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第118話

「で、ゴダックさん。今お願いしたやつだけど、

 そいつら全部、素材として魔石を使って欲しいんだ」

「はぁ?魔石!?今の全部にか!?」

「あぁ。そいつらの使い道考えると、素材に魔石を使う必要があるんだ」


「でもよ兄ちゃん。全部つったって、そんなに魔石なんか置いてねぇぞ。

 そもそも魔石なんて、滅多に流通するもんじゃねぇからな」

「あーそれなら大丈夫だ。魔石は俺が大量に持ってるからな」

「はぁっ?大量?大量って、どこにそんなもんあるんだ?」


パッと見、ユイトの持ち物は斬魔のみ。

ゴダックがそう思っても仕方がない。


「ゴダックさん。ちょっとそこの床借りてもいいか?」

「あぁ構わねぇが、一体何するつもりだ?」

「そりゃあもちろん魔石を出すんだよ」

「???」


そう言うとユイトは何も置いていない床まで移動すると、おもむろに異空間収納から大量の魔石を取り出した。


「な、な、な、な、何じゃそりゃあーっ!?

 おいおいおいおい、今一体どこから出したんだっ!?

 …つーか、それが全部魔石だっつーのかよっ!?」

「あぁ、全部魔石だ。これぐらいあれば足りるだろ?」

「そりゃあ、足りるがよぉ……まじか…信じらんねぇ…」


ユイトが魔石を出した場所まで移動するゴダック。

すると、床に転がる魔石を1つ手に取った。


「こいつは凄ぇな…。なんて純度だ。混じりっけが一切無ぇ…。

 どれも最高級の魔石じゃねぇか…。

 こんなもん、ドプラニッカ中探しても見つかんねぇぞ。

 一体どこでこんな大量の魔石を見つけたんだ?」


「こいつらは全部、終末の森で採ってきたんだ」

「はぁっ!?終末の森だとっ!?」


「ははははっ」

「んっ?どうした?」


「いや、ガンツさんとも同じやり取りしたなってな」

「そうか…師匠もか。くっくっくっ。

 まぁ分かった。兄ちゃんの依頼引き受けるぜ」

「良かった。助かるよ。で、全部でいくらぐらいになる?」


「そうだな…コップの方は1つ銀貨3枚でどうだ?

 頑丈に作るには、ちーっとばかし手間がかかるからな」

「問題ない。それで頼む」

「おうよ。で、残りの3つは合わせて小金貨5枚でどうだ?

 初めて見る形かつ複雑だからな。おそらく何度か作り直しが発生する。

 それを見込んでの金額だ」

「分かった。それでお願いするよ」


全部合わせて金貨3枚と小金貨5枚。

なかなかの金額だ。


「で、どれくらいで出来そうだ?」

「そうだな……コップの方は1日10個作ったとして10日ほどだな。

 残りの3つは正直読めねぇ。

 ひとまず1つ1週間かかるとして3週間ってとこだな。

 つーわけでよ、兄ちゃん。とりあえず1か月後に一度様子を見に来てくれ」

「分かった。じゃあ、量が多くて悪いけどよろしく頼む」

「おぅ!任せとけ!」


無事依頼が完了し、ひとまずの目的を果たしたユイトたち。

次の日からは、ドワーフの国を満喫するべくカントの街を見て回る。

しかしさすがはドワーフの国。鍛冶だけでなく、様々な職人の店が立ち並ぶ。

しかも体験が出来る店がかなり多い。

こんなことは他の国ではまず無いことだ。


ということで、ユイトたちはゴダックに依頼した品ができるまで様々なモノづくりを思う存分体験。

どれもこれも面白かったが、中でも剣打ち体験はことのほか面白く、ユイトはかなりのめりこんだ。


こうして楽しい時間は過ぎていき、あっという間に1カ月が経過した。


約束通り、ゴダックの店を訪れたユイトたち。

店内に入ると店の奥から槌をふるう音が聞こえてくる。

例のごとくカウンターに置いてあるベルを鳴らすと、奥からドタバタとゴダックがやってきた。


「おぅ、兄ちゃんらか」

「あぁ、様子を見に来てみた。で、状況はどうだ?」

「すまねぇ。少し手間取っちまってな。

 残りの1つがまだ完成してねぇんだ。いいとこまでは来てんだけどよ。

 悪いがあと1週間くれ。あと1週間で必ず完成させる」


「分かった。こっちこそ悪いな。やっかいなもの頼んじゃって」

「何言ってんだ!?難しいもんこそ職人魂に火が付くってもんよ。

 最高のもんを作ってやるぜ。


 ……おーそういえばよ、兄ちゃん。

 この間は師匠のことで盛り上がり過ぎて聞きもしなかったが、

 随分とでけぇ狼だな。兄ちゃんらのペットか?」


「違う違う。こいつは俺たちの仲間だ。

 ティナと従魔契約を結んでるフェンリルのユキだ」


「ほぅ。ティナって姉ちゃんの名前か?

 …………。

 はぁっ!?フェ、フェ、フェンリル様ぁーーーっ!!?」


そこからは以前見たガンツの行動の繰り返し。

正座してユキに向かって頭を下げると、店の奥からおつまみを抱えて戻ってきた。


「こうしちゃいられねぇ。

 兄ちゃん、悪いが少しの間待っててくれ」


ゴダックはドタバタと店の奥へ消えていくと大急ぎで何かを作り始めた。

しばらくして、何やら台座のようなものを抱えて戻ってきたゴダック。

すると今度は何も持たずに店から飛び出した。


「ふふ。やっぱりドワーフの人たちにとってフェンリルは神様なんだね」

「みたいだな」


しばらくして、高級そうな敷物を抱えて戻ってきたゴダック。

するとゴダックは、先ほど作った台座にその敷物を敷き、ユキに座るよう促した。

「さぁさぁフェンリル様。こちらにお座りくだせぇ」


なんだかよく分からずキョトンとするユキ。


「ははは。ユキ、せっかくだから座らせてもらったらどうだ?」

ユイトの言葉に従い、ユキは台座へと移動しちょこんと座る。


「そういえば姉ちゃんはフェンリル様と契約してるっつったな?

 フェンリル様と契約するなんざ、まさか姉ちゃんは女神様か?」

「…えっ?」


「おーっと、こうしちゃいられねぇ」

ゴダックは再び店の奥へ消えていくと大急ぎで何かを作り始めた。


すると今度は椅子を抱えて戻ってきたゴダック。

そしてすぐに、中央がくぼんだ座面に先ほど買ってきた敷物を敷きつめる。


「さぁさぁ女神様。こちらにお座りくだせぇ」

「えっ?えっ?えっ?」


「ははははっ。ティナもついに神様だな」


そうこうしているうちに、ゴダックの店に続々とドワーフたちがやってきた。


「ゴダックさん、お客さんだぞ」

「おい、兄ちゃん。そりゃあ違うぜ。

 こいつらはみんなフェンリル様に祈りを捧げに来た奴らだ。

 こいつらの手ぇ見てみろよ」


確かに皆、おつまみらしきものを手に持っている。

どうやら先ほどゴダックが敷物を買いに行った際に、ユキの噂が広まったようだ。


「まさか……ひょっとして……」


ユイトが店の外に出てみると、最後尾が見えない程の長蛇の列。


「ま、まじか…」


これはまさに想定外。

それからは連日、ユキへの訪問客対応に追われることに。

そしていつの間にか案内係までもが登場。


「おい、ちゃんと並ぶんだぞー。フェンリル様と女神様はこっちだー。

 貢ぎもんは、こっちのお供に渡すんだぞー」


(俺、いつの間にかお供になってる…)


まるで人気アイドルの握手会。

入れ替わり立ち代わりドワーフたちがやってくる。

中には、高貴そうな服を着たドワーフまでも。


「…こ、これは陛下に王妃様!?」


なんとその高貴そうな服を着たドワーフは、ドプラニッカの王様と王妃様。

一般人に混じり、律儀に長蛇の列に並ぶ王様と王妃様。

店の外でずっと並んでいた姿を想像すると何だか微笑ましい。

おそらく良い王様と王妃様なのだろう。


王様と王妃様からの貢ぎ物は、高級そうなおつまみだ。

そう、やはりおつまみだ。ドワーフの文化なのだろうか。

こんなことをしているうちに、あっという間に1週間が経過した。

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