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第114話

「じゃあ、今度はこっちから行くぞ」


その直後、ユイトの周りに数百もの火炎槍が突如、出現。


「な、な、なんとーーーっ!

 今度はユイト選手がもの凄い数の炎の槍を出現させましたっ!

 …な、なんという数でしょうかっ!?信じられませんっ!

 これはきっと凄まじい爆風が…爆風が………。…んっ?


 皆さん!今、ふと気が付きました!

 先ほどまであんなにもあった衝撃波が今は全くありません!

 これは一体どうしたことでしょうか!?」


不思議に思ったフィーラが前方へと手を伸ばす。


「…な、な、なっ!?

 皆さんっ!今、私の手が何かに触れています!

 闘技場との境に何か見えない壁のようなものがあります!

 …ま、まさかこれもユイト選手かティナ選手が作ったというのでしょうか!?

 信じられませーーんっ!!!」

興奮したフィーラの叫び声が響き渡る。


「準備はいいか、ティナ。行くぞ」


火炎槍の熱で、斬魔を覆う氷が瞬く間に解け落ちる。

そしてその雫が地面に着いた瞬間、全ての火炎槍が一斉にティナに向けて放たれた。


猛然と迫りくる数多の火炎層。

それに対しティナは、無数の氷槍で応戦。

だが、全てを相殺するまでは至らない。

氷槍の弾幕をくぐり抜けた火炎槍がティナめがけて襲い来る。


氷壁アイスウォール


その状況にも焦ることなく氷壁を発動するティナ。

火炎槍が分厚い氷壁に阻まれる。


「やるな。じゃあ、これはどうだ」

獄炎槍ヘルファイアランス


一際大きな獄炎の槍が凄まじい勢いでティナ目がけて飛んでいく。


「…あれはちょっとやばいかも」

氷壁アイスウォール×5”


ユイトが放った獄炎槍を阻むべく、巨大な5つの氷壁がティナの前に出現。

だが、獄炎槍はその分厚い氷壁をいとも容易く突き破る。

そして5つ目の氷壁を突き破った獄炎槍はそのまま地面へと着弾。

爆炎とともに、まるで隕石が落ちたかのような大穴を作り上げた。


ティナはというと、獄炎槍が5つ目の氷壁を突き破る瞬間、氷壁から離脱。

すぐさま巨大な氷槍をユイトに向けて放つと、自身もユイトに向けて突進していった。


獄炎槍の仕返しとばかりに猛烈な速さで飛んでくる巨大な氷槍。

だがユイトは、その巨大な氷槍を斬魔で冷静に打ち砕く。

しかし打ち砕いた氷槍のすぐ後ろには、光与を構えたティナの姿。


その瞬間、ティナの斬撃を躱すべく後方へと飛んだユイト。

しかし、そんなユイトの行く手を阻むかのように突如ユイトの後方に氷壁が出現。


「…げっ!?」

ドスンッ


氷壁にぶつかり体勢を崩すユイト。

そんなユイトに向け、ティナは渾身の力で光与を振り下ろした。


ユイトは手にした斬魔でティナの斬撃を受けきるも、氷壁を突き破って大きく後方へと吹き飛ぶ。

ティナはここぞとばかりに、すぐに氷槍でユイトを包囲。

全方位から無数の氷槍をユイトに向けて撃ち込んだ。


”纏炎”


その瞬間、斬魔から灼熱の炎が吹き上がる。そして一閃。

ユイトを襲う無数の氷槍は一瞬の内に蒸発。猛烈な水蒸気が立ち上る。


「やるな、ティナ。さすがに今のは驚いたぞ!」

「でしょ!」


「じゃあ次行くぞ。

 威力は抑えるけど、無理だと思ったら迷わず逃げろ」

「分かった。でも頑張ってみる」


極滅獄炎インフェルノ

ユイトが放つはエギザエシム帝国に終わりを告げた地獄の火炎。


極堅氷獄コキュートス

対するティナが放つは絶対零度の堅牢な牢獄。


ティナのありったけの魔力を注ぎ込んだ極堅氷獄が、急激に膨張する極滅獄炎をなんとか抑え込む。

相反する極限の魔法のせめぎ合い。

辺りには猛烈な暴風が吹き荒れる。


拮抗する2つの魔法。

だが僅かにユイトの極滅獄炎の威力が上回った。


ピシッ、ピシッ

極堅氷獄に亀裂が入る。


そして極堅氷獄が砕けた瞬間、相殺しきれなかった極滅獄炎が急激に膨張。

その衝撃波でティナが大きく吹き飛んだ。


「くっ…。はぁ、はぁ、はぁ…。

 あんなに魔力を込めたのに……。…でも、まだやれる」


氷尖牙アイススパイン


辺り一帯の地面より突き出した鋭い氷の牙がユイトを襲う。

だが、すかさず重力魔法で宙に浮いたユイトはそれを難なく躱す。


その光景に、フィーラは両手で目をこすった。


「…し、し、信じられませんっ!

 な、なんということでしょう!ユイト選手が宙に浮いていますっ!!

 空を飛んでティナ選手の攻撃を躱しましたーーーっ!!」


観客たちもまた、そのあまりに非現実的な光景に驚愕。


「さぁ、どうするティナ。ここには剣も届かないぞ」


「……確かに私は重力魔法は使えない。

 でも、風魔法でだって宙に浮くことぐらいできるんだから」

風魔法を身に纏ったティナが空へと浮かび上がる。


「こ、こ、こ、今度はティナ選手が空へと浮かび上がりましたっ!

 信じられませんっ!本当にこの2人は人間なんでしょうかっ!?」


ユイトと同じ高さまで上昇するティナ。

そして直後、風魔法で加速したティナがユイトに向かって突進。

今度は空中での激しい戦いが始まった。


ユイトは重力魔法で瞬時に向き、スピードを変えつつ斬撃を繰り出していく。

対するティナは、風魔法で超圧縮した空気を足場として利用、さらには風魔法を放つ際の反動をも利用しそれに対抗。


闘技場上空にて繰り広げられる魔法と剣技を合わせた凄まじい攻防。


……しかし、ティナの体力は限界に近づいていた。

一方、ユイトは十分な体力を残し余裕の表情。


次第にユイトのスピードについていけなくなったティナは防戦一方。

全方位からくるユイトの斬撃に、ティナは身動きが取れなくなっていく。


「くっ…このままじゃ…。一旦距離を取らないと…」

風烈波ウィンドバースト


ティナを中心に球状に広がる強烈な衝撃波。

その衝撃波により、ユイトは後方へと押し返される。


「はぁ、はぁ、はぁ…」

呼吸が乱れるティナ。


そんなティナを前にユイトが魔法を発動。

それは、氷の他に、この世界にはないもう一つの属性魔法。


雷槍サンダーランス


ティナ目がけて一直線に飛んでいく雷槍。

そんな雷槍に対し、光与を構え迎撃体制をとるティナ。


「それは避けた方が良いぞ」

「…えっ?」


ユイトの忠告も間に合わず、ティナは雷槍を迎撃。


「きゃっ」

身体がしびれて一瞬身動きが取れなくなるティナ。


そんなティナに向け、真上からユイトの強烈な一撃。

なんとか光与で斬撃を受けきるも、ティナはもの凄い勢いで地面へと落ちていく。


地面から猛烈な砂煙が立ち上る。


すぐに立ち上がり、空を見上げるティナ。

だがそこには、ユイトの姿は既にない。


そしてそんなティナのすぐ後ろにはユイトの姿。

直後、ユイトは光与を持つティナの右腕を右手で押さえ、左手をティナの頭の上にポンと置いた。

それはサザントリムの冒険者ギルド訓練場で見たあの光景。


「ティナ…本当に強くなったな」

「…うん。ユイトさんのおかげだよ」

「そんなことない。ティナが頑張ったからだ」

「ううん。ユイトさんが居てくれたから頑張れたんだよ」


ティナは右腕を押さえるユイトの右手に、自身の左手をそっと添えた。


「……ねぇ、ユイトさん。

 これからもずっと一緒にいてくれる?」

「あぁ。もちろんだ」


その言葉にティナは幸せそうな笑みを浮かべた。

そして…


「参りました。降参です」


静まり返る会場内。

原形を留めないほど荒れ果てた闘技場にティナの声が小さく響く。


「……ついに…ついに、神々の戦いとも思えるこの試合に決着の時が訪れました!

 我々の理解をはるかに超えた凄まじき戦い、

 想像を絶するこの戦いを制したのはユイト選手っ!!

 今年の大武闘大会優勝はFランク冒険者ユイト選手ですっ!!!」


「うおぉぉぉーーーーーーーーーーーーっ!!!」


観客は総立ち。

激闘を演じたユイトとティナに、大歓声と惜しみない拍手が送られる。

興奮した観客の歓声は一向に止む気配がない。


そんな中、表彰式が1時間後に執り行われるというアナウンスが流れる。


「1時間後か…。じゃあ、一旦控室に戻るか?」

「うん!」


「……と、その前に」


ユイトは荒れ果てた闘技場を土魔法で整地。

その後、大歓声に送られながら2人は控室へと消えていった。

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