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第119話

「おぉ、兄ちゃん待たせちまったな。やっと完成したぜ。

 依頼のもんはこっちだ。どれも完璧の仕上がりだ」

そこにはきれいに並べられた数多くのコップたち。


「…しかしよぉ、こんな大荷物どうやって運ぶんだ?」

「それはだな、こうやるんだよ」


次々とコップを異空間収納に放り込んでいくユイト。

その光景に目を丸くするゴダック。


「おいおいおいおい!?一体そりゃあどうなってんだ!?」

「あぁ、こいつは異空間収納っていう俺の魔法なんだ。

 ま、魔法の袋みたいなもんだな」

「…そういやぁ、魔石もどっかから取り出してたもんな。

 ……はぁ、凄ぇもんだなー。さすがフェンリル様のお供だぜ」


「ぷっ」

思わず吹き出すティナ。


しっかりとお供のイメージが定着したようだ。

(ま、神様って言われるよりは良いけどね)


「ねぇねぇ、ユイトさん!や・く・そ・く!」

「そういやぁそうだったな。

 それじゃあ、いっちょ試しに使ってみるか」


コップを異空間に収納し終えたユイトは、残りの物に魔法効果を付与していく。

その様子をまじまじと眺めるティナとゴダック。


「よーし、これで完成だ!」


ユイトが付与魔法を施し完成させたもの。

それはなんと、ホットプレートとタコ焼き器、そして炊飯器。

この世界では間違いなく未知の物だろう。


「ところでゴダックさん、腹減ってないか?」

「んっ?腹か?そりゃもうペコペコだぜ。

 最近は飯を食う暇もないくらい忙しかったからな。

 ほらよ、紙切れみてぇに体が細くなっちまったぜ」


(…えっ?どこが?)


「…そ、そっか。だったらちょうどいいな。

 じゃあゴダックさんも一緒に食べようぜ」

「???」


さすがに店の中では…ということで、店の奥へと案内されるユイトたち。


「さてと、まずはこいつだな。

 こいつはホットプレートっていって、肉とかが焼けるんだ」

「こいつでか?火にでもかけんのか?」

「違う違う。ほら、ここにくぼみがあるだろ。ここに魔石を入れるんだ」


そう言うとユイトは早速くぼみに魔石を入れると、やや厚めに切った魔獣の肉をホットプレートの上に敷き詰める。

するとすぐにジュージューと音を立て、おいしそうな匂いが立ち込めてきた。


「おぉ!凄ぇぞっ!火も使ってねぇのに肉が焼け出したぞっ!!」

「ほんとだっ!凄いっ!!」

「おい、一体どうなってんだ、こりゃ!?」

いろんな角度からホットプレートを眺めるゴダック。


「これはだな、魔石のエネルギーを利用して発熱する魔法効果を付与したんだ。

 ここに魔石を入れるだけで、プレートが発熱して料理ができるってわけだな」


「はぁー、何だか凄ぇなぁ。

 原理はまったく分かんねぇが、兄ちゃんが凄ぇってことだけは良く分かったぜ。

 つーかよ、こんないい匂いかがされちゃ、もう我慢できねぇ。

 おい、兄ちゃん。食ってもいいか?」


「あぁ、遠慮せずたくさん食べてくれ。どれだけでもあるからな」

「おーし、じゃあ食べるぞーっ!」

おいしそうに魔獣肉を頬張るゴダック。


「かーっ、うめぇーーっ!!」


ティナもゴダックの後に続く。


「ユイトさん、これ凄いね!

 このギザギザの部分に余分な脂が落ちて、全然脂っこくない。

 すっごくおいしい!!」

「だろ?」


みんなが焼肉を楽しんでいる間にユイトはタコ焼きの準備。

小麦粉と出汁と卵で生地を作ると、魔石を設置したタコ焼き器にそれを一気に流し込む。

具には、メイリ―ル王国の後に立ち寄ったオズアール王国の海で仕留めたタコっぽい魔獣の足とネギもどきを使用。

こちらもすぐにジュージューとおいしそうな音を立て始めた。


見た目は普通のタコ焼き器。

だが実はこのタコ焼き器、微小に振動する機能がついている。

そう、なんと勝手に回転して、慣れてない人でも真ん丸きれいなたこ焼きが出来上がるのだ。


「面白い!くるくる回ってる!ユイトさん。それは何なの?」

「これはタコ焼きって言って、俺の住んでた国で人気の食べ物なんだ」

「ユイトさんの国の?」

「あぁ。このソースを付けて食べてくれ。熱いから気を付けろよ」

「うん!」


表面カリカリ、中トロトロ。完璧な出来上がり。


「ふーっ、ふーっ、ふーっ」

ソースを付けて、口へと運ぶ。


「っ!美味しいっ!すっごく美味しいっ!!」

初めて食べるタコ焼きの味にティナは大喜び。


「おい、兄ちゃん!俺も食っていいか!?」

「もちろん!どんどん食べてくれ!」


こうして美味しく、楽しい時間が過ぎていく。


「…ふーっ、満腹だぜ」

「私も。あー美味しかった!」

「ワオォン!」

どうやらみんな満足してくれたようだ。


「…あっ、そうだ!ユイトさん、あと1つ作ったのあるでしょ?

 あれは何に使うの?」

「あーあれは炊飯器っていって、米を炊くもんなんだ。

 どこかで米を手に入れたら使おうと思ってさ」


「米?米って、前に食べたあのおにぎりの?」

「そうそう。俺、めっちゃ米が好きなんだよな。

 けど、もうかれこれ何年も米を食べてないからさ。

 禁断症状発症寸前って感じなんだよな」

「禁断症状って…。そ、そんなに……」


「何だ、兄ちゃん。米が欲しいのか?

 米だったら確かクレスティニアで作ってたはずだぞ」

「ほ、本当かっ!!?」


興奮して前のめりになるユイト。

そのあまりの圧にたじろぐゴダック。


「…お、おぅ。確かそのはずだ。

 ただ、最近は農作物の不作が続いてるって話だけどな」


「…クレスティニアに米がある……やばい、めちゃくちゃ楽しみになってきた」


ユイトの米愛が燃え上がる。

米が俺を呼んでいると何やらぶつぶつと言い始めたユイト。

そして善は急げということで、ユイトたちは早速翌日、クレスティニアに向けてカントの街を出発した。


出発前、ユイトはゴダックに頼まれ、溝が浅すぎて失敗したホットプレートに魔法効果を付与してあげた。

きっとゴダックのお店の煙突からは、いい匂いの煙が立ち上ることだろう。

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