第103話
「まさか…そんなことが……」
グレンドラから語られた思いもよらぬ真実。
その驚愕の事実に、ユイトもティナもしばし言葉を失う。
「我からの話は以上だ。どうだ?すっきりしたか?」
「あぁ。もやもやしてたものが一気に晴れた。
…けど、神とか世界を分断するとか、余りにスケールがでか過ぎて、
なんて言ったらいいんだ?
現実感がないっつーか、とにかくそんな感じだな」
「私もあまりに話が壮大過ぎて、何だかお伽噺を聞いたような感覚です。
でも、グレンドラさんとアリアーシェ様のおかげで、
今この世界があるということが良く分かりました」
「ふっふっふ。そうであろう。
どうだ。我がさらに偉大に見えてきたであろう。がっはっはっはっは!」
ご機嫌なグレンドラ。
(偉大っつーか、どっからどう見ても陽気なおっさんにしか見えん…)
「…で、ユイトよ。
まさかこんな話をするためだけに、ここに来たわけではなかろう?」
「おーっと、そうだったそうだった。危ない。忘れるところだった。
実はさ、魔石を取りに来たんだ」
「ほう、魔石か。よいぞよいぞ。どれだけでも持って行け。
何に使うかは知らんが、ここには腐るほどあるからな」
と、その時。
「……んっ?ここは…?」
気絶していたユリウスが目を覚ます。
「おっ、気が付いたか。ユリウスさん」
「ユイト様、私は一体何を…。
…はっ、そういえば、巨大なドラゴンに遭遇する夢を見ていたような…」
「ははは。それ夢じゃないぞ。目の前にいるだろ?」
「…えっ?」
恐る恐る視線を上へと向けるユリウス。
「ぎゃーーーーーーーーっ!!」
洞窟内にユリウスの悲鳴がこだまする。
「大丈夫だユリウスさん。落ち着けって。
このドラゴンは俺の友達だ。古代竜って言ったら分かるか?」
「古代竜?………。こ、こ、こ、古代竜ぅーーーーーーっ!!?」
再び、洞窟内にユリウスの声がこだまする。
「あ、あ、あの伝説の古代竜様なのですかっ!?」
「あぁ、そうだぞ」
「……こ、こうしてはいられません」
ユリウスはすぐに跪き、グレンドラに向かいペコペコ頭を下げ始めた。
その姿はまるで、からくり人形のよう。
「……しかし、ユイト様。確か今、古代竜様と友達だと?」
「あぁ。俺はこいつと一緒にここで暮らしてたからな」
「………。やはり……やはりあなたは神だったのですね」
(なぜそうなる…)
「ぷっ」
「がっはっはっはっは」
ユリウスの言葉にティナとグレンドラから笑いが漏れる。
「しかしユイトが神か。
だが、アリアーシェやティナが天使と呼ばれるならば、
ユイトが神と呼ばれても何ら不思議ではない。
ユイトはある種の化け物だからな」
「おいおい、お前には言われたくないぞ」
「がっはっはっはっは」
「はぁ…。まぁそれはそれとして、ユリウスさん。
魔石はどれだけでも持って帰っていいってよ」
「ほ、本当ですかっ!!
凄い…凄いぞーっ!古代竜様がおられるこの場所の魔石を持ち帰れるとは!
一体どれほどの価値があるのか…。
この魔石は絶対に我が家の家宝にします!!」
(いやいや、家宝って…なんか目的が違くない?)
そんなこんなで、ようやく本来の目的である魔石の採掘に取り掛かる。
4年前、ここにいた時には知らなかった魔石の使い道。
今後も何かに使うことがあるかもしれない。
そう思ったユイトは山のような量の魔石を採掘。
それら全てを異空間へと放り込んだ。
「よし、これで目的は達成だな。じゃあ、そろそろ王都に戻るか?」
「うん!」
「ワオォン!」
「はい」
「じゃあ、グレンドラ。助かったよ。これはお礼だ」
ユイトがグレンドラに渡したもの。
それはいつかグレンドラに会う時のために取っておいた、ファミリーパックのアイスだった。
「こ、これは、アイスではないかっ!?
またアイスに巡り合える日が来ようとは!!」
アイスとの再会に大喜びするグレンドラ。
まるでおもちゃを買ってもらった子供のようだ。
早速グレンドラはアイスを堪能。
あっという間にファミリーパックが空になる。
するとグレンドラがユイトをじーっと見つめる。
無言の圧力。もとい、無言のおねだり。
「…分かった分かった。ほらよ」
ユイトはファミリーパックをもう1つ、グレンドラに向けて放り投げた。
グレンドラはそれを大きな爪で見事にキャッチ。
「おぉ!」
ユリウスが歓声を上げる。
いったい何の競技だ。
そして2つ目のファミリーパックもあっという間に消えてなくなった。
「じゃあグレンドラ。そろそろ行くよ」
「うむ。またいつでも来い。アイスとともに」
「ははは。覚えてたらな」
「それではグレンドラさん。どうもありがとうございました」
「ワオォン!」
「古代竜様。あなた様にお会いできたこと、私の一生の宝にします。
どうもありがとうございました」
「うむ」
「じゃあ行くか」
こうして魔石を無事手に入れたユイトたちは、王都ステイリアへの帰途についた。
その道中、神気を呼び起こされたユキに跨るユリウスからは、楽しそうな悲鳴が消えることはなかった。
「ぎゃーーーーーーーーーっ!!!」