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第108話

「さぁ、それではみなさん、ご注目ください!

 次は本日の対戦カードを発表していきたいと思います。


 まずは第1試合、ランクス選手 vs ルーカス選手。

 なんと絶対王者がいきなりの登場です!


 続く第2試合は、アビー選手 vs ユイト選手。

 第3試合は、ゼラール選手 vs ロラン選手。

 そして本日最後、第4試合は、オーウェン選手 vs ティナ選手。


 このような対戦カードとなっています。

 ちなみに2日後の準決勝では、本日の第1試合と第2試合の勝者、

 そして第3試合と第4試合の勝者がそれぞれ戦うことになります。


 さぁ、皆さんも待ちきれないことでしょう!当然、私も待ちきれません!

 ということで早速、第1試合に移りたいと思います!

 それではランクス選手とルーカス選手以外の選手は、

 控室か選手用観覧席の方へご移動をお願いしまーす!」


フィーラの言葉に従い、ランクスとルーカス以外の選手たちが次々と闘技場を降りていく。


「ティナ。俺は一応ランクスの試合を見ておこうと思うけど、どうする?」

「ユイトさんが見るなら、私も一緒に見る!」

「じゃあ選手用観覧席に行くか」

「うん!」


闘技場を降りたユイトとティナは選手用観覧席へと移動する。

観客でいっぱいとなった大闘技場の中で、そこだけぽっかり穴が開く。

それなりに広い選手用観覧席。ランクスとルーカスの試合を見に来た選手たちは、それぞれ間隔をあけて席に着く。


「さぁ皆さん、お待たせしました!どうやら準備が整ったようです。

 それではランクス選手とルーカス選手の試合を始めたいと思います。

 皆さん、心の準備はいいでしょうか!行きますよー!

 それでは第1試合、はじめーーーーーっ!!」


「…さぁて、どんなもんかな」


試合開始の合図とともに勢いよく飛び出すランクスとルーカス。

その2人の手には相棒がしっかりと握られる。

闘技場の上で繰り広げられる激しい斬撃の応酬、そして鳴り響く剣戟。

さすがはSランク冒険者とAランク冒険者の戦いと言ったところか。

それなりにレベルが高い。


しかし前評判通り、ランクスの方が1枚も2枚も上手のようだ。

しかもおそらくランクスはまだ本気を出していない。

今は剣での戦いを繰り広げているが、ランクスの周りの魔素の流れや漂う魔力からすると、十中八九、魔法も使えるはずだ。

初戦からいきなり全力は見せない、つまりはそういうことなのだろう。


「ふーん……なるほどね」

ユイトは、そんなランクスの戦いを見ながら一言だけつぶやいた。


試合は終始、ランクスがルーカスを圧倒。

結局、最後までランクスが魔法を行使する場面は訪れず、第1試合はランクスの勝利で幕を閉じた。

会場では、そんなランクスの完璧な勝利に大歓声が沸き起こる。


「…さてと。次は俺の番だな。

 じゃあティナ。ちょっと行ってくるな」

「うん、がんばってね!…あっ、怪我させないようにね!」

「ははは。気を付けるよ」


30分のインターバルを経て、会場に響く第2試合のアナウンス。


「さぁ皆さん、お待たせしました!

 それではこれから第2試合を開始します!

 お席にいない方は、お急ぎ席までお戻りくださーい!


 さて、第2試合はアビー選手 vs ユイト選手。

 先ほどは、ランクス選手とルーカス選手が素晴らしい試合を見せてくれました。

 第2試合では一体どのような試合を見せてくれるのでしょうか!

 非常に楽しみです!!」


闘技場の上に立つユイト。

まったく必要ないが、手ぶらというのも変なので、ひとまず鞘から斬魔を抜く。


「それでは準備はいいですかー!?

 行きますよーっ!準々決勝第2試合…はじめーーーっ!!」


試合開始の合図とともにアビーが詠唱を開始する。

これまた随分と長い詠唱だ。この間に攻撃してくれと言わんばかりの長さ。

まさか攻撃を誘い込むための演技なのではないか?と勘違いしてしまう程だ。


(どうしよう?攻撃しちゃってもいいのかな…)


そんな考えが頭をよぎる。

だが、ユイトも鬼ではない。これだけの大観衆の前で見せ場もなく終わってしまっては、あまりにかわいそうだ。

ということで、とりあえず詠唱が終わるまで待つことに。


「おーっと、アビー選手。いきなり詠唱を始めましたっ!

 一体どんな魔法が放たれるのでしょうか!!

 それに対してユイト選手は一歩も動かない。いえ、動けないのでしょうか!?

 Bランク冒険者が放つ魔法。

 Fランク冒険者のユイト選手にとってそれは脅威に違いありません!

 うかつに動くのは危険。おそらくはそういうことなのでしょう!!」


実況の口が回る回る。

ティナはそのあまりのおかしさにお腹を抱える。


そして長かったアビーの詠唱がようやく終わる。

それと同時に放たれたのは火球ファイアーボールの3連弾。

火球がユイト目がけて飛んでいく。


だがそれは、ユイトにとってはあまりに遅いスピード。

そして避ける必要などこれっぽちもないほどの低威力。

しかしユイトは、一応火球が当たる直前、最小限の動きで躱してみせる。


「おーっと、アビー選手。火球の3連弾です!

 もの凄い速さでユイト選手目がけて飛んでいきます!

 あーっと危ないっ!ユイト選手はギリギリのところでこれを躱します。

 一歩間違えれば直撃。ユイト選手、全く余裕がありませんっ!!」


「だ、だめ…息が……」

実況の言葉に、苦しむティナ。


アビーはその後もユイト目がけて火球を放つ。

途中からは岩石弾ストーンバレットも織り交ぜユイトを攻撃。


しかし相変わらず、あくびが出るほど遅いスピード。

ユイトはそれら全てを紙一重で躱し、その都度、足を一歩ずつ前に踏み出した。


一見するとアビーが攻撃し続ける一方的な展開。

だが気付くと、アビーの目の前にはユイトの姿。

そして魔法を放とうと腕を伸ばしたアビーの喉元には斬魔が突きつけられていた。


「こ、こ、これは何ということでしょう!?

 アビー選手の魔法攻撃をギリギリのところで躱し続けたユイト選手。

 躱し続けた先が、偶然にもアビー選手のすぐ近く。

 そしてすかさず手に持った剣をアビー選手に突き付けたーーーっ!!」


「ま、参った…」


「おーーーっと、アビー選手降参です!アビー選手が降参してしまいましたっ!

 これはなんという番狂わせ!

 なんとFランク冒険者が、Bランク冒険者に勝ってしまいました!

 ……しかしこれは信じられませんっ。

 ユイト選手、何という強運の持ち主でしょう!

 ですが、強運もここまでくれば、もはや立派な武器。

 おそらくは予選も、この持ち前の強運で勝ち進んできたに違いありません!」


「も、もうだめ…」

ティナは、勘違い娘フィーラのマシンガントーク実況にあえなく撃沈。


「しかし一体誰がこの結果を予想したでしょうか!?

 恐らく、誰一人としてそんな人はいないでしょう。

 まさに驚き。とても信じられませんっ!

 ……とは言え、これで2日後の準決勝、1つ目のカードが決定しました!

 Sランク冒険者ランクス選手 vs Fランク冒険者ユイト選手。

 まさかまさかのSランク冒険者とFランク冒険者の対決。

 果たしてユイト選手の強運がどこまでランクス選手に通用するのでしょうか!

 まったくもって予想がつきません!


 ……さて、それではここで一旦、休憩に入りたいと思います。

 準々決勝第3試合は、今から1時間後の開始となります。

 それまで皆さん、しばらくの間お待ちくださーい!」

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