表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/221

第116話

ドワーフの国 ドプラニッカ。そこは言わずと知れた鍛冶の国。

終末の森近辺から採れる良質な素材と、古来より脈々と受け継がれてきた鍛冶の技術により、数多くの高品質な商品を世に送り出している。

その高品質な商品、武器を買い求めるため、世界中の商人や冒険者がこの国を訪れる。


そのドプラニッカの1つの特徴は、南に行くほど街が栄えていることだ。

ドプラニッカの北側は終末の森に隣接するため、基本的に人は住んでいない。

素材を採集する際の拠点として使われるぐらいだ。

町は終末の森から離れるほど、つまりは南に行けば行くほど増えていく。

それはもちろん、終末の森の魔獣の脅威が減るためだ。


そんな理由から大きな街のほとんどは南側に集中。

そして終末の森から最も離れたバーヴァルド帝国との国境付近には、ドプラニッカ一の街、カントが栄えている。

来訪者からしてみれば、最も栄えたカントが最もアクセスしやすい場所にあるという、なんとも嬉しい話というわけだ。


今回ユイトたちが目指すのも、そのカント。


帝都オルンを出発した後、ユイトたちはひたすら北上。

途中、いくつかの町と村を経由しバーヴァルド帝国国境へ。

国境も何事もなく通過したユイトたちは、ドプラニッカ国内へと足を踏み入れる。

国境からカントまではおよそ半日という近い距離。

こうしてユイトたちは帝都オルンを出発してから10日後、ドプラニッカ一の街 カントへとたどり着いた。


「おぉ、ついに来た…念願のドワーフの街。

 あぁーわくわくする!!」

「ふふっ。ユイトさん、なんだか子供みたいだね。ねぇ、ユキ?」

「ワオォン!」


だがユイトの耳にそんな言葉は入らない。


「じゃあ、ティナ、ユキ!行くぞーーーっ!」

「あっ、ちょっと待って!ユイトさーん!」


その後、入り口で手続きを済ませたユイトたちは街の中へ。

するとそこには数多くのドワーフたち。


「おぉーーーっ!凄いぞ、ティナ!

 ガンツさんがいっぱいいるぞっ!!」

「もう、ガンツさんじゃなくて、ガンツさんみたいな人でしょ?」


「あっ、そっか。なんかめっちゃそっくりだったからさ」

「ふふっ。確かに動きも体格もガンツさんそっくりだね」


そこら中から見えてくるコミカルな動き。

なんと言うか、とっても微笑ましい。


「…それでユイトさん。これからどうするの?」


「あぁ、それなんだけどさ、まずは腕の良い鍛冶職人を探そうと思ってさ。

 ちょっと作ってもらいたい物があるんだ」

「作ってもらいたい物?

 へぇ…ユイトさんが作ってもらいたいものって何なの?すごい気になる!」

「魔道具だよ。魔石もたくさんあることだし。

 色々作ってもらいたいんだけど、まずはコップと言うか鍋と言うか…。

 それをたくさん作ってもらおうと思ってさ」


「コップ?鍋?料理にでも使うの?」

「違う違う。その魔道具と俺の付与魔法があれば、

 きっとステイリアの”神秘の聖杯”みたいなものが作れる。

 あとナイチの大浴場にあるような湯沸かし器とかもな」


「えっ!?それって、水不足の問題が解決するってことっ!?」

「ま、そういうことになるな」

「凄いっ!ユイトさん凄すぎっ!!」

大興奮のティナ。


「じゃあ早くいこうよ!」

ティナがユイトの手をぐいぐい引っ張りながら、街中へと入っていく。


すると、そんなユイトたちの目に、街の至る所からもくもくと立ち上る煙が飛び込んでくる。


「うわー凄い!

 ねぇユイトさん、あの煙突から煙が出ているところって、

 全部鍛冶屋さんなのかな?」


「多分そうなんだろうな。…にしても凄い数だな。

 あの中から腕の良い鍛冶職人を探さないといけないってわけか…。

 さて、どうやって探すか…」


「誰かに聞いてみる?」

「そうだよな…それしかないよな。

 けど、鍛冶屋に腕の良い鍛冶屋を紹介してくれって言うのも失礼だしな…」


しばし、ユイトが考える。


「…やっぱあれだな。

 気兼ねなく聞けて、情報に信憑性があるといえば商人だな。

 商人っぽい人見つけて声かけてみるか」

「そうだね!」


こうしてユイトたちの聞き込み調査が始まった。

2人は商人らしき人を見つけては片っ端から声をかけていく。


街を歩き回り、聞き込み調査すること1時間。

結果、10人の商人から話を聞くことが出来た。


各商人、数人の鍛冶職人の名を教えてくれたが、その中に、10人全員が共通で口にした鍛冶職人が1人だけいた。

その名は鍛冶職人ゴダック。

依頼するには金はかかるが、その腕はピカ一ということだ。


早速、商人たちに教えてもらったゴダックの店へと向かったユイトたち。


「…ここか」


他の店に比べて一回り小さな店構え。

中からは、カンッ、カンッ、カンッという槌音が聞こえてくる。


店の中に入ってみると、カウンターの上にベルが置いてある。


「…これを鳴らせばいいのか?」

とりあえずベルを鳴らしてみるユイト。


チリーーン


「わぁ、すごいきれいな音!」


美しいベルの音が店内に響く。

このベルを作ったのがゴダックならば、相当腕の良い職人だろう。

これはかなり期待できる。


「すまねぇ。今、手が離せねぇ。もう少し待っててくれ」


店の奥からゴダックと思われる人物の声が聞こえる。

ユイトたちは分かった旨、伝えると、店内の商品を見て回る。


それからしばらくすると、店の奥からずんぐりむっくりした男が現れた。


「おぉすまねぇ。待たせたな。

 で、兄ちゃん、今日はどうしたんだ?」

「あぁ、ゴダックさんにちょっと作ってもらいたいもんがあってさ」

「ほぅ、俺をご指名か。中々見どころがあるじゃねぇか。

 で、一体何を作って欲しいんだ?」


ご指名ということで気分良さげなゴダック。


「えっと、いくつかあるんだけどさ、」

「…んっ?ちょっと待ってくれ、兄ちゃん」

ユイトの言葉を遮り、ゴダックが話し出す。


「悪ぃが兄ちゃんらの剣を見せてもらえねぇか?」

「んっ?あぁ、別にいいけど、どうしたんだ?」


「あぁ、何だかよぉ、

 兄ちゃんと姉ちゃんの剣から、なんつーか、すげぇ存在感を感じてよ。

 鍛冶職人の血が騒ぎやがんのよ。その剣を見てぇってな」

「凄いな。そんなことも分かるのか。じゃあちょっと待ってくれ」


ユイトとティナは、斬魔と光与を鞘から抜くとゴダックの前に差し出した。


「こいつは”斬魔”って言うんだ。すげぇ立派だろ?」

「こっちは”光与”って言うの。すごくきれいでしょ?」


「おぉ、おぉーーっ!こいつは凄ぇ…。まるで芸術品だ!

 なぁ、兄ちゃん。この剣に触れてもいいか?」

「あぁ。いいぞ」


ゴダックは斬魔と光与を手に取ると、それをまじまじと眺め出した。


「…おい、こいつは魔装具か?」

「そうだ。良く分かったな」

「まぁな。この仕事も長ぇからな。

 だが、ここまで高純度の魔装具なんて見たことねぇ。

 しかも2本とも、剣自体がとんでもなく凄ぇ…。こりゃあ超一級品だ。

 ドプラニッカ中探しても、このレベルの剣を手に入れるなんて不可能だ」


一流鍛冶職人からの最大の賛辞。

自分が作ったわけではないが何だか誇らしく感じるユイトとティナ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ