、え」


スッパーーーン!!


「痛っ!」

セフィーにはたかれるリガード。


「ちょ、セフィー。まだ何も言ってないだろ?」

「未来が見えたのよ。未来が」

「おい…未来って…」


「……でも、ほんと信じられない。

 ティナちゃんが王女様だったなんて…。

 ……ティナちゃん、もうここには来ないのかな……」

セフィーが寂しそうな表情を見せる。


「だったら、俺たちがクレスティニアに会いに行けばいい」

「おい、いいこと言うじゃねぇか、ロイ。

 そうだぜ。みんなで姐さんに会いに行こうぜ!クレスティニアによぉ。

 クレスティニア遠征だっ!!」


「そうよね。会いに行けばいいんだわ!」

一気に盛り上がるギルド内。


そんな中、1人、何やら考え事をするギルドマスター。

そんなギルドマスターにシノンが気付く。

「どうしたんですか?ギルドマスター」


「んっ?いやな。

 ティナはクレスティニアのオリビア王女殿下の御息女だそうだ」

「それがどうかしたんですか?」


「前にセフィーとシノンとミーアには話しただろ。ティナの過去を。

 つまりレンチェストは、クレスティニアの王女の命を奪い、

 その御息女である王女にも地獄の苦しみを与えたということになる」

ギルドマスターの言葉を聞き、事の重大さに気付くセフィーとシノンとミーア。


「…おい、一体何の話だよ?」

何も知らないガイルたちが問いかける。


「そうだな。お前たちにも話しておこう。ティナの過去についてだ。

 実はティナはな、」


…………


「何…だよ、それ…。あんまりじゃねぇかよ…」

あまりに悲惨な内容に一同衝撃を受ける。

そして同時に、抑えきれない怒りがこみ上げる。


「よくも……よくも姐さんを…。

 許せねぇ、俺は許せねぇぞ、そのラーゴルドって野郎っ。

 2度と起き上がれねぇようにぶちのめしてやるっ」

今にも飛び出していきそうなほど激高するガイル。


「落ち着け、ガイル。

 既にラーゴルドは捕らえられて犯罪奴隷だ。怒りを抑えろ」

必死にガイルをなだめるギルドマスター。


「くそったれ。何でそんなクズに領主なんてさせてんだっ!!」


「だからだ。だからこそ、そんなやつに領主をやらせた国にも責任がある。

 クレスティニアの王女の命を奪い、

 そしてもう1人の王女を苦しめた責任はこの国にもあるということだ。


 この先クレスティニアが何か言ってくるかは分からん。

 だが、これはもはや国家間の問題だ。我々は静観するしかない。

 そんなことさえ無ければ、

 何の心配もなくティナを祝ってあげられるんだがな……」


メイリ―ル王国 王都エルミネ 王城。


コンコンコン


「はい。どうぞ」

「失礼します」


ステラの執務室の扉が開く。

入ってきたのはステラの側近ファーガス。


「どうしました?ファーガス」

「ステラ様。ご報告がございます。こちらをご覧ください」

そう言うとファーガスは1枚の書類をステラへと手渡した。


ステラは書類を受け取ると、すぐにそれに目を通す。

そして直後、ステラは驚きの声を上げた。


「…えっ!?

 ファーガス!!この情報は確かなのですかっ!!?」

「はい。間違いありません」


「こうしちゃいられないわ。すぐに手紙とお祝いを用意しなくちゃ。

 ティナさん、どんなものが好きなのかしら…」

慌ただしく動き出すステラ。


「それにしても、まさかティナさんがクレスティニアの王女だったなんて…。

 またどこかでティナさんと会えるかしら…」

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱり関わった人達に知れ渡りましたね!色んな意味で楽しみ! [気になる点] レンチェスト王がどんな性格なのかはわかりませんが、既に「白銀の天使」としての知名度が王都ステイリアでも知れ渡っ…
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