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第106話

素材買取カウンターを離れたユイトたちは、ギルドの中を見て回る。

食堂や休憩スペースはもとより、治療室や仮眠室まである。

かなり設備が充実したギルドハウスのようだ。


クエスト掲示板もとんでもなく大きい。

今は依頼書がほとんど残っていないが、残った画びょうの数からするとかなりの依頼書が貼ってあったのだろう。


その掲示板のすぐ横には、もう1つ大きな掲示板。

今見た掲示板とは対照的に、そこには山ほどの紙が貼ってある。

役所にあるような、案内貼り出し用の掲示板だろうか。


そんなことを思いつつ横に移動し見てみると、なんとそれもクエスト掲示板。

そしてそこに貼ってあったのは、Fランク、Gランクの依頼ばかり。

もしやと思い、先ほどの掲示板を見返してみると、そこにはEランク以上と書いてある。


「ってことは、こっちはFランク、Gランク依頼専用なのか?

 でも、なんでこんなたくさん残ってんだ?」

「ほんと…。なんでだろ?」


不思議に思うユイトとティナ。

ということで、早速ユイトは休憩所でわいわいやってる冒険者たちに聞いてみる。


「すまん。ちょっと教えて欲しいんだけどさ」

「んっ?少しだけならな」

「あぁ、悪いな。…あそこの掲示板なんだけどさ、

 なんでFランクGランク依頼だけ、あんなにたくさん残ってんだ?」


「あぁ?そんなんやる奴がいねぇからに決まってんだろ」

「やる奴がいないって、こんなにも冒険者がいるのにか?」


「…はぁ、分かってねぇな、お前。

 ここにいる奴らは、ほとんどがEランク以上なんだよ。

 なんで俺らがそんな低ランク依頼やんなきゃなんねぇんだ。

 低ランク依頼やんのは、お前らみたいな低ランク冒険者だろ?

 んな当たり前のこと聞くんじゃねぇよ」


その言葉にティナが思わず口を出す。


「低ランク冒険者の仕事って…でも」

「ティナ、どうせ伝わらない」

ユイトが首を横に振りながらティナを制止する。


「でも…」


「もういいだろ。分かったんなら、あっち行けよ」


と、その時、混み合うギルドの中に1人の冒険者がやってきた。

その冒険者が足を踏み出すたびに、周りの冒険者は退き、自然と道が出来上がる。


「よぉ、オットー。どうした?」

「あっ、ランクスさん」


(ランクス?さっきカウンターで聞いたSランク冒険者か?)


「いやーこいつらがおかしなことを聞くんで、教えてやってたところなんすよ」

「おかしなこと?」


「そうなんすよ。何でこんなに冒険者がいるのに

 FランクGランク依頼をやらないんだ?って」

「ははははっ、何だそりゃ!冗談か何かか?」

「でしょう?笑っちまいますよね」


Fランク依頼やGランク依頼をやらないのが当たり前と言わんばかりに笑い声をあげるランクス。


「…おい。何がそんなにおかしいんだ?」

「そりゃ、おかしいだろ。

 冒険者には格がある。こなす依頼もその格に見合ったものであるべきだ。

 考えてもみろよ。皇帝がどぶさらいなんてやらねぇだろ?それと同じことだ。

 俺らに依頼を請けてもらいてぇなら、

 俺らに見合った依頼を持って来いってんだ」


そうランクスは言い放つ。

周りにいる冒険者たちも皆、そんなランクスの意見に激しく同意。


「…まぁ、でもそうだな。

 どうしてもってんなら、1つ条件を出してやろう」

再びランクスが話し出す。


「近いうちに大武闘大会が開かれる。

 もしそこで、お前が俺に勝てたら、

 Fランク依頼でもGランク依頼でも何でも請けてやるよ」


「……分かった。お前…今の言葉忘れんなよ」

「ふっ」

鼻で笑うランクス。


「……。行こう、ティナ、ユキ」

その場を離れるユイトたち。


「俺に勝てたらって、ランクスさん、そりゃねぇぜ。

 天と地がひっくり返ってもそんなこと起きねぇよ。ぎゃははははっ」

「俺は条件を出してやっただけだからな。

 出来るかどうかなんて知ったこっちゃねぇよ」


「それにしても、”今の言葉忘れんなよ”って…。ぶははははっ!

 思い出しただけでも笑えてくる」

「きっとあいつ、ランクスさんのこと知らねぇんだろ?

 大会3連覇中の絶対王者だって知ったら腰抜かすぜ」

「違ぇねぇ。ぎゃははははっ」


休憩所に、ユイトを嘲笑う冒険者たちの声が響き渡る。


再びカウンターの前に立つユイトとティナ。

「あら、さっきの冒険者さん。どうされました?」


「あのさ、さっき教えてくれた大武闘大会ってのに出ようと思ってさ。

 ここで申し込みできるんだったよな?」

「はい、出来ますよ。ちょっと待っててくださいね」

申込書を取りに行くお姉さん。


「お待たせしました。こちらが申込用紙です。

 では、必要事項を記入していただけますか?」

「分かった。ここでいいんだよな?」

「はい。そちらをご記入ください」


筆記用具を貸してもらい、申込用紙を記入する。

そのユイトのすぐ横で参加を迷うティナ。

「うーん…どうしよう。私も出てみようかなぁ?」


ユイトはそんなティナをもちろん後押し。


「ティナも参加しろよ。

 2人でみんなの性根、叩き直してやろうぜ?」

「うん…そうだね、それもいいかもね!」


ということで、ティナも申込用紙を記入し提出。

思いがけず、2人して大武闘大会なるものに参加することとなった。


受付のお姉さんによると、大武闘大会の開幕は今から1週間後。

開幕するとまずは予選が行われ、1週間かけて、1000人近い参加者の中から決勝トーナメントに進む7人を絞り込むらしい。

なぜ7人かというと、8人目は前回大会の覇者、つまりランクスに決定しているそうだ。いわゆるシードというやつだ。


予選が終わると、中3日空けて決勝トーナメントが開幕。

決勝トーナメント初日は準々決勝の4試合。

その2日後に準決勝の2試合。

更にその2日後、猛者たちの頂点を決める決勝が行われるとのことだ。


「じゃあ、色々とありがとな」

「いえいえ。それでは、お2人のご活躍を祈ってますね」


およそ半月に渡って開かれるバーヴァルド帝国の一大イベント。

その開幕まであと1週間。

鍛錬する者、のんびり過ごす者、FランクGランク依頼をせっせとこなす者。

参加者たちは皆、それぞれの想いを胸にその1週間を過ごしていった。


…そして1週間後。


ついに、バーヴァルド帝国の一大イベント 大武闘大会が開幕した。

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