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第11話

ユイトの異世界生活2日目。


「……えっ?何処だ、ここ……?」


目が覚めたユイトは、いつもとは違う光景に一瞬戸惑いを見せる。

が、すぐに昨日のことを思い出す。


「……あーそっか……そうだったよな。

 俺、異世界に来ちゃったんだよな………ふぅ…」

小さく息をつくユイト。


「それにしても、体中が痛い…超痛い……。

 おっかしいな…若返ったはずなのに……」

固い地面で寝たせいか、それとも日頃の運動不足がたたってか、まともに動ける気がしない。


「ふむ。ようやく目が覚めたか、ユイトよ。

 お主、丸一日眠っておったぞ」

ぎこちない動きのユイトに、グレンドラが声をかける。


「おぅ、おはよう…って、俺…そんなに寝てたのか?……まじか。

 ……まぁ、昨日は色々あったからな」

思い出すだけでお腹がいっぱいになりそうだ。


「して、ユイトよ。今日はどうする?

 新たな魔法の訓練でもしてみるか?」

「いや、今日はちょっとつーか、かなりの勢いで無理そうだ。

 もう、筋肉痛で体中が痛いのなんのって」

「ふむ、そうか」


「それよりさ、グレンドラ。

 今日もお前に色々と教えてもらいたいことがあるんだけどさ」

「ほう、そうかそうか。また我に教えを請いたいと。

 構わんぞ。何なりと聞くが良い」

今日もまた、ユイトに頼られ嬉しそう。


「悪いな、助かるよ。

 でもその前にちょっと顔洗ってくる」


ギシギシと音が聞こえてきそうな、まるで壊れかけのロボットのような動きで地底湖へ向かったユイト。

顔を洗おうと身を乗り出した際に、再び幼き日の自分の顔が湖面に映り込む。


「……やっぱ慣れないな。

 でも毎日見てりゃ、そのうち慣れてくるか…」


いつもより少し小さな手で水をすくい、勢いよく顔を洗う。

バシャバシャバシャ、バシャバシャバシャ


「ふぅぅ、さっぱりした」


その後、再びロボットのような動きで戻ってきたユイト。


「待たせたな、グレンドラ」

「うむ。それでお主が聞きたいこととはどんなことだ?」


「あぁ、色々あるんだけどさ……でもまずはこれかな。

 お前さ、確か昨日”魔獣”って言ってただろ?

 ”魔獣”ってのは何なんだ?”獣”とは違うのか?」


「ふむ…そうか…。

 お主がいた世界には魔獣はおらんのだな。

 確かに魔法のない世界には、魔素すらないかもしれんからな」

「???」


「よいか、ユイトよ。

 ”魔獣”というのはな、体内に魔石をもった獣のことをさす」


「魔石?」


「そうだ。魔石だ。

 獣も人と同じく魔素を体内に取り込める。

 だが、必ずしも取り込んだ魔素の全てを魔力に変換できるとは限らん。

 もし魔力に変換しきれない魔素がある場合、その魔素は体内に留まり続ける。

 そして、行き場をなくしたその魔素は、時間とともに結晶化していく。

 それが魔石だ」


「……なるほど」


「魔石を体内にもつ魔獣は、通常の獣に比べ総じて身体能力が高く、気性が荒い。

 今のお主では、全く太刀打ちできんだろうな」


「おいおい、そんなの当たり前だろ!?

 俺はごく普通の一般人だったんだ。

 昨日なんて、マジでちびりそうだったんだからな」


「そうか。かっかっかっかっか!」


「笑い事じゃないっつーの!ったく」


「まぁ、良いではないか。結果的にはこうして無事だったわけだ。

 いい思い出になったであろう」

(あれがいい思い出って……どんな変人だよ……)


「……ふぅ……ところでさ、グレンドラ。

 その魔獣ってのは見分けられるのか?」


「そうだな、姿かたちを知っていれば見た目で分かる。

 当然と言えば当然だがな。

 仮に知らないとしても、体内から強い魔素を感じれば、それはおそらく魔獣だ。

 魔石は魔素の塊だからな」


「なるほど……」


「ちなみに魔石と言えば、この淡く光っている洞窟の壁、これらは全て魔石だ」

「はぁ!?これが全部、魔石だってのかっ!?」

「そうだ。なにも体内で結晶化した物だけが魔石というわけではないからな」


「まじか……。

 にしてもさ、これ、多過ぎじゃないか?

 どうやったらこんな量の魔石ができるんだ?」


「ふっふっふ、不思議であろう?

 その理由、聞いて驚くがよい。

 ここにこれほどの魔石がある理由、それは我がここにいるからだ」


「……グレンドラが?」


「そうだ。昨日お主に話したように、我は基本、魔素を食事としている。

 つまり、我が食事として取り込んだ分だけ、この辺りの魔素は減少する。

 だが、不思議なことに減少したこの辺りの魔素は、自然とまた元の状態に戻る。

 この世界のルールというやつだな。


 我に取り込まれた魔素はというと、我の中で魔力に変わり、この空間へと溢れ出る。

 そして溢れ出たその魔力は時間とともに分解され、再び魔素へと戻る。

 つまり、我が取り込んだ魔素の分だけ、この洞窟内の魔素が増えていく。

 そのため、この洞窟内の魔素濃度は極めて高い。

 そして、その高濃度の魔素がこの洞窟内の壁に取り込まれ、長い年月をかけて魔石化したというわけだ」


「……そういうことか。

 じゃあ昨日、魔素がどろどろしたように感じたのも、ひょっとして…」


「そうだ。ここの魔素濃度が異常に高い故だ。

 ちなみにだが、魔素濃度が高ければ高いほど、魔石は高純度となる。

 そして高純度の魔石は淡く光を発し、その純度が高いほどその光は強くなる」


「そっか……だから洞窟の入り口付近より、この空間の方が明るいのか…」

「そういうことだ」

「てっきり、目が慣れてきたからだとばかり思ってた」


謎が1つ解けた。

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